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聖地内の撲殺魔っ

 シスターが珍しくお出掛けじゃ。とは言っても、隣町じゃがな。

 ただ、単なる隣町では無い。シスターが信仰する聖心教の聖地なのじゃからな。

 大司教も居る事じゃし、さぞかし騒がしいお出掛けじゃろうな……。



「見えてきたよ~、あれがサルバドルだ、にゃは♪」


 見えてきたも何も、わたくし毎日教会から見ておりますわよ。


「こ、ここがサルバドル……」

「二千年続く、聖心教の総本山ですか……」


 わたくし達が住む港町・セントリファリスから歩いて一時間もしない高台に、聖地サルバドルが広がっています。

 主が悟りを開かれた山・サルバドル山を中心に建設された教会群に、そこへ繋がる聖街道沿いに広がる門前町までがサルバドル市内となります。


「シスターはよく来られるのですか?」


 先頭のわたくしの隣を歩くのがフレデリカさん。その後ろにルディとリジーが並び、最後尾を隊長様が付いています。すっかり仲良くなったルディとのお喋りに夢中なリジーに代わり、隊長様が周りを警戒しているようです。


「あまり来ませんわね。すぐ近くですから、新鮮味はあまり感じませんし」


「あー……確かに。フジに近ければ頻繁に登る訳ではありませんしね」


「フジ?」


「拙者の故郷にある霊峰です。サルバドル山と同じように信仰対象でした」


「霊峰ですの……その山も何方か悟りを?」


「いえ、そういう訳では無いんですが……ただフジの名前の由来は『不死』からきている、と聞いた事がありますので、何かしら曰くがあるのかもしれませんね」


 フジですか……一度見てみたいですわね。


「あの教会! あの教会がアタシん家だよ!」


 ルディが指差したのは、山頂に続く道の途中に立つ教会です。一際荘厳な作りで、サルバドル市内でも最古ですわね。


「あ、あんな立派な教会が、アタシん家呼ばわり?」


「聖悟教会ですわ。主が悟りを開くまでの二百年間を過ごした岩小屋を囲むように建てられた教会でしてよ」


「へええ……初めて知りました」


「あら、フレデリカさんは聖心教徒ではありませんの?」


「あ、はい。拙者は宗教にはあまり関心が無くて」


 無神論者なのですわね。


「……シスターは……何も思われないのですか?」


「何がですの?」


「え、だって、拙者は聖心教を信じていないんですよ?」


「それが何か? 聖心教は信仰の強要を禁じてますわよ?」


「え?」


「基本的に信仰は個人の自由ですわ。主も多種多様な信仰を許容していらっしゃいますし」


「そ、そうなんですか……他の宗教だと、異教徒の弾圧とかもあるみたいですし」


 あー……。


「聖剣教徒かな?」


「あ、はい、そうです」


 聖剣教は聖心教と同じ流れを汲む宗教ですが、過去に色々ありまして……袂を分かったのです。


「まあ、色々あるからねー、色々……にゃは♪」


 そう言いながらルディは聖悟教会に入って……。


 ガギィ!

「わっ」

「こら、ここから先は立入禁止だ!」

「大司教猊下の住居に在らせられるぞ!」


 ルディ、衛兵に首根っこを掴まれました。あらあら、ご存知無い方々ですのね。


「衛兵さん、離してあげて下さい」


「何を…………あ、これは聖女様!」


 わたくしの顔は知ってますのね。


「その娘は大司教猊下縁の方です。通して下さいまし」


「え、ええ? こんなちんちくりんな娘が、大司教猊下の?」


 貴方……そんな事を言って、罰せられても知りませんわよ。


「おい、何かあったのか」

「あ、先輩」


 衛兵の上司らしい方がいらっしゃいました。これで話が通じますわね。


「いや、聖女様が、この娘を……」

「ん…………な、っ!!!? お、お前ら、その御方を誰だか分かってないのか!?」


 衛兵さん、キョトンとしていらっしゃいます。


「……知らんのか……まあいい、どうぞお通り下さい」

「え?」


 先輩衛兵さん、後輩さんの首根っこを掴み、引きずって行かれました。


「……行きましょうか」


 わたくしが先導して歩き始めます。それに倣ってルディ、リジーが付いてきて……。


 ダダダダダッ!


 その時、真っ青になった後輩衛兵さんが駆け戻っていらっしゃいました。


「ご、ご無礼の程、平に、平にご容赦ををを!」


 そして滑り込み気味に、ルディに頭を下げたのです。


「気にしない気にしない♪ 職務に忠実な証拠だよ、にゃは♪」

「は、ははーっ!」

「君、気に入ったよ。これからも警護を宜しくね♪」


「な…………あ、ありがたき幸せええっ!」


 泣き出した後輩衛兵さんの肩を叩く先輩衛兵さん。


「……ルディ、まだやってるんですの?」

「にゃは、いい試験だお、にゃはは♪」


「「し、試験……?」」


 そうですわね……そろそろ明かしても宜しいですわね。


「隊長様、フレデリカさん、そしてリジー。この御方は」

「あー、待ってよリファっち。お楽しみはアタシん家で……にゃは♪」


 ……まあ……ルディがそう言うのでしたら。


「では皆さん、聖悟教会内で、話の続きを」

「にゃはー♪」


「え、ちょっと待って下さい。聖悟教会と言えば、聖心教の中枢ではっ」

「中枢どころじゃなくて、中枢の中の中枢っ」

「平たく言えば世界遺産的な……と思われ」


 せ、世界遺産?


「ま、まあ、大司教猊下が良いと仰ってるのですから、わたくし達も行きましょう」


 そう言いながら教会の入口に入ると。


「にゃはー♪」


 ルディが身に付けていたものが、点々と放置されていました。はああ、相変わらずですわね……。

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