更にスパルタ撲殺魔っ
「たあああっ!」
ザンッ!
「聖属性、ゼロ。よって、ダメージとして認識されず」
「ううっ!」
「……何度も言いますが、聖属性の攻撃を求めていますのに、呪いを纏った攻撃をしてはいけませんわよ?」
「わ、分かっていると思われ……!」
大体、呪具と聖属性は対局に位置しますのに、両方求めているようでは……ね。
「ゴーレムリジー、残り時間は?」
「あと七分と二十二秒と思われ」
「……だそうですわよ。急がないと、ゴーレムリジーから罰を執行されますわよ」
「きぃぃあああ! 燃え上がれ、私の隠された才能よおおお!」
それを聞いたリジーは、ますます焦り始めるのでした。
「……リファリス、リジーに聖属性をマスターさせる必要あるの?」
呆れた様子でリジーを見ていたリブラが、わたくしに問いかけてきます。
「正直に言えば、必要ありませんわね」
「必要無いの!?」
更に呆れた表情を浮かべるリブラに、わたくしはわざと妖艶な笑みを向けました。
「リブラもこれから厳しい修行に臨んで頂くんですもの。聖騎士であるリジーにも、同じくらい大変な目に遭って頂かないと、不公平でしょう?」
「あ、あははは、リジーは当て馬って訳か…………ん? 私も厳しい修行?」
「わたくし、言いましたわよね。テンタクルスゾンビを一瞬で浄化できるくらいには、なって頂きますって」
「ええっ!? 無理! 無理だって!!」
「あらあああ? リブラったら、リジーに負けるのが怖いのかしらあああ?」
「そ、そんな事は無いし。大体、リジーには聖属性を扱える訳が無い以上、負けるなんてあり得ないし」
ザシュ!
「…………僅かながら、聖属性を探知。よって、ダメージ有りと認めます」
あら、リジーはちゃんと結果を出したようですわね。
「は、はあ、はあ、や、やったと思われ」
「…………え゛?」
リブラ、口をそんなに開けて呆けていては、リブラ侯爵家の名が泣きますわよ。
「どのようにして聖属性を発現したのかは謎ですが、リジーの努力が功を奏したようですわね」
「ど、努力でどうにかなるもんなの!?」
「どうにかなるのが、努力なのですわ」
「……リ、リファリスって、意外と脳筋な思考回路なの?」
何故回路なのですか。
「ほら、貴女も修行しますわよ。それにしてもリジー……ふふ、見直しましたわ」
わたくしの呟きが聞こえたらしいリジーは、リブラの方を見まして。
「……好感度、アーップ」
「なっ……きぃぃぃ!」
地団駄を踏んだリブラは、わたくしに向き直り。
「リファリス! 私、やります!」
決心した様子のリブラの目は、決意の炎で燃え盛っています。
「分かりましたわ、ならば特別にわたくし自らマンツーマンで扱いて差し上げます」
「「マンツーマン!?」」
それを聞いた二人が激しく反応しました。リブラは嬉しげに、リジーは哀しげに。
「わ、私、一生懸命やりますわ! ひゃっほーい!」
「ず、狡い! リブラだけリファリス直々に教えてもらえるなんて!」
「それは仕方ありませんわ。わたくし、剣を使った事はありませんもの」
「く……こ、こういう時だけは、剣士である自分が憎い……」
「リブラも剣士向きですが、魔術は闇属性固定ではありませんから、わたくしが直々に教えて差し上げられますわ」
「いやっほーい! 闇属性じゃなくて良かった、ひゃっほーい!」
「では早速始めますわ……リジー、貴女も訓練を続けなさい」
「う、うい……」
さっきまで浮かれていたリジーが、何故か元気がありません。一体どうしたのでしょうか……?
「はあ、はあ、うりゃあ!」
ザシュ! ザンッ!
「……聖属性を激しく検知。よって、私は討ち取られたと認識しますた」
「ふ、ふぅ、ふぅ、聖属性の呪いの顕現、上手くできるようになった」
私も「呪い=闇属性」という固定概念に縛られてた。火の呪いもあるし、水の呪いもある。
「だったら聖属性の呪いもあるかも、と思って頑張ってみたら……できた」
呪いとは言え、聖属性には間違い無い。これならリファリスも認めてくれる……筈。
「はぁぁ……だけどリブラは今頃はリファリスと一緒に汗を流し」
「うきゃああああああああああっ!」
ゴロゴロゴロゴロズシャーー!
「……え?」
い、今飛んできたのって、リブラ?
「あら? あらあらあらあああ? これくらいの衝撃も、受け止められませんのおおお?」
リ、リブラ、汗を流してるんじゃなく、血を流してると思われ。
「ほらあ、ご覧なさい。リジーはちゃんと形になってますわよ。それに引き換え、貴女は……てんで駄目駄目ですわねぇ」
「う、うぐぐ……」
リブラ、立つ気力も無い模様。
「ほらほら、回復して差し上げますわ……『癒せ』」
パアアア……
「う、うぅ……も、もう無理! 私には無理!」
「あらあらあらあああ? もう諦めますの? リブラ侯爵家の方が、この程度でええ?」
「リブラ侯爵家関係無い! 無理なものは無理!」
「まあ良いですわ。もう一度いきますわよ!」
「だから、無理だって」
ズギャアアアン!
「ぐっはあああああ!?」
っ!!!?
ドガアアアアン!
「あぎゃはああああああ!?」
「ほらほら、これくらい受け止められなければ、立派な結界とは言えなくてよ!」
ズドドドドドン!
「ぐげええええええええええ!?」
……リファリス……それは私でも無理だと思われ。
「リジー、助けてえ! 代わってええ!」
「さ、さーて、ゴーレムリジー、もう一戦しよっか」
「了解しますた」
……私、ゴーレムリジーが相手で、本当に良かった。
明日は閑話です。