恐怖の撲殺魔っ
かなり具体的な死に様が出てきます。ご注意下さい。
「あははははははは! あっははははは!」
「リファリス~、お楽しみ中に申し訳無いんだけど」
「あはははは……何ですの?」
「そいつら、何か情報持ってるんじゃない?」
情報、ですの?
「右から三番目、いつぞやの奴隷売買組織の幹部……に似てる」
奴隷…………ああ、あの奴隷印の。
「そうなんですの、貴方?」
わたくしに視線を向けられた男性は、脂汗を大量に額に浮かべています。
「…………何かご存知ですの?」
「し、知らない! 何も知らない!」
「あら、何を知らないんですの?」
「知らな……え?」
ニッコリと笑ってみせて。
「わたくし、何かご存知ですの、と聞きましたわ。で、貴方は何も知らないと仰いました。で、何を知らないでしょうか。わたくしは何もお聞きしたい事を限定していませんわよ?」
「こ、この流れだと奴隷印の事だろうが!?」
……あら?
「奴隷売買組織のお話を窺いたかったのですが……あらあらあらああ、奴隷印の話を聞かせて下さるんですのおおお?」
奴隷印、それさえ叩ければ、国内の奴隷売買を根絶やしにできるかもしれません。
「さああて、知っている事を全て吐いて頂こうかしらああ?」
早速杖を振り上げ、男の頭に。
「待った。殺しちゃ聞き出せないと思われ」
……振り下ろそうとしたところで、リジーに止められました。
「何故に止めるんですの?」
「死ぬ前に聞き出さないと、意味が無い」
「大丈夫ですわ、撲殺してから聞き出すんですもの」
「え?」
「まずは一度死んで頂きます。それから生き返らせて、また聞き出すのですわ」
「し、死ぬ程酷い目に合わせるんじゃなくて、死ぬ事前提?」
「過去にご自白頂いた方々のお話によりますと、今まで受けてきた拷問の中では、一度死ぬ事が一番きつかったそうですわよ」
「そりゃそうでしょ! 死ぬ程大変な目に遭うって言うくらいなんだから!」
「ですから、貴方は」
ブゥン! ゴシャ!
「ぐぎゃ!?」
「一度、死んできて下さいな」
ブゥン! グチャ!
「げふぃ!!」
ブゥン! バシャア!
……ドチャ
「はい、死ぬ程辛い目に遭いましたわね。では生き返って頂きましょう……『彷徨いし魂よ、ここに戻れ』」
パアアア……
そうじゃ、一つ説明しておかねばならんの。
シスターが復活魔術を使う時は、決まって『パアアア……』という音がするじゃろ。あれ、実は具体的な音を消す為の擬音なのじゃよ。砕けた肉体が元に戻る音なぞ、聞けたものでは無いからのう。じゃからシスター自身が術式に擬音発動術を組み込んでおるのじゃよ。
「……っ……ぅ、はあ!」
「あらあ、無事に生き返れて良かったですわね……文字通り、死ぬ程辛かったでしょう?」
わたくしの言葉によって、ご自身がどうなっていたかを思い出したようで。
「う、うわあああ! あひゃあああああああ!」
暴れ始めますが、わたくしの『茨』に捕らわれている以上、逃げ出す事は適いません。
「さああて、お話し頂けます?」
「ああああああ! 嫌だああああああ!」
「あら、まだ話して下さいませんの? でしたらぁぁぁ……また死んで頂くしかありませんわねぇぇぇ?」
「ひ、ひいいいっ! 死ぬのはもう嫌だああああ!」
「あらあら、吐くのは嫌、死ぬのは嫌。どちらかにして頂かないと」
「嫌だああ! どっちも嫌だああああ!」
「あらあ、でしたら……わたくしが一方的に死ぬ方を選んで差し上げますわ♪」
「や、止め」
「はい、もう一度」
ブゥン! ガヅン!
「ぎゃああっ!」
「はい、死んできて」
ブゥン! ズドン!
「ぐぶぅぅ!」
「下さいなっ」
ブゥン! ボフン!
「ぐげぇぇえ!」
内臓を二つ程破裂されたのですが……まだ転がり回れるくらい元気ですのね。
「でしたら、手足の関節破壊をオマケして差し上げますわ♪」
ボキャ! メキィ! バギャ! ベキィィ!
「ぎぃああああああああぁぁぁぁぁぁ…………」
「あら、痛みに耐え切れずにショック死なさったようですわね。では『迷える魂よ、今ここに』」
パアアア……
「……ぐ、ぐああ! ぐうぅぅぅぅ!」
「あらあら、わたくしとした事が、内臓だけ治して関節を治し忘れてましたわぁ♪」
「い、いでええええ! いだああああい!」
「ちゃんと治さなくては、不公平ですわねぇ~……はい、や・り・な・お・し♪」
「え……」
ブゥン! ズボォ!
「おぐぇえええええ!」
「もう一度内臓破裂からですわ! そぉれ!」
ブゥン! ズズゥ!
「げぶぉおおおお!」
「はい、とどめですわ♪」
ブゥン! ドズゥ!
「ぐ、ぐぶぅ…………」
「あらあら、わたくしとした事が、勢い余って貫いてしまいましたわ! あははは、あはははは、あっははははは!」
み……見ているこっちが痛くなるのぅ……いくら生き返るとはいえ、ワシはあんなのは御免じゃな……。
パアアア……
「……ひ、ひぅぅぅ……はあ、はあ、はあ……」
「破裂していた肺が治りましたわね。では、全て話して頂けますかしらあ?」
「は、はい……話します……話しますから……」
「……何かお望みですか?」
「も、もう……死んでも生き返らせないで下さい……もう嫌だ……死んで終わる方がマシだ……」
「宜しくてよ。全てお話し頂けましたら、二度と生き返らせないと誓約致しますわ」
それからこの男性は、頑なに拒んでいた組織の内情を、洗いざらいぶちまけて下さいました。
「成る程、あそこがアジトだったのね」
「あの議員がバックにいたのか……と思われ」
「はい、全てお話し頂けたと認めますわ。以後、わたくしは貴方を二度と生き返らせません」
「……ああ……死ねるのか……俺、普通に死ねるのか……」
この男、間違い無く死生観が変わったじゃろな。
ある意味究極の拷問。