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動く理由と撲殺魔っ

 むっ。ワシがちょっと目を離した間に、随分とお茶目なシスターが見られたのじゃな……何と勿体無い……!

 ワシはシスターウォッチャーを始めてから、稀にそのようなシスターを目にする事があった。その数は、本当に極僅かなのじゃ!

 そ、その僅かな機会を見逃してしまうとは……か、神も仏も在ったものでは無い……!



「それで、頼んでおいた件はどうでしたの?」


 血の海からようやく立ち上がったリジーが、フラフラしながらも説明してくれました。


「い、一応警備隊は誘拐の方向で動いてると思われ」


「自宅には何も?」


「荒らされた形跡有り有り。明らかに抵抗の様子も見受けられる」


「つまり、自ら行方不明になった可能性は……」


「無い。部屋の荒らされ方も不自然じゃないし、細工した形跡皆無。無理矢理連れ去られたと考える方が無難」


「そう……ですの」


 昔忍者だった事を加味した上で、あの能力を惜しんだ組織が連れ去ったかと思ったのですが……。


「もし忍者の犯行でしたら、もっと上手くカムフラージュしません?」


「確かにプロの犯行なら、あそこまで荒らさない。但し、意図的にああいう痕跡を残した可能性も否定できないと思われ」


 確かに、わたくし達を混乱させてくれていますわね。


「だけど誘拐ともなると、警備隊も黙ってはいない。そんなデメリットを許容してまで、あんなカムフラージュをする必要も無い」


 確かにそうですわね。誘拐と断定されれば、公然と警備隊が追跡してくるのですから。


「でしたら、リジーはどう考えますの?」


「私は司書さんの背景が今回の誘拐事件とは、あまり関係してないと思われ」


「つまり、ただ単に一般人が誘拐されたのと同じだ、と言いたいんですの?」


「うい。司書さんは人目に触れる機会が多いし、何より美人さん。良からぬ企みを抱くヤロー共が居ないとも限らない」


「そう言えば、最近誘拐事件が頻発してましたわね」


 頻発とは言いましたけど、実際に誘拐や突然の失踪というのは、少なくありません。但し、直近一ヶ月で見ればかなり多くなっています。


「……リファリスはどうするの?」


「はい?」


「もし普通の誘拐事件だとしたら、この町の警備隊は優秀だから、ほっといても解決する可能性大。わざわざリファリスや私が出張る必要は無い」


 確かにそうですわね。


「但し、もし忍者組織が関わっていれば、流石に警備隊の手には余る」


「……つまり?」


「司書さん、もう戻らない」


 それは、許せませんわ。


「その可能性が少しでもあるのでしたら、わたくしが動く理由となりましてよ?」


 それを聞いたリジーは、苦笑いしながらも頷いてくれました。


「分かった。上司の尻も叩いてみる」



「ま、まさか、あの司書さんが!?」


 理由も分からずに教会に呼び出された隊長さんは、リジーに告げられた事実に驚愕していました。


「な、何故報告しなかったのだ!?」

「今した」

「い、今では遅いぞ!」


 ここはフォローした方が良いですわね。


「隊長様、忍法の件については、判明したのは先日なのですわ」


「シスター?」


「わたくしも同席していた際、司書さんが実演して下さった事でようやく真実であると確認されたのです」

「正直、それまではそこまで大した忍法じゃないと思ってた。だから放置した」


 それを聞いた隊長様は、大きく頷かれました。


「確かに……実際に目にしないと信用できないね、そんな出鱈目な術」


 確かに出鱈目ですわね。嘘が本当になってしまう術なんて、使い方次第で恐ろしい武器になりますわ。


「分かりました。リジーだけではなくシスターまでそう言われるのでしたら、司書さんを早めに保護した方が良いですね。リジー、部隊員全員を動かすから、連絡を」

「うい!」


 そう返事するとリジーは窓から飛び出して行きました。


「あ、それからシスター」

「はい?」

「今回は我々にお任せ下さいね。くれぐれも、最前線に出よう等とは思わないで下さい」

「……わたくし、喜んで最前線に出ている訳ではありませんわよ?」

「そうですか? なら良いのですが……」


 疑いの眼差しを向けられます。


「わ、わたくし、何も疚しい事はありませんわよ?」


「いえ。シスターでしたら、嬉々として首を突っ込んできそうで…………撲殺目当てに」


 うっ。



 そこで何も言えなくなるという事は、シスターは撲殺する気満々じゃったのじゃな。



 隊長様も帰られて、わたくしは夕飯の準備の為に席を立ち。


「…………」


 最近四人分の準備をする事が多くなっていた事を思い出し、釜戸の前で止まります。


「……司書さん……」


 いつの間にか、あの方もわたくしの深い部分に入り込んでおられたのですね。今更ですが、その事に気付かされました。


「……リブラ」

「んー?」


 ソファで寝そべっているリブラを呼び、杖を握ります。


「わたくし、やはり動きますわ」

「ん、待ってました」


 するとリブラ、すっかり完全装備ではありませんか。


「私、リファリスがこのまま黙ってる筈が無いって思ってたから」


「リブラ……」


「リジーも情報流してくれるって言ってたよ」


 あらあら、リジーにまでバレバレだったのですね。


「そういう流れになっているのでしたら、その流れに乗るまで。しかも、わたくしが望む方向に流れているのですから」


 司書さんは必ずわたくしの手で助け出してみせますわ。


「そして、必ずや犯人には天誅天罰滅殺抹殺撲殺を……!」


「……どっちかと言うと、そっちの方が重要なんじゃない? リファリスにとっては」



 ワシもそんな気がするの。

高評価・ブクマを頂ければ、司書さんは無事に帰ってきます。

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