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スパルタ撲殺魔っ

 骨が無いテンタクルスは、スケルトン系のアンデッドになる心配はありません。


 ボタボタ……


 残っていた軟らかい骨も、既に液状化し始めていました。これなら上手くいくかもしれません。


「ではリジー、わたくしが教えた通りになさって下さい」


「ほ、本当にできる?」


「呪具を日常的に着用しているリジーでしたら、呪いのコントロールなんてお手のものでしょう?」


「む、そう言われてしまうと退き下がれない」


「呪いに関しては、わたくしはリジーの足下にも及べませんわ。ですから、どうかお願い致します」


「し、仕方無いでござる」


 鼻がピクピクしてますわね。上手く乗って下さったようです。


「あはは、それって逆に言っちゃえば、呪いくらいしか取り柄が無いぐふぉう!?」


 余計な事は言わなくてもいいのですわ、リブラ!


「なら、リジー行きます!」


 テンタクルスの死体の前に来ると、わたくしが教えた詠唱をそのまま唱え始めました。


「黄昏よりも暗き者…………あ、これは違う」


 はい?


「I am the bone of my sword……これも違った」


 はいい?


「えっと、我が魔力が糸となりて、汝に血と肉と力を与える。闇の教えに導かれ、今再び光と相対せん。我が剣と盾となり、我が為に戦い、我が為に滅ぶべし……『呪体生成』」


 ボタボタ…………ガコッ


 リジーの詠唱が終わると、腐り落ちていた軟骨が形を成し始めます。


 ガコッ ゴトゴトゴトッ


 次第に人の骨に近い骨格を形成していきます。


「ではリジー、肉体となる呪具を」

「ううぅ……またコレクションが失われるぅ……」

「我慢しなさい。後でまたあげますから」


 それを聞いたリジー、キラーンと目を光らせます。


「ならば呪いがイマイチな、これとこれとこれをっ」


 大事なコレクションの割には、呪いの強弱でアッサリと差し出すのですね……。


 ガタ……ガタガタ


 呪具が振動し、次第に形が崩れていきます。


 ザアアアア……


 粉状になった呪具は、組み上がった骨格に纏まり付き。


 ザアアアア……


 次第に身体を作っていきます。


 ザアアアア……


 それはリジーによく似た少女の形態となっていき。


 ザアア……


 髪の毛にイカの触腕が混ざった、新たな命を誕生させたのです。


「……テンタクルスと呪具によって生成されたゴーレム、今完成しますた」


 独り言のようにボソリと呟くと、ゴーレムはわたくし達に向き直ります。


「それで、ご主人様はここに?」


 それは「どこに?」ではありませんの?


「ああ、それは創造主である私」

「わたくしがそうですわ」

「リファリス!?」


 ゴーレムは眠たげな眼をわたくしとリジーに向けてから。


「……創造主は貴女様。ですから、貴女を主人と認めるです」


 そう言われてリジーは鼻をピクピクと。

二番目(・・・)の」

「……え゛?」

 ……できませんでした。


「我が身体を繋ぎし詠唱を定めた貴女様こそ、真の創造主で在らせられます。どうかご命令を」

「え? ええ?? ええええ????」


 訳が分からないリジーは、わたくしに痛い程の視線を送ってきます。


「ゴーレムが言った通りですわ。創るよりも紡ぐ事の方が支配権の影響が強いのです」


 今回リジーは、わたくしが組み立てた術式をそのまま使いました。ですから、詠唱は完全にわたくしのオリジナルなのです。


「詠唱にはわたくしの影響が強く残っていますから、どうしてもこうなってしまうのですわ」


「リ、リファリス、分かってて私にやらせた!?」


「無論ですわ。じゃなければ、貴女の修行になりませんから」


「わ、私の修行?」


「さっき言いましたわよ。貴女にもわたくしができるくらいの事は、できるようになってもらいます、と」

「ええっ!?」


 ゴーレムに再び向き直ると、わたくしは最初で最後の命令を出します。


「朝、昼、晩とリジーに挑みなさい。但し、決して殺してはいけません」

「御意」

「貴女がダメージと感じて良いのは聖属性のみ。それ以外はカウントしないように」

「御意」

「テンタクルスゾンビを滅ぼし得るダメージを受けた場合、貴女は負けを認め、活動を停止しなさい」

「御意」

「それと……」


 リジーにはやる気を出して頂かないと不味いですから……。


「……一日通して負け続けた場合は、一晩貴女へリジーを預けます」

「え゛」

「朝まで貴女の好きなようになさい」

「それは……【いやん】な行為も許可されるので?」

「勿論、許可しますわ」

「リファリスぅぅぅ!!!?」


 わたくしはニッコリと微笑んでから、リジーに向き直ります。


「わたくしの命を狙う者は、やはり闇属性が多いです。ですから護衛であるリジーにも、聖属性の扱いに慣れて頂かないといけませんわ」

「い、いや、大丈夫。私には呪われアイテムが」

「呪いはどう考えても闇属性ですわ。闇属性同士では苦戦は必至ですわね」

「だ、だから、呪いで全てを打ち破れば」

「ああ、そう言えば大司教猊下から、貴女に通達がありましたわ」

「へっ!?」

「貴女を、わたくし専属の()騎士に任命するそうです」


 それを聞いたリブラは、本気で驚いていました。


「聖騎士!? 呪剣士のリジーが、パラディン!?」


「はい。リジーはパラディンになります。だから」


 わたくしはリジーの肩に手を置き。


「頑張って、聖属性をマスターして下さいね……わたくしの聖騎士様」



 後には、呆然としたリジーと、いつ襲いかかろうか身構えるゴーレムが残されました。

もうすぐ新章です。

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