表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/428

予想外な撲殺魔っ

「…………はぁ」

「お姉様、どうされましたの?」


 お姉様の口から出るのはため息ばかり。せっかくの二人きりのティータイムなのに。


「ああ、ごめんね。また始まるじゃない」

「ああ、戦争ね。別にいいじゃない、武家の誉れだわ」

「誉れ……か。確かにそうなんだけど、ね……」


 ……お姉様?


「昔の私なら、素直にそう考えてたわ。リブラ家当主として、皆を率いて戦場に立っていたと思う」


 ……っ……まさか。


「またあの女……じゃなくて聖女様の影響ですの!?」


「あの女呼ばわりしないで。何度も言うけど、私の想い人」

「呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる」

「……あんたね、都合悪くなったらそれやるの、いい加減に止めなさい」

「呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる」


 得意技、首だけで呪ってやる攻撃を繰り出していると。


 がしっ


 え?


「スラム・ダーンク!!」

 ブゥン! ズダァァァァァン!

「いったあああああい!」


 石の床に頭を叩き付けられて……!


「止めなさいって言ってるでしょ! 今度やったら、もう二度と一緒にお風呂入らないんだから!」


 んぎゃあああああ!!


「もうやりません! 止めます止めます止めます!」


 一緒にお風呂に入れなくなったら、裸のお姉様を見られる貴重な機会が失われてしまう……! それだけは断じて避けなければ……!


「……あんた、本当に腹芸が苦手なのね」

「背に腹は代えられませんから」


 腹芸が苦手と言うより、己の欲望に忠実なだけですわ。


「……ん? この気配と足音は……」

「どうかしましたか?」

「あー、うん。リファリスが帰って来たみたい」


 途端に気分が急降下していきます。逆にお姉様は急上昇しています。


「……せっかくの二人きりのティータイムを邪魔してくれて、あの女(聖女様)は……!」

「……ラブリ、本音に虚飾を重ねるのが上手くなったわね」


 そんな事をしている間に。


「……ただいま帰りましたわ」

「あ、リファリスお帰りなさい~♪」


 楽しい楽しいお姉様との二人きりの時間が終わってしまったのです。聖女様(あの女)……いつか泣かして差し上げる……!



「……あら、貴女は」

「お邪魔しています、聖女様」


 リブラと同じ顔が、わたくしに見事なカーテシーを披露します。


「何度も言いますが、わたくしは聖女と呼ばれるような器ではございませんわ」

「そうですね」


 ……ん?


「ラブリさん、何か仰って?」

「いえ、何も」


 そうでしたか?


 がしっ

「ブザー・ビーター!!」

 ブゥン!

「あひゃああああああぁぁぁ…………」


 っ!?


「何でも無いよ、リファリス。何も言ってなかったし、誰も居なかった」


「あ、貴女、妹さんの首を……」


 ダダダダダッ!


 ど、胴体が焦った様子で走り去りました。


「気のせいよ、気のせい」


 …………デュラハーン姉妹の喧嘩は、いつもこうなのかもしれませんわね。


「それよりリファリス、早かったね」


「そうですわね。会議には五分も居ませんでしたから」


「………………え、何で?」


「何でって、わたくしは不参加を表明してきただけですから」


「………………は?」


「不参加です。今回の戦争、わたくしは参加しませんわ」


「え、ええええええええっ!?」


「意外ですか?」


「い、意外って言うか、そんなの許されるの!?」


「許されるも何も、聖心教では伝統的に志願者のみの参戦ですわよ?」


「た、確かにそうだけど、リファリスはそれでいいの?」


「ですから、何か不味いんですの?」


「えっと……聖女であるリファリスが参加しなくて、立場的に大丈夫なの?」


 ……ああ、そういう意味ですの。


「でしたら、何ら問題ありませんわ。きちんと大司教猊下の許可も頂きましたし」


「大司教猊下って……ルーディア様?」

「いえ、ルドルフ大司教猊下ですわ」

「ああ、だったら大丈夫か」


 ルディは絶対にあのような場に参加する事は無くてよ。


「でも、何で不参加なの?」


「別にわたくしが行く必要は無いでしょう。回復役でしたら、軍にもちゃんと居ますし」


「いや、聖女が参加してるかしてないかで、随分と士気が違うと思うけど」


「大丈夫ですわ。今回は獅子心公(ライオンハート)が出陣するそうですから」

「え、嘘!? ライオン公が!?」


 わたくしも聞いた時はびっくりしましたわ。


「……とっくに引退したかと思ってたのに」

「まだまだ現役じゃって、お元気な様子で笑っていらっしゃったわ」


 本当に、色々な意味で、現役でいらっしゃるんです。



 ガチャ カチャカチャ


「……ライオンよ」


 馬具を直す手を止め、話しかけてきた大司教を睨む。


「何度言わせるのじゃ。ワシはライオンでは無く、ライオットじゃ」


「……ライオット、何のつもりだ?」


「何のつもりだ、とはどういう意味じゃ?」


「引退した筈のお前が、再び現役復帰した理由を問うている」


 何じゃ、その事か。


「別に深い意味は無いの。ただただ、血が騒いだだけじゃ」


「血が騒いだ……か。如何にもお前らしい言い訳(・・・)だな」


 ピタッ


「……どういう意味じゃ」


「真の理由は別にあるのだろう」


 ……ふふふ。やはり大司教を騙す事は叶わんのぅ。


「そうじゃな。理由は他にある」


「ほう。それは何だ?」


「プライベートな理由なのじゃが……」


「最近、お前が多様している『千里眼』が関係しているのだろう?」


 ぐっ。あ、相変わらず鋭いのう。


「……ノーコメントじゃ」


「……ふん、まあいい。だが、ライオンよ」

「じゃからライオットじゃ」

「我が半身が怒っていたぞ。友達の私生活を覗くのは大概にしろ、とな」


 ぐっ。


「まあ良い。活躍を期待しているぞ、〝死に戻り〟のライオットよ」

あれ? ライオットって……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ