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諜報と撲殺魔っ

 手段を選ばずに町のお偉方を動かしおった。やはり三権の一角ともなると、町長も無視はできんのう。

 む? 三権なんて聞いた事が無い? 何じゃ、知らんのか。

 三権とはの、文字通り三つの権力に互いを監視させ、政権の暴走を防ぐ政治的仕組みの事じゃよ。所謂三権分立じゃな。この国の場合は首長・議会・聖職者がそれを担っておるのじゃ。つまりロードであるシスター・リファリスも三権の一つを有しておるのじゃよ。



「ではわたくしと町長様の発議という事で、軍の派遣を議題として提出しますわ」


 町長様と面談した十五分後には、議会に議案として持ち込める状態にまで練り込んで、議長様に提出しました。


「……随分と急な発議ですな、ロード」

「手順をすっ飛ばしている事は重々承知しております。ですが、事は一刻を争いますので」


 議案をパラパラと見ていた議長様は、わたくしを見て頷きました。


「議長権限で議会には事後承諾としておきましょう。軍の派遣、議会としても同意します」


「宜しいんですの?」


「未来を担う子供達に危険が迫っているのです。ロードが仰る通り、一刻を争いますでな」


「ありがとうございます」


 頭を下げるわたくしを見ながら、議長様が苦笑いしました。


「いやいや、血がこびり付いた杖を片手に来られては、了承せざるを得ませんからな」


 あら。これは失礼致しました。



 軍を動かすとは言っても、町中を軍がウロウロする訳ではありません。

 軍には様々な組織がありますが、その中には諜報を専門にした部隊もあります。わたくしの狙いは、その部隊を動かす事だったのです。


「……それで今回派遣されてきたのが……貴女なんですの?」

「…………はい」


 夕方になって、ようやく教会に姿を現したのは、諜報部隊の隊長様と、何故か全身を鎧で固めた女性らしき人物でした。


「貴女、本当に諜報を得意となさってるんですの?」


「……何故そう思……う」


 いえ……全身すっぽり覆う甲冑姿で諜報は無理でしょう。


「いやいや、この者は我が部隊でも一二位を争う手練れですぞ」


 手練れ……ですのね。


「部隊長様がそう仰るのでしたら、そうなのでしょうが……派遣して頂けるのが、この方一人だけというのは……」


「……正直申しますと……私の部隊の一班お貸しするより、この者一名の方が優秀なくらいでして」


 ……はい?


「一班で何名ですの?」


「六名です」


「諜報員六名分を、この方がお一人でこなしてしまうと?」


「はい」


 ……それが本当でしたら、大変優秀な方なんでしょうが……。


「ですが変ですわね。何故そこまで優秀な人材を、いの一番に貸し出して下さるんですの?」


「そ、それは……ロードのご依頼ですから……」


 ……明らかに目が泳いでますわね。


「部隊長様」

 カッ

「は、はい!」


 わざとらしく杖を地面に突き立て、夕日を背に立ち上がります。


「ちゃんと説明して下さいますわね?」


 黒く染まったわたくしの顔を見た部隊長様は、冷や汗で全身を濡らしながら頷きました。


「シ、シスター、分かりましたから! その顔は止めて下さい!」


 あら。わたくし、ただ笑っただけですわよ?


「……悪魔の微笑み」


 …………鎧さん、何かボソッと仰ってますね。


「っ……じ、実はこの者! 最近私の部隊に配属されたばかりで!」


 それを誤魔化すように部隊長様が話を逸らします。


「………………はい。それで?」


 わたくしも無駄に時間を浪費したくありませんから、それに乗ります。


「配属当初から数々の功績をあげ、評価は鰻登りなのですが…………何分、常にこの格好で」


 常に、鎧姿?


「おまけに、周りに溶け込もうという意思が更々無いようでして……」


「……つまり優秀な半面、癖が強すぎるのですわね?」


「は、はい。そうなります、はい」


 ……っ。


「この重大事に、そのような人物をわたくしに差し向けるとは…………」

「ままま待って下さい! この人選がベストである理由が、ちゃんとあるのです!」


 杖を振り上げたわたくしに、部隊長様は平身低頭でそう仰ったのです。


「理由……ですの?」


「はい。この者はある物を報酬として約束しますと、普段の五割増しで働きますので」


 ある物を提示すれば、優秀さが五割増しますの?


「それは……報酬になり得る物を、わたくしが多数所蔵している、と言いたいんですの?」


「は、はい。そうなります」


 わたくしが所蔵している物と仰っられましても。


「清貧を尊ばれる聖心教には、与えられる報酬はございませんわ」


「だ、大丈夫です。この者が望む報酬は、いささか変わっておりまして」


 ……わたくしが所蔵している物で、いささか変わっている物……。


「……それは……危険な物なのですか?」


「……はい。物によっては、大変危険な物もありましょう」


 ……まさか。


「呪具では……ありませんわよね」


 部隊長様は視線を外し。


「…………そうです。呪具コレクターなのです、彼女は」


 ……成る程、確かにいささか変わっていますわね。



 呪具とはの、文字通り呪われた道具の略称じゃ。武器は勿論、防具や生活道具等、呪具は多岐に渡るの。

 そういった呪われた道具を祓う事も、シスターの重要な仕事なのじゃ。じゃから当然ながら、沢山の呪具を所有している事になるの。



「……呪具を集めて何をしたいのですか、貴女は」


「……別に理由は無い。好きなだけ」


 ……呪具が好きとは……それはまた、飛び抜けた変わり種ですわね。


「まあ……貴女がちゃんと仕事をしてくれるのでしたら、呪具の一つくらいは」

「本当に!?」


 なっ!?


「そ、その鎧姿で音も立てず、わたくしの目の前に!?」

「はい。呪具が関わると、一層優秀なのです」


 成る程……腕が確かなのは間違いありませんわね。


「ねえねえ、呪われアイテムくれるの?」


 呪われアイテム……呪具の事ですわね。


「勿論ですわ」

「うん、この仕事受けた」


 まあ……ちゃんと依頼をこなして下さるんでしたら、問題ありませんわ。


「ではよろしくお願いします……そう言えばお互いに名乗っていませんでしたわね。わたくしはリファリスですわ」


 ガタタッ


 すると突然鎧さんは、わたくしから離れてしまったのです。


「リ、リファリス様!?」


 ……様?

さて、鎧さんの正体は誰でしょうか。


一、頭に蛇を生やした聖術士。

二、空飛ぶ月魔術の使い手。

三、巨乳電撃娘。

四、魔王様。

五、と思われ。


正解なさった方には聖女様に撲殺される権利か、高評価・ブクマの権利のどちかが当たります。

間違えた方には、夜中に枕元に聖女様が立ちます。但し、高評価・ブクマして頂ければ防げます。



フィクションです。

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[一言] 解答は『五』と思われ。
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