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我が儘に撲殺魔っ

「ねえ、パパ、お願い! 何とかしてよ!」

「……そうだな……」


 次の日の朝。町長様のところに用事がありましたので、町役場に赴きますと、外で何やら騒ぎが起きていました。


「パパの部下なんだから、簡単でしょ!?」

「うーむ……」


 あれは……噂に聞く、町長様の娘さん……。


「あの、何かありましたの?」


 近くで見物していた衛兵さんに話を聞いてみましょう。


「え……あ、聖女様……じゃなくてシスター」

「……一応訂正しておきますが」

「あーはいはい、聖女様では無いのですね」

「分かって頂ければ結構ですわ……で、何の騒ぎですの?」


 町役場入口で騒ぐ女性を見ながら、衛兵さんはため息を吐かれます。


「ああ、またロロ様が我が儘を言って聞かないのです」


「我が儘を?」


「はい。今の旦那とは別れるから、幼なじみと結婚させろって」


 それは……我が儘を通り越してますわね。


「町長様にそれを強請るより先に、相手の意志を確認するのが先ではありません?」


「私もそれは思いますが……町長の権限で何とかなる話ではありますから」


「はい?」


「実はその幼なじみ、警備隊の部隊長をしているのでずが……一応町長の権限の範囲内でして」


 つまり、権限を利用しろと迫っているんですの?


「それと、その部隊長には婚約者が居まして……その方が勤めている場所も、町長の権限でどうにでもなるところでして……」


「……つまりあの方は、父親の権力を当てにして、町役場に押し掛けて来ているんですの?」


「はい……大体は町長が折れるもんですから、ロロ様の我が儘も際限無くて……」


 それはそうなるでしょうね……ですが今回の件は、流石に……。


「わかった、わかった。一度話だけはしてみよう」


 …………はい?


「ま、まさか町長、今回のも……!?」


 わたくしも衛兵さんも、更に言えば見物されていた方々全員、あまりの事態に絶句しています。


「ありがとう、パパ!」

「但し、話をするだけだ。その後はジョウ君達が決める事だからね?」


 二人が決める事って……町長の発言がどれだけ重いのか、分かってらっしゃらないんですの!?


「では……君、警備隊と図書館に私の名前で出頭命令を出してくれ。今すぐに町長室に来るようにと」



「え? 町長が拙者を?」

「ええ。町役場の方がお迎えにいらしてますよ」


 突然の呼び出しに首を捻りながら、拙者は町役場へ出頭しました。


「フレデリカ?」

「え、ジョウさん?」


 すると廊下で、ジョウさんと偶然会いました。


「……まさか、君も呼び出された?」

「は、はい。まさかジョウさんも?」


 お互いに町長からの呼び出し。正直、嫌な予感しかしません。


「……まさか、ロロが……?」


 ジョウさんの呟きが気になりますが、ここで話を広げると更に時間がかかります。お互いにまだ仕事が残っていますから、手早く済ませてしまいましょう。


 コンコン


 お互いに無言のまま、町長室のドアをノックし。


「入りたまえ」


 町長の返事の後に、ドアを開けます。その先には。


「ジョウ、久し振り」


 先程のジョウさんの呟きが意味していた事を、実感させられる人物が立っていたのです。



「わ、別れろ、と?」


「そうだ。フレデリカ君には悪いが、婚約を解消して、うちのロロと結婚してくれないか」


 町長の隣で、ロロさんは意味ありげに拙者を見て笑っています。


「何を馬鹿な事を……お断りします」


 拒否してもらえる……とは分かっていても、実際に聞くまではドキドキしちゃいますね。


「……はあ、そう言うだろうとは思っていたのだが……フレデリカ君、君はどうだね?」

「勿論、お断り致します」


 即答した拙者を見て、ジョウさんが微笑まれます。拙者と同じ心境だったのでしょうか。


「……だそうだが、ロロ、どうしようか?」

「どうしようも何も、別れる気が無いのなら、二人とも仕事を失うだけだわ」


「「……は?」」


「あー、まあ、そういう事だ。婚約破棄して現在の地位を守るか、職を辞してでも結婚するか。好きな方を選びたまえ」


 な、何を言ってるの、町長は?


「……町長、己の権力を娘の我が儘の為に振るうつもりですか?」


「文句があるかね? 悔しければ私より上の権力を手に入れるのだな……で、どうするかね?」

「一応言っておくけど、仕事辞めてまで結婚しようとしても、婚姻届を受理するのは役場だからね?」


 ロロさん……いえ、ロロは勝ち誇った笑みを拙者に向けます。


「だったら貴方の権力の範囲外に出るまで。隣町にでも移住して、そこで籍を入れるだけだ」


 え、ジョウさん?


「今回の町長の職権乱用、流石に見過ごせない。警備隊としても諜報部隊としても、追及させて頂くが宜しいか?」


「好きにするが良い。どっちにしろ、君は私に刃向かった時点で職を失うのは決定事項だからな」

「せっかく手に入れた諜報部隊長の座を捨ててまで、結婚する価値がその女にあるのか、よーく考えなさい」


 そう言ってチラチラと拙者を見てくるのは……ジョウさんが折れるのを期待してるんじゃなくて、拙者が身を退く事を主眼に今回の呼び出しを?


「何度でも言います。お断り致します」


「ほう……君は自分の我が儘で、伴侶となる相手の仕事を奪うんだね?」


「でしたら何ら問題ありません。拙者達には町長以上の権限を持った方が二人、味方してくれますから」


「何、私以上に? はははは、それは大きく出たな」

「この町でパパに逆らえる奴がいると思ってるの?」


「あら、わたくしは町長様より下なのでしょうか? 一応、ロードでしてよ?」


 背後から聞こえた声は、間違い無く拙者達に味方してくれるであろう御方の一人でした。

ヨ……ではなくロロ、次回徹底的に撲殺されます。

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