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次期国王と次期大司教っ

「え? 大司教猊下の元へ、ですの?」

「は、はい。境遇を聞いて下さった大司教猊下が、私を引き取りたいと仰られまして」


 ……?


「大司教猊下がお弟子さんを望まれる事自体が前代未聞ですのに、メリーシルバーは何故複雑そうな表情をしているんですの?」


「え゛……あ、い、いえ、あ、あまりに、唐突な展開だったから」


 まあ、確かに唐突でしたわね。


「ですが、大変名誉な事ですわよ?」


「め、名誉……?」


「聖心教のトップでいらっしゃる大司教猊下が、直々にお弟子さんを取られるんですのよ。今はともかく、将来は間違い無く次期大司教候補ですわよ」


「次期大司教候補!?」


「本人の努力次第、というところも当然ながらありますが」


「次期……大司教……」


「それに血筋や過去の行い等も重要になってきますわね」


「……私が……大司教に……」


「そして何より、その強大な権力(・・・・・)を制御するだけの、知識と誠実さが求められますわね」


「きょ、強大な権力、ですか!?」


「それはそうでしょう。この国だけでは無く、南大陸全体で信仰される聖心教のトップですのよ。並みの国王よりは、遥かに上の存在ですわ」


「並みの国王より上!?」


 ……メリーシルバー、何故か闘志を燃え上がらせてますわね。


「……なります……」


 はい?


「大司教に……私は、なる!」


 はいい?



 その後、メリーシルバーは正式にルドルフ大司教猊下の直弟子として迎えられ、後継者への厳しい階段を昇り始めたのです。


「……結局、初等科も辞めてしまいましたわね……」


「そりゃそうでしょ。将来有望とは言え、あの素性が明らかになった上、大司教猊下の直弟子だもんねぇ……」


 弟子になるという話と同時に、メリーシルバーの出自にまつわる情報が露わになり、人々の関心を集めていました。


「現第一王位継承者・マリーゴールド王女の双子の妹だったなんて……」


 双子の慣習は現在は薄れているものの、貴族の間では色濃く残っています。ましてや、貴族よりも上の立場にある王族ならば、更にその傾向が強まるのです。


「メリーシルバーが預けられていた孤児院には、その事は伝えてあったんですの?」


「メリーシルバーが成人する際に、その事を伝えるって段取りだったみたいね。ただ、その前に誰かが教えちゃったみたいだけど」


 己の境遇に理不尽さを覚えたメリーシルバーは、一念発起したそうで。


「実力のみで成り上がり、いつか王位を奪ってやるつもりだったみたいね」


 リブラはリジーが書いた報告書をパラパラと捲りながら、ため息を吐いた。


「確かに優秀だったんだろうけど、それだけで簒奪できる程に王冠は軽くないでしょうに」


「血筋と能力は備えていたのかもしれませんが、姉の存在は如何ともし難いですわね」


 足掻いたところで、届く筈の無い場所ですのに。


「それが可能になる方法が、一つだけあるわね」

「不謹慎ですが、マリーゴールド王女殿下の身に何かあれば、メリーシルバーに第一王位継承者の立場が転がり込んできますわね」


 実際に行われたのかは不明ですが、メリーシルバーの後ろ盾となった貴族が、刺客を放ったらしい……という情報はあったようです。


「で、危険を感じたマリーゴールド王女殿下は、初等科からメリーシルバーを追い出す為に、子飼いの貴族の娘を使って……」

「激しいいじめに及んだ……という訳ですか」


 わたくしの目の前の少女は、明後日の方向に視線を向けています。


「マリーゴールド王女殿下。どうなのですか?」


 目の前の少女……マリーゴールド王女殿下は、メリーシルバーとそっくりな顔を歪ませました。


「わ、私が悪いんですの!? 私、あの性悪女と違って、命までは取ろうとはしませんでしたわ!」


「そうですわね、命を取るつもりは無かったかもしれません。ですが」


 わたくしはリブラが見ていた報告書を取り上げると、王女殿下の前に差し出しました。


「このままでしたら、メリーシルバーは鬼籍に入っていた可能性が高かったですわよ?」


 その報告書には、メリーシルバーに対するいじめの内容が記されていましたが…………正直な話、よくぞ今まで耐えていたものです。


「……っ……そ、そんな! こんな残忍な……」

「最後には自殺に見せかけて殺害するつもりだった、と供述しているようですわ」


 警備隊の取り調べに素直に応じているのは、わたくしへの恐怖が原因だと語っているようです。失敬な。


「あの~……それよりさ」

「はい?」

「何で、私が縛られてるの? 第一王位継承者である、私が」

「それは勿論、罰を受けて頂く為ですわ。無論、陛下の許可は頂いてましてよ」

「ば、罰!?」


 ニィィィッコリと嗤い、マリーゴールド王女殿下の耳元に唇を寄せ。


「大丈夫ですわ。ちゃーんと治して差し上げますから……身体は(・・・)

「ひ、ひいい!?」


 あは、あははは! まさか、王族を撲殺できる幸運に恵まれるなんて! これも主のお導きなのでしょうか。あははははははは!


「ちょ、何で私だけ!?」

「大丈夫ですわよ。いじめを指示した伯爵も撲殺対象ですから。さあ、素晴らしいショーの幕開けですわよ! あは、あははは!」

「いいいやあああ!」



 ……あんな可憐な王女まで撲殺するのか……はあ、恐ろしや、恐ろしや。

 あ、そうじゃ、メリーシルバーという娘じゃがの、あれもあれで酷い目に遭っておるようじゃの……その辺りはまた機会があれば語ろうかの。

もうすぐ新章です。

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