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治安維持な撲殺魔っ

 戦争の間は、どうしても衛兵さん達は不足しがちです。よって、どの町でも治安の悪化が懸念材料になってくるのです。


「そういう訳ですので、しばらくの間は奉仕作業の内容を、清掃から治安維持に変更致します」


「な、何がどういう訳なの?」

「リファリスが急に訳の分からない事を言い始めたと思われ」


 何を仰るんですの。


「治安維持は重要ですわよ。セントリファリスの住民の皆様に、安全安心な生活環境を提供しなくては」


「…………リファリスが言う安全安心って、血みどろアハハな展開しか思い浮かばないんだけど」


 何ですの、血みどろアハハってっ。


「どちらにしても、住民の皆様を守る事は重要じゃありません?」


「それは否定しない」

「同じく」


「では、治安維持活動を始めます。わたくしは住宅街を回りますから、リブラとリジーで市場と商店街をお願いします」

「分かった」

「合点承知之介」


 しょ、承知之介?



「……意外だった」


「ん?」


 スリや置き引きを警戒して歩く私に、珍しくリジーから話しかけてくる。


「てっきりリファリスが市場周辺を回るかと思ってた」


「何で?」


 あ、早速目つきの怪しい奴を発見。


「だって、市場って犯罪者の宝庫だし」


「確かに……ね!」

 バァン!

「ぎゃっ!」


 すれ違いざまに他人の財布に手を伸ばした男の手を掴み、そのまま地面に引き倒す。


「確かにこんなのが多いけどさ……あ、オッチャン、こいつ縛っておくからさ、警備隊通ったら引き渡して」

「おいよ。店の裏にでも放り込んどいてくれ」


 ドサンッ!


 言われた通りに、生ゴミが詰まれた箇所にスリを放り込む。あ、五月蝿くないように猿ぐつわはちゃんと噛ませたわよ。


「で、リファリスが市場を回らなかった理由だっけ?」


「そう……てりゃ」

 バシィン!

「ぐあっ!」


 今度はリジーが、果物を持ち逃げしようとした男を張り倒す。


「なら簡単じゃない。市場じゃこういうのが引っ切り無しだから、捕まえるだけでやっとでしょ」


「……捕まえるのが目的と思われ?」

「いでででで! 離しやがれ!」

「五月蝿い」

 ゴゲンッ

「がっ」


「リファリスの目的は治安維持だけじゃなくって…………ねえ?」


「……まさか、ゾンビ化の際の撲殺だけじゃ飽き足らず?」


「そりゃあ、リファリスは悪人を撲殺する事が、一番快感なんだから……」



「……おい、どうだ?」

「へへ、やっぱり手薄だな。戦争様々だぜ」


 カチャカチャ……ガチンッ


「おい、開いたぞ」

「よしよし。お宝を頂いたら、サッサと退散するぜ」

「なーに焦ってんだよ。警備隊なんか当分来ないぜ?」

「いや、何だかんだ言っても聖女……いや〝紅月〟のお膝元だからな。何があるか分かりゃしねえ」

「本当に、その通りですわねぇ」

「「「……え?」」」


 話し声がすると思って来てみれば……やっぱりでしたわねぇぇ。


「これはこれはご機嫌よう、泥棒の皆様。噂をすれば何とやら、とは上手く言ったものですわね」


「ま、まま、まさか」

「法衣姿で、毛先が赤い白髪の美女……ほ、本当に出やがった!」


「あらぁぁ、何が出たのかしらねぇぇ」


 わたくしの背後に太陽が入り、顔を黒く染めます。そして、紅い三つの月が浮かび上がり……。


「あ、あ、紅い月……やべえ、マジで出やがった!」

「逃げろ、〝紅月〟だああ!」


「あはは、逃がしませんわよ……聖女の戒『茨』」


 シュルルッ


「うわ、何だこりゃ!?」

「う、動けねえ……」


 地面から突如生えた茨に巻きつかれ、身動きが取れなくなる泥棒さん達。


「あははは、これで逃げられませんわよ」


「ち、ちっくしょおお!」


 捕縛を免れた方がお一人、わたくしに向かってきます。


「よ、よせ! 敵う訳ねえだろ!」

「やってみなけりゃ、分かんねえだろがああっ!」


 短剣を握り、わたくしに向かって猛然と突撃し……。


 ドスッ!


 銀色の先端がわたくしのお腹から背中を突き通り、法衣を赤く染めます。


「や、やった! やったぜ! 俺様が〝紅月〟を殺ったぜええ!」


「……馬鹿が……」

「知らねえぞ……」


「あらぁぁ。誰が誰を殺ったんですの?」


「……え?」


 腹を貫かれた筈のわたくしが、ニッコリ微笑んでいるのを見て。


「な……何で!? 何で平気そうにしてんだよ!!」

「何でって……平気だからですわ」


 わたくしを刺した勇気はどこに行ったのか、恐怖を覚えて後退り始めます。


「はい、貴方は殺人未遂ですから、他の方々より罪は重いですわよ」


 ズボッ ブシュウゥゥ


 刺さったままだった短剣を抜くと、更に血飛沫が法衣を濡らします。


 ブシュウゥゥ……


 しかし血はすぐに止まり、傷も塞がり。


「ひ、ひいいっ!」


 一分もしないうちに、傷跡も残さず癒えてしまいました。


「さああ……楽しい楽しい断罪のお時間ですわよぉ。あははは、あははははは、あははははははははは!」


 泥棒さん達の顔色は、更に悪くなっていきました。



「……はい、撲殺!」

 ゴシャ!

 ……ドチャ


「あははははははははははは! 泥棒さんみーんな、頭が爆ぜて無くなりましたわ! ああ、可笑しい! 可笑しいったらありゃしない! こんな愉快な花火は他にはありませんわ! あはははははははははは!」


「……ほら、やっぱり」

「うぇぇ……」


 予想通りに、リファリスは喜々として犯罪者を殴り殺している最中だった。


「いいの、あのままで?」

「……あの状態のリファリスを止める勇気ある?」

「無い。なっしんぐ」

「だったら放置しときましょ。どうせ生き返らせるんだし、治安維持には一役買ってるんだし」


「あはははははははははは! さあさあ、まだまだ花火が咲きますわよ! 真っ赤な真っ赤な血の花火が! あははははははは!」

リファリス、大活躍?

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