episode.2 -past Day2-
「彼氏が出来た?!」
「しー!!ありちゃん、声が大きいって…!!」
昨日、人生で初めての彼氏が出来た。
男の人が苦手だった私に彼氏だなんて…
それも、昨日初めて会った人とだなんて、自分でも未だに信じられなくて、びっくりしてる。
「それで? その彼氏に、今日は水族館に行こうって誘われたわけ?」
「うん、でも私男の人出かけたことないから何着ればいいかわからなくて、、。ありちゃん助けて!!」
「仕方ないなぁ~、この有紗様が花鈴のために最高のデート服を選んであげよう!」
「ありちゃんありがとう!!!!大好き!!」
朝早くに呼び出してしまったのにも関わらず、嫌な顔1つせずに一緒にコーデを考えてくれているのは幼なじみの有紗。
「…で? その詩音くんって、どんな人なの?」
「えっと、歳は私たちと同じ16歳で、、、えっと、、」
「え?!もしかしてそれしか知らないの?!」
「だ、だってまだ昨日会ったばっかりだし!」
「ねぇ花鈴、大丈夫? 騙されたりしない?花鈴可愛いから私は心配だよ?」
「だ、大丈夫だよ…! 詩音くんはそんな人じゃないよ。…あ、私もう行かないと!ありちゃん色々ありがとうね、私行ってくる…!」
「あ、ちょっ! 花鈴!!」
ありちゃんが心配するのも無理はない。
私だって、昨日何度も夢なんじゃないかなとか、もしかしたら騙されてるんじゃないか、とか色々考えた。
でも、せっかく初めて誰かを好きになったんだから。
詩音くんのことを信じたいし、自分の気持ちだって大切にしたくて…
「あ、花鈴ちゃん!! こっちこっち!」
「詩音くん! 待たせちゃってごめんね、?」
「ううん、全然! じゃあ、行こっか!」
色んなことをごちゃごちゃ考えていたけど、優しい笑顔を向けてくれる詩音くんを見れば、そんな悩みを一瞬で吹き飛んでしまう。
「見て見て花鈴ちゃん! くらげがいるよ!!」
「ふふっ、ほんとだ! 綺麗だね、詩音くん。」
「あ、今絶対僕のこと子供っぽいと思ったでしょ?」
「ううん、思ってないよ。笑 はしゃいでて可愛いなぁって思ったの!」
魚を見ながら子供みたいにはしゃいだり、ぷくっと膨れてみたり。
昨日のスマートな詩音くんとはまた違った姿に目が離せなくて
水族館に来たはずなのに、さっきからずっと詩音くんのことばかりを見てしまう。
「昨日と印象違って幻滅した…?」
「ううん、そんなことないよ。色んな詩音くんが知れて嬉しいよ。」
幻滅なんてするはずない。
今日1日一緒に過ごしただけでも、初めて知る詩音くんにドキドキしっぱなしで、時間が過ぎるのなんてあっという間だったんだから。
「楽しかったね、水族館! 詩音くん、誘ってくれてありがとう!」
「俺の方こそ、楽しかったよ! あ、そうだ花鈴ちゃん、これ。」
水族館を出て、帰り道を2人で歩いていると
ふと、詩音くんから白い紙袋を手渡される。
「え、これって、、」
「そのキーホルダー、花鈴ちゃんお土産やさんで見てたでしょ? だから、今日の記念に僕からのプレゼント。」
袋を開けて見てみれば、私がお土産屋さんで見ていた、イルカのキーホルダーが入っていて。
「いつの間に、、こんなの嬉しすぎるよ…!!」
「喜んで貰えて良かった! 実は…さ、それ、2つ買ったらイルカがくっついてハートの形になるでしょ?だから、僕の分も買ったんだ。お揃いは嫌?」
「ううん、私も詩音くんとお揃いにできたらって思ってたから嫌じゃないよ。詩音くん、ありがとう。大切にするね。」
「良かったー!! 要らないって言われたらどうしようってめっちゃ緊張した!」
「詩音くん、緊張してたの?」
「そりゃあ、好きな子と初デートだもん! 今日1日ずっと緊張したよ。少しでもカッコイイと思って貰いたいじゃん…?」
…そっか。
詩音くんも私と同じで緊張してたんだ。
ドキドキしてるのは私だけなのかなって思っていたから、なんだか嬉しいな、、。
「詩音くんは、カッコイイよ。」
「…っ、! ~~っ!! 不意打ちはずるいよっ、!」
「ふふっ、(笑) 詩音くん耳まで真っ赤!」
「ちょっ、ほんとに…!! 恥ずかしいから見ちゃダメ!!」
「そういう言われると、もっと見たくなるかも…?」
「もう~~!! ダメだって! 花鈴ちゃん!」
「…っ、!!」
恥ずかしそうに顔を隠す詩音くんの顔を除き込めば、思ったより顔が近くて、なんだか急に恥ずかしくなって…
「花鈴ちゃんも、同じくらい真っ赤だね。」
こんなにドキドキするのも、好きになるのも。
きっとこの先詩音くんだけだって、そう思った。
「ねえ花鈴ちゃん、手…、繋いでもいい?」
「うんっ。」
幸せいっぱいの初デート。
私には初めてのことばかりで、全部が楽しくて。
でも…
きっとこの時にはもう、詩音くんはわかってたんでしょ…?
私たちの恋には、期限があるということを…