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episode 3.-past Day3-

「花鈴ちゃん、お客さんもいないし今日はもう上がっていいよ。外暗いから、気をつけて帰ってね!」

「はーい、お疲れ様でした!!」




詩音くんと出会ってから3日が経った。

今日は元々私のバイトの予定があったから、詩音くんには会えなくて。

昨日の水族館でのことを思い出しながら

今日も会いたかったなぁ、…って

バイト中も詩音くんのことで頭がいっぱいの私。



今からでも連絡したら…

でも、もう遅いし迷惑かな?

なんて、そんな事を考えながらお店を出れば、、、




「え、どうしてっ、」

「お疲れ様、花鈴ちゃん。」




そこには、詩音くんがいて。




「今日バイトって言ってから、迎えに来ちゃった!」

「わざわざごめん…! 体冷えてない?」

「これくらい平気だよ、それに僕が花鈴ちゃんに会いたくて来たんだから! もう暗いし家まで送るよ、行こ?」

「うんっ、ありがとう。」




あぁ、もう。

どうして詩音くんは私がして欲しい事がわかるんだろう。

こんなの、もっと好きになっちゃうじゃん。




「…詩音くん、ちょっと待ってて…!!」



春とはいえ、夜はまだ肌寒い。

冷たくなっていた詩音くんの手から考えても、きっとバイトが終わるのをずっと外で待ってくれていたのだろう。

だから、せめて…




「詩音くん、これ! 今自販機で買ったから、まだ温かいやつ!」

「これ僕の為に? ありがとう、花鈴ちゃん! そうだ、これ花鈴ちゃんも一緒に…」


ザー!!!!!!



「え…? 雨?!」

「花鈴ちゃん、こっち!!」




せめて体を温めて貰おうと、自販機で買ったココアを詩音くんに渡せば、突然降り出す雨。




「あはは! 結局ビショビショになっちゃったね!笑」

「あの、詩音くんここは…?」

「僕の家。近かったからとりあえず連れて来ちゃったけど、大丈夫だった?」

「う、うんっ。」




詩音くんに手を引かれるがままやってきたのは、どうやら詩音くんのお家らしい。

彼氏のお家…なんて、初めてで。

こんな時なのに、凄くドキドキする。




「花鈴ちゃん、このタオル使って!」

「ありがとうっ。あの、今日お家の人は?」

「あぁ、…うん。僕引っ越して来たばかりって言ったでしょ?母さんは仕事があるから、先に僕だけこっちにきたんだ。それより、体冷えちゃってるし花鈴ちゃんシャワー使って?」

「えっ、! いやでも詩音くんも体冷えてるし、私は大丈夫だから詩音くんが先に…!」

「んー、じゃあ一緒に入る?笑」

「…っ、?! ~~っ、いやっ、それは…!」

「冗談だよ、笑 何もしないから安心して。 ほら、お風呂行っておいで?」




突然の雨、誰も居ない彼氏のお家に、お風呂まで。

少女漫画みたいな怒涛の展開に、私の頭は既にキャパオーバー寸前。




「詩音くん、お風呂ありがとう。」

「ん、髪乾かしてあげる。花鈴ちゃん、こっち。」




優しい手つきで髪を乾かしくてくれる詩音くんに

ドキドキして、でも嬉しくて。





「はい、おしまい!」

「ありがとう、詩音くん。」

「あ、そういえばさっきこの雨で止まってる電車があるってニュースで言ってたんだけど、花鈴ちゃんが乗る電車って…」




目の前のことでいっぱいいっぱいで、帰りのことまで考えられていなかった私は

詩音くんに言われて、慌てて帰りの電車を調べてみる。




「電車、止まってる、、。」

「花鈴ちゃん、お家の人は? 迎えに来て貰えそう?」

「今日うちの両親旅行に行ってて居ないの。どうしよう、あの電車動いたらすぐ帰るから、それまで」

「うち、…泊まってく?」

「えっ、?」

「電車動いたとしても、家に1人は何かあったら僕が心配だから。」





仕方のない状況とはいえ、いきなりお泊まりだなんて迷惑だろうし、それに一晩2人きりとか正直私の心臓が持つ気がしない。

でも、ここで勇気を出したら、もっと詩音くんのことが知れるような気もして、、、




「…じゃあ、泊まっていってもいいかな…?」

「もちろん!! あ、お腹すいたよね! ご飯食べよっか! 」





詩音くんの言葉に甘えさせて貰うことにしたあとは

2人でご飯食べたり、テレビを見たりしながら、のんびり過ごした。





「花鈴ちゃん眠い? そろそろ寝よっか。」

「ん~、だいじょうぶ、まだおきてられっ」

「花鈴ちゃん、ちょっとごめんね。」

「…っ?! え、詩音く、!」




テレビを見ながらいつの間にかウトウトしてしまった私は、詩音くんにお姫様抱っこでベッドまで連れていかれて一気に目が覚める。





「あのっ、詩音くん…!わたし、、!」

「大丈夫、何をしないよ。僕今日はリビングで寝るから、花鈴ちゃんはベッド寝てね。…じゃあ、おやすみ。」

「あっ、待って…!!」

「ん?どうかした?」

「えっと、その。リビングだと詩音くん身体痛くなっちゃうよ。だから、一緒に寝るだけなら、…ね?」





自分でも大胆なことを言ったと思ってる。

でも、今日はドキドキの連続で、なんだかまだ、詩音くんと離れがたくて。





「…詩音くん、まだ起きてる?」

「うん、起きてるよ。」

「あのねっ、私もっと詩音くんの知りたいなって思って…」

「僕のこと?」

「うんっ、私達付き合ってるけどまだお互いのことよく知らないでしょ? だから、、」

「いいよ。じゃあ、僕の話聞いてくれる?」





それから、2人でベッドに寝転がってお互いの話をした。

詩音くんは、生まれる前にお父さんが亡くなっていて、ずっとお母さんと2人暮しをしていること。

詩音くんの通っている高校や、数学と運動が得意で、音楽や料理はちょっぴり苦手なこと。

そんな他愛もない話も、詩音くんとなら凄く楽しくて。

詩音くんのことを知れば知るほど、詩音くんに近づけたみたいで、嬉しくて…




「…花鈴ちゃんは? 学校では、、」

「…………スゥ………スゥ………っ」





その日は、夢を見た。


愛おしそうに私の寝顔を見つめる詩音くんが

「おやすみ」って言いながら

寝ている私のおでこにキスをする。

そんな、幸せな夢。







「おやすみ、花鈴ちゃん。」







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