欲求不満な撲殺魔っ
「『砂塵に帰れ』」
ドガアアアアアン!
杖に溜めた魔力を放ち、無差別に屋敷内を破壊して回ります。
「きゃああああっ!」
「何が起きてるんだああっ!」
パニックになって逃げ惑う使用人の皆様。罪無き方々に天罰は落ちませんから、安心して下さいな。
「ですが今回は、申し訳ありませんが利用させて頂きますわ…………きゃあああああっ、警備隊が屋敷に押しかけて来たわあああっ!」
「け、警備隊が!? 旦那様に限っては、縁の無い話だぞ!」
あの方は白ですわね。
「ちょ、ちょうどいいですわ。これだけの騒ぎなのですから、後は警備隊にお任せしましょうよ」
あの方も白。
「……ちぃっ、一体どこから露見したのだ……がはっ!?」
はい、黒の方発見。気を失わせて、後から尋問致します。
「この調子でしばらくの間、残存している関係者をひっ捕らえましょう」
杖を景気良く振り回し、壁やら柱やら破壊して回りました。
「あ、縛ってある」
「これも捕まえよう」
リファリスが残していった連中を、片っ端に捕まえる。
「『茨』で縛ってあるから、リファリスが何らかの理由で捕まえた模様」
「だね。多分騒ぎを起こして、ボロが出た奴を捕らえてるんだろうし」
荒っぽいけど、使用人内に紛れ込んでる一味を炙り出すには最適かもしんない。
「それにしても、全然撲殺されてない」
「流石にこの状況下じゃ、ゆっくり撲殺する時間は無いでしょ」
リファリスはゆっくりじっくりと獲物を追い込むのが大好きたから。
「……多いですわね」
加減して捕らえるのが、これだけ億劫なものだとは思いませんでした。
「ならば、ここからは撲殺に切り替え…………い、いけませんわ。面倒臭がらずに、コツコツと証拠集めしなくては」
「おい、早くズラかるぞ。旦那ももうお仕舞いだ」
「くそ、あれだけ厳重に管理していたのに、どこから秘密が漏れたんだ!」
あらあ? 再び黒な方をはっけーん。
「あははは、天誅!」
バガッ!
「ぐぎゃ!」
そうですわ、やはりこの感触ですわ! 骨を砕き、肉を千切り、命を散らすこの感触!
「あっはははは! 天罰」
「あ、やっぱり我慢できなくなってる!」
「リファリス、ストップ!」
え、リブラ、リジー?
「証人殺す、ダメ、ゼッタイ」
「全部終わってからにしてよ。ここで撲殺パーティされたら、後始末が面倒臭くなるだけだからっ」
う……た、確かにそうなのですが……。
「こ、この燃え上がった殺意は、どう処理すれば宜しいんですの!?」
「「知らないよっ」」
ううぅ、消化不良ですわ……。
「……リファリス、何でいちいち縛って捕縛?」
はい?
「捕縛するのに、縛る以外の手がありますの?」
「要は動けなくなればいい。だったら、両手足を砕いてしまえば、捕縛完了と思われ」
「っ!? リジー、何を言って」
「それですわっ!」
「ってリファリスめっちゃ乗り気だし!?」
ああ、何故に気付かなかったのでしょう!
「砕ける箇所は頭ばかりではありませんわ! 手の関節に足の関節、全て砕こうと思えば、どれだけの快感が得られる事でしょう!」
「リファリスー、快感って言っちゃってるよー」
「あははは、関節が砕ける瞬間、どれだけの快感なのでしょうか、あははは」
「……駄目だわ、もう言葉が届いてない」
「リブラ、後は任せた方が私達も楽と思われ」
「……そうね。砕かれてるのが頭じゃなくて手足だったら、問い質す事も可能だし……」
「あはははははは!」
バキャボキャメキィボキィ!
「ぎゃあああああああああああっ!」
「あははは! 関節を砕く感触も最高ですわ!」
「いだいいだいいだいいいっ!」
動けなくなったのを回収して……と。
「あんた、商会の内情に詳しい?」
「いだいいだいいだいいだい!」
「ちょっと、聞いてる?」
「いだいいだいいだいいだい!」
はあああ……よっと。
ボギィ!
「ひぎゃあああああああっ!」
「はいはい、これ以上痛くなりたくないなら、サクッと吐いてくれない?」
「分かりました、分かりましたから止めてええっ!」
リジーが提案したリファリス放置案は、思いの外上手くいっている。サクサクと重要証言が集まっている。
「はい、次は貴女」
「痛い痛い痛い! わ、私、ただ食材の配達に来ただけなのにぃ!」
……たまにハズレと言うか、巻き込まれちゃった人も居るけど。
「わ、儂はしがない植木屋なんじゃが!? 何故足を叩き折られなきゃならんのじゃ!」
「お、俺なんか単なる車夫だぞ!?」
「私はただ屋敷前を通りかかっただけですわ!」
あかん。完全に暴走してる。
「リジー、ちょっと止めよう」
「う、うん、その方が良いと思われ」
殺してはないにしても、流石にこれは不味いわ。
「リファリス、ストップストップ!」
「一旦止まって深呼吸しよう!」
「あはははははは! 砕いて砕いて砕きまくりますわ!」
ボキャ! メキィ!
「いったああああああい!」
あ。リジーもやられた。
「あら? 今の声はリジー……」
聞いた事がある声で、リファリスが我に返ったみたい。
「わ、わたくし、リジーの関節まで……?」
「そう! 仲間なのに酷い!」
リファリスがワナワナ震えてる。自責の念で打ちひしがれているのかな。
「…………ふふふふふ……あはははははは!」
……え?
「ああ、仲間の関節を砕くのも、それはそれで背徳的な快っ感ですわ♪」
「え゛」
「リジー、後で治しますから、しばらく我慢して下さいまし!」
「な、ちょ、待って待って待って!」
バキボキバキボキバキボキバキボキバキィ!
「ぎゃああああああああああっ!」
「う、うあ……私じゃなくて、良かったああ……」
……リジー……骨は私が拾ってあげるわ。
リジーはどの世界でも殴られ役と思われ。