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スッキリした撲殺魔っ

 みゅんみゅんみゅんみゅん♪

 デンデンデンデン

 ガラガラガラガラ


「あ、ベアトリーチェだ!」

「聖女様がお帰りになったぞ!」

「聖女様だ、聖女様だー!」


 セントリファリスの入口に近付くにつれ、わたくし達を歓迎して下さる声が大きくなっていきます。


「リファりん、大人気やなあ」

「まあ、伊達に聖女様じゃないって事だろ」


 人気……なのでしょうか。ただ単に聖女の名が一人歩きしているだけなような気がするのですが。


「聖女様、お帰りなさいませ」


 門番さんがにこやかに出迎えてくれます。


「ご丁寧なお出迎え、ありがとうございます。何も変わりはありませんか?」

「特には」

「……教会の方は……何事も無く?」


 リブラだけでは不安ではあったので、警備隊の皆様にフォローをお願いしていたのです。


「これと言ってトラブルがあったとは聞いてませんね」


 ……ホッ。


「ただ……」

「っ!? な、何かあったんですの!?」

「いえ、ここ一週間程、見習いシスターの姿を見掛けないという報告が」


 リ、リブラの身に何かが!?


「門番さん、ちょっと失礼しますわよ!」

 バッ!

「え、せ、聖女様!?」


 門番さんごと飛び越え、一直線に教会へと走ります。


「聖女様、ちょっとお待ちを!」

「リファりん、落ち着いや!」


 門番さんやエリザの声が聞こえますが、知った事ではありません。


「リブラ、リブラ、リブラ……!」


 どうか無事で、無事でいて下さい……!


 ダダダダダ!

「あ、聖女様?」

「どうかされ……聖女様!?」


 顔見知りのご近所さんとすれ違いますが、会話している暇はありません!


「リブラ……リブラ……リブラァ!」


 教会の扉が見えてきましたが……普段から建て付けが悪く、開けにくい事は分かっていましたので。


「主よお許し下さい天誅蹴撃!」

 バガアアアン!


 緊急事態ですので蹴破ります。


「な、何!?」

「にゃは!?」


 中には礼拝堂を掃除しているルディとリブラが…………リブラ!?


「リブラ!」

「え、あ、お、お帰り、リファリ」

 ビリィィィ!

「え、リファリス!?」

「怪我はしてませんわね!?」


 リブラの修道服を剥ぎ取り(・・・・)、全身隈無くチェックしますが……何もありません。


「そうなると、体内ですの?」

「はい??」

「『癒せ』」

 パアアア……

「あ、あの?」

「『癒せ』」

 パアアア……

「リファリス? 別に痛いところは」

「『癒せ』」

 パアアア……


 特段以上は無いように思われます。でしたら。


「『元気百倍』!」

 パアアア……

「え……むほおおっ! ムッハアアアア!!」


 体力を回復する魔術をかけてみましたが……特に効果は無いでしょうか。


 ガシィ

「えっ」

「リファリス……戻ってすぐにこれって」

「えっえっ」

「そんなに我慢できなかったのおおおお!?」

 ビリィィィ!

「え、ちょっ!?」


「はいはーい、邪魔者は去るのみ~」


「ま、待って、ルディ、止めて助けて連れ出して」

「リファリスっ」

 キュッキュッ

「はあああああああああああん!」


 ……主を象った像に見守られながら……わたくしはリブラにパヤパヤされたのでした。

 しかも、真っ昼間から。



「天誅天罰天誅天罰天誅天罰天誅天罰」

 バガバガバガバガバガバガバガッ

「ごめんなさ、許して、死ぬ、死ぬって、ぎゃふがふぐふぅ」


「シスター、主の像に血飛沫が飛んでるぞ」


 ああああああ!!


「申し訳ございません申し訳ございませんリブラの穢らわしい血が御肌にああああああ」

「け、穢らわしいって酷くない?」


 あら。リブラったら、まだ生きてましたの。


「トドメを刺さなくてはいけませんわね。ええ、主を穢した罪は重くてよ」

「ま、待って、穢した経緯にはリファリスも関わって」

 ゴッ!

「何か仰って?」

「い、言え……ごふっ」

「シスター、いい加減にしないとマジで死ぬぜ」


 あら、別に構いませんわよ。生き返らせてあげますから。


「……つーかよ、いつまで素っ裸で殴り続けるんだ?」


 あら失礼。



 礼拝堂(主に主の像)を掃除してから、応接間に場を移します。


「リ、リファリス、ちゃんと治してぇ」

「はいはい、微妙に『癒せ』」

 パアアア……

 ミキメキビキッ

「ひぎゃあああああ! 痛い痛い痛いいい!」


 痛覚をそのままに、徐々に微妙に治していますから、それはそれは痛いでしょう。


「にゃは~、リファっち、五月蝿い」


 あら失礼。



 ボガッ!

「がふっ」

「はい、これで静かになりましたわ」

「……静かにはなったけど……鉄の匂いがプンプンするねぇ」


 ガラッ ガラッ ガラッ

「きちんと換気します」


 エリザ、グッジョブですわ。


「それでリファっち。どうだったの?」

「何が?」

「旧リフター領行ったんでしょ? その感想」


 ……あー……。


「感想と言われましても……わたくしにとって、あの場所は」

「元旦那さんのお墓でしょ?」


 そう……なのでしょうね。


「実は……あの館内での出来事は、何も思い出せないのです」

「はへ?」


 間抜けな顔をするルディに、エリザとモリーが苦笑して。


「実は、ウチもや」

「俺も覚えてねえんだ」


「えええ……じゃあ、今回も有耶無耶なままなの!?」


 そうなりますわね。


「だけどリファっち、髪の毛の色、変わったじゃん」


 確かに紅色が消え、純白の髪になってしまいました。


「それ、絶対に何かあったんだよね?」


 ええ……何かあったのでしょう。


「多分……未練が無くなったのですわ」

「未練?」

「ええ、未練」


 わたくし自身よく分からないのですが、何故か妙にスッキリしているのです。

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