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下心と撲殺魔っ

「さてさて、それでは幸溢れんばかりのお二人を、聖地サルバドルへご案内~♪」

「「……え?」」


 わ、わたくしがなかなか言えずに悶々としていたのに、サラッと言ってくれますわね……!


「あれ? リファっちから聞いてないの?」


 隊長様とフレデリカさんは困惑した表情をしています。


「聖地巡礼の話はまだですわ。と言うより、話そうとした矢先にルディが現れたのではありませんか」


「にゃは、そうだったんだ~……それじゃ、アタシから説明しよっか」


「「は、はあ……」」


「お二人さんはね、ただいま史上最悪の運気の中に居るの」


「「し、史上最悪……」」


「一人でも最悪な運気なのに、二人揃って更に倍! 自分達だけじゃ無く、周りまで不幸の谷底に引きずり込んじゃそうなくらい!」


「「ふ、不幸の谷底……」」


「それってね、下手したら国レベルで引きずり込みそうなのよ~……傾国の美女ならぬ、傾国の運気! にゃは~♪」


「「傾国の運気……」」


「それを何とかできるとしたら……アタシのお家、つまり聖地サルバドルなのです!」


「「…………」」


 止めてあげなさい。流石の隊長様でも、主の元へ赴きかねませんわ。


「つまりです、聖地サルバドルでなら悪き流れから逃れられる可能性が高いのです」


「にゃは~、アタシが一生懸命守護してあげるっからさ♪」


「だ、大司教猊下が直々に私達を……」

「ね、願ってもない事です」


 ……確かに大司教猊下の直々の守護(おもてなし)は、聖心教徒なら誰もが羨む事ですが……。


「……わたくしも……同行しますわ」


「「……え?」」


「今回の『神託』はわたくしに降りてきました。つまり、わたくしにも関わりが有ります」


 それを聞いたルディは、重々しく頷き。


「そうだね。アタシ以外に『神託』が降りてくるなんて、数十年振りじゃないかな」



 ここで解説じゃ。

 シスターが見たと語っておった『神託』じゃが、普通は大司教に啓示されるのじゃ。逆に言えば、『神託』を見る事ができる者が、大司教に選出されるのじゃな。

 では、何故シスターが見る事ができたのかは……後に分かるのでな、今は秘密じゃ。



「……分かったよ。リファっちもおいで」

「ありがとうございます」

「リファっちが留守の間は……リブっち!」


 カチコチに固まって動かずにいたリブラが、ギギギ……と首を動かします。


「は、はい」


「リファっちが戻ってくるまで、リブっちが教会を管理してね、にゃは?」


「は、はひ、必ずや」


「うん、宜しい。それじゃ…………リジーちゃんだっけ?」


「うい?」


「貴女、アタシとリファっちの警護を頼まれて」


「…………何故に私?」


 リジーの疑問も分からなくはありませんわ。諜報部隊員が警護なんて、畑違いもいいところですもの。


「あまり大々的にアタシは動けないんだよ。だから、逆に諜報部隊の方が最適なんだー……にゃは♪」


「……諜報部隊が警護するなんて状況に、陥らせる事自体があり得ないと思われ……」


 あら、リジーがまともな突っ込みなんて、それはそれで珍事ですわ。


「……リジー諜報部隊員。君は、大司教である私の言葉が聞けないのかね?」


 重々しい声が、礼拝堂の中に響きます。リブラが「ひぃっ」と声を上げ、隊長様とフレデリカさんが身を堅くします。

 ですが、リジーは。


「大司教なら、大司教らしくすべき。周りの迷惑を考えられないなら、大司教を辞すべきと思われ」


 じ、辞すべき? そ、そこまで言いますの!?


「…………ふふふ…………ふふふふふふっ!」


 ルディは含み笑いをしてから、強烈な覇気を放ち。


「確かにその通りだな。大司教たる者、周りに気を配れないようでは主の教えを説く資格は無い。いや、大司教以前の問題だな」


 そう言ってから、今度はわたくしに視線を向けます。


「シスター・リファリス、この娘と親しいのだったな」

「御意でございます」

「シスターから見て、この娘の為人をどう思う?」


 わたくしは即答しました。


「信頼しうる人柄でございます」


「……そうか。リジー諜報部隊員」

「うい」

「貴女を聖女付の騎士に任命する。以後、心して職務に励むように」

「……うい?」


 た、隊長様、口をパクパクさせています?


「シスター・リファリス、貴女も心通わせた者なら文句有るまい?」


「……ございません」


「だから、聖地サルバドルに向かう聖女を警護する事、それに伴って私を警護する事は、何ら問題無い」


 ……確かにそうですわね。


「リジー、これによって貴女の疑念も解消されたであろう?」


「……そうなるの、かな?」


「そうしてくれ。そうでなければ、私は貴女と友誼を結べない」


 あら。


「友誼? 私と大司教が?」


 何で……と言いたげなのを察し、わたくしはリジーに歩み寄り。


「大司教猊下は、わたくし以上に呪具を所有なさってましてよ?」

「大司教猊下と友誼を結ばせて頂けるなんて、末代までの栄養でござりまする」


 栄誉ですわね、それは。


「……だったら、今日からリジっちだね!」

「うい、ルディっち!」


 ルディっちって。


「ルディっちかあ……いいね、いいね、リジっちならそう呼んでくれて構わないわよ!」

「うい!」


 あああ……大司教猊下、リジーの背後に呪具(したごころ)が漂っている事、ちゃんと察して下さいまし……。

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