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沐浴の撲殺魔っ

「はぁあぁあぁ……」


 一枚一枚、脱ぎ捨ててあるものを拾いながら、ルディの部屋へ向かいます。


「毎回言いますが、貴女は大司教だという自覚があるのですか?」


『あははは、ごめんごめーん……にゃは♪』


「だ、大司教猊下は、どちらに?」


「声が反響してますね…………あ、お風呂ですか?」


「正解ですわ。ルディは大の沐浴好きですからね」


 沐浴、と聞いて司書さんの目が点になります。


「あ、赤ちゃんの?」

「宗教的な意味合いですわよ!? あの図体で赤ちゃんみたいな入り方されたら、変態を通り越して撲殺ものですわ!」


 会話が聞こえているらしく、ケラケラ笑う声がします。


「それにしても、弱りましたね。ああなるとなかなか出てきませんわ」


 鼻歌混じりに水音が聞こえてきます。


「あの……お風呂、広いんですか?」


 司書さんの突然の質問に、わたくしは目を丸くします。


「そ、そうですわね、かなり広い方ですわね」


 元々宗教的な意味合いが主目的で造られた沐浴場ですから、普通のお風呂と比べればかなり広いです。


「でしたら、入浴しながらお話しませんか?」


「『………………え?』」


 わたくしだけではなく、ルディまで固まります。


『ちょ、ちょっと待って! リファっち、こっち来て!』


 焦ってわたくしを呼ぶルディ。それはまあ、焦るでしょうね。


「はいはい、少しお待ち下さいね」


 呼ばれて中に入ると、全裸のルディが見るからに焦っていました。


「どどどどうしよう!? アタシ、そんなつもりじゃ無かったのに!?」

「貴女が突然沐浴なさるからですわ! どうするんですの!?」

「だ、だって、アタシ汗臭かったし……」

「多少は我慢しなさいな! だからこういう展開に陥ってしまうのですよ!?」

「うう……どうしよお…………リファっち、助けてよ!」

「助けてって……どうやってですの?」

「沐浴中、ずっとリファっちだけ見てるから!」

「な……っ! わ、わたくしも沐浴しろと言いたいんですの!?」

「お願いだよぉ! この中で一緒に入った事があるの、リファっちだけだし!」

「願い下げですわ! 何故わたくしが貴女なんかと!」

「あ、貴女なんかは酷いよ、流石に」

「自分の性別をわきまえなさい!」

「ア、アタシは性別を超越した存在だからいいんだよ!」

「だからって……!」


『シスター? 入りますよぉ?』


 曇りガラスの向こう側には、肌色の人影が……!


「あ、お待ちになっ」

 ばしゃああん!

「ひぃあああああああ! つ、冷たいい!」

「はい、リファっち濡れちゃった! 早く脱いで脱いで!」


 ル、ルディィィ……!


「お、覚えてらっしゃい!」

「早く脱いで! で、常にアタシの前に居て!」


 ぬ、布が張り付いて、脱ぎにくい……!


『シスター? 大司教猊下?』

「おおおお待ち下さい! ルディ、見てるだけなら手伝いなさい!」

「はいはーい♪」


 ど、どうにか全てを脱ぎ、脱衣籠に入れて……。


「お、お待たせしました。どうぞ」

『はーい』

 ガラガラ……


 ガラス戸を引いて現れた司書さんは、やはり既に素っ裸でした。


「っ……!!」


 ルディは真っ赤になって、明後日の方向を向いてしまいます。


「へー、ここが沐浴場……」


「本来はサルバドル山頂へ向かう際の、お清めの場所ですわ。誰かさんが勝手に入浴目的に使っているだけで」

「……誰かさんって、アタシの事?」

「他に誰が居ますの?」


 ルディは「ふ、ふーんだ、どうせアタシの味方なんて……」と不貞腐れてしまいました。


「あの……それより……大司教猊下?」

「ん?」

「何故、シスターの後ろに隠れてるんですか?」

「ギクッ!」


 あら、鋭いですわね。


「気になってたんです。フリフリの衣装を好んでる割に、露出が少ないって」

「ギクギクッ!」


 あらあら、本当に鋭いですわね。


「それに……大司教猊下って、確か年配の方だったと記憶してるんですが!」

「ギクギクギクッ!」


 あらまあ、大した記憶力ですこと。ルディが本当の姿(・・・・)を晒したのは、たった一度ですのに。


「昔の新聞記事に大司教猊下の肖像画が掲載されていたはずです」


 そう言いながら、司書さんはわたくしに向かって歩を進めます。無論、目的はわたくしでは無く。


「ひ、ひええぇぇ……」


「で、その記事に掲載されていた、大司教猊下の本名は……」


 あららら、万事休すですわね。


「ルディでは無く、ルドルフ・フォン・ブルクハルトだった筈!」


「あ、あははは……」


「貴女、もしかして…………男の娘じゃないんですか!?」


 そう言って、わたくしの背後を覗き込み。


「あ……あ~あ、見られちゃった……」

「な……!?」


 そこに居たルディは……。


「な…………ナイスバディ?」


 その通りです。


「ルディは……いえ、ルーディア・フォン・ブルクハルトは…………ドワーフなのです」


 ドワーフと言えば、背が低くてがっしりしていて髭もじゃ……のイメージが強いでしょうが、それはあくまで男性です。女性のドワーフは背が低いと言う特徴は共通するものの、それ以外は人間の女性の特徴に近いのです。


「……聖心教の大司教って、女性で人間以外はなった事が無かったんだよ……」

「ですから、ルドルフ……という偽名を名乗り、あくまで人間の男性として振る舞っていたんですわ」


「そ、それじゃあ、さっき大司教猊下が衛兵に止められたのは……」

「まだ知らなかったから、って事だね。あれ、代々アタシの警護してくれてる衛兵の抜き打ち試験にもなってんの」


「抜き打ち?」


「見た事も無い女の子が勝手に聖悟教会に入ったりしたら、普通は止めるでしょ?」


「あ、はい」


「だから敢えて新入りにはアタシの事を教えず、どんな反応するかテストするんだよ♪」


 趣味の悪い抜き打ち試験ですこと。


「……ルディ、楽しんでますわね」

「にゃは♪ バレたか♪」



 やれやれ。どうやらバレずに済んだようじゃな。大司教も流石に肝が冷えたじゃろうて。



大司教、まだまだ謎がある?

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