表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/428

忍者さんと撲殺魔っ

「それ以降、この時間によくいらっしゃるようになったんですのよ」


 忍者である事は必死で否定されましたので、その場は流しておきました。


「へええ……」


 リブラは縮こまって座る司書さんに視線を向けます。


「何でこの時間帯なの?」

「あ、あの、閉館時間が……」

「ああ、そうか。七時閉館だっけね、図書館」


 ……何故かリブラの周囲に、妙な怨念を感じるのですが……。


「そうかそうか、図書館の閉館時間が七時だから、私とリファリスの時間に侵食してきたのね」

「し、侵食して申し訳ござらぬっ」


 侵食って……。


「そう言わないで。司書さんもなかなかに深い悩みをお持ちなのです」


「深い悩み、ねえ……その口調だから、どうせ忍者でしょ」

「うひゃうっ」


 司書さん自身は隠しているつもりなのでしょうが、バレバレなのは否定できませんわね。


「な、何故に拙者が忍者だと」

「「口調」」

「うひゃうっ」


 本気でバレてないと信じていらっしゃるのですね……。


「……く……バ、バレたからには致し方無い……」


 そう言って懐に手を入れ……ま、まさか武器を!?


「っ!」


 リブラも剣に手を掛けます。


「実力行使もやむを得ないでござる」


 懐から十時型の手投げナイフを取り出し、わたくしに向かって……。

 ツルッ

 投げ放ち……。

 クルクルクルッ

 ドスッ!

「うひゃうっ!? ふ、不意打ちとは卑怯なりぃぃ……」


 宙を舞った十時型手投げナイフは、そのまま司書さんの頭に突き立ったのでした。



「『癒しなさい』」

 パアア……


 稀に教会内に賊が侵入する事はありますが、その賊を治療する機会はなかなかございません。


「た、助かったでござりまする……」


 しかも自分が取り出した武器で、自分を傷付けた方は前代未聞ですわ。


「見てて分かったわ。貴女、落ち忍だな」

「うひゃっふうっ」


 図星だったようで、激しく動揺しています。



 ふう、久しぶりの説明コーナーじゃな。では落ち忍について説明しようぞ。

 忍者とはアサシンとレンジャーの中間のような職業での、厳しい修行を経て超難関の試験をパスせねばなれないのじゃ。

 例え忍者になれたとしても、年間を通しての成績が奮わぬ者は資格を剥奪されてしまう。そういう者を「落ち忍」と言うのじゃよ。

 ちなみに「抜け忍」は、成績に関係無く忍者を引退した者の呼称じゃな。

 何? 逃亡している忍者の呼称が抜け忍ではないか、じゃと? 逃げても登録が抹消されるだけじゃから、逃げる意味は無いじゃろが。

 何々? 生きるか死ぬかの必死の逃亡をするのが抜け忍じゃと? どこの世界か知らぬが、不憫な抜け忍じゃのう。



「そ、そうでござるよ! 拙者、落ち忍でござるよ!」


「落ち忍だとしても大したものですわよ」

「確かになー、あの難しい試験を突破しただけでも自慢できるね」


「い、いや…………試験には落ち申した」


 落ち忍って試験に落ちた方の落ち忍ですの!?


「いや、試験にパスしてないんじゃ、そもそも忍者じゃ無いんじゃ……」


「せ、拙者、特忍でござる」


「とくにん、ですの?」



 再び説明が必要なようじゃな。出番があって嬉しいのじゃ、ほっほ。

 特忍とはの、特殊認可忍者の略じゃ。本試験には合格できなくでも、一芸に秀でている者を忍者として採用する制度があっての、それが特忍なのじゃよ。



「特忍なの……確かにそれなら忍者にもなれるわね」


 そのような採用制度があったなんて、全く知りませんでしたわ。


「でも余程秀でた一芸が無いと、特忍としては採用されない筈よね」


「は、はい。拙者、この術だけは誰にも負けぬ自信があるでござる」


「へえ……どんな術なの?」


 そう聞かれた司書さんは、胸を張って答えました。


「忍法・口車の術でござる」


「「………………はい?」」



 く、口車の術……? き、聞いた事が無いのう。どのような術じゃ?



「口車の術とは、対象に偽情報を信じ込ませる術でござる」


 それは……。


「要は詐欺ですわね?」

「詐欺でしょ、それ」


「さ、詐欺と同じにしないで頂きたいっ」


 それにしても、特忍として認められる程の口車となりますと……。


「指名手配級の詐欺師じゃありませんの?」

「詐欺師ではござらんっ」


「口車だけの忍者なんて、どっちにしても高が知れてるわよね」

「リブラ、それは言い過ぎですわよ」


 流石にリブラを窘めますが、全く反省の色は見られません。


「……何だと?」


 あら? 背後で司書さんの周りに、怒りのオーラが?


「リブラとか言ったか……お主、拙者を軽く見過ぎでは無いか?」


「軽く見過ぎ? そんなつもりは」

「忍法・口車の術……拙者、剣の勝負でお主に引けを取るつもりは無いのだが?」

「は? いきなり何を言い出すかと思えば」


 リブラはデュラハーンですから、剣の扱いは超一流ですわよ。


「あんたみたいな弱ヒョロ、戦う前から勝敗決しちゃうわよ」

「ほう、拙者と剣を交える前から勝敗が決していると?」

「そうよ。だから無謀な考えは捨てて」

「そうだな。お主がボロ雑巾のように横たわる姿を、シスターには見せられまい」

「…………あ?」

「戦う前から勝敗が決している事、シスターの前で露見させてしまう訳にはいかぬな」

「へえ、私に勝てるっての? 面白いわ、やってやろうじゃないの」

「フッ、シスターには目隠しをすべきかな?」

「必要無いわよ……一瞬で終わらせてやるわ!」


 リブラが剣を抜き、司書さんも刀を抜きました。

 そして。


「よ、弱! 一分も経ってないよ!?」


 案の定、一瞬で司書さんはボロ雑巾になりました。


「せ、拙者の口車に乗ったでござるな?」

「え?」

「拙者が強いと勘違いして、本気で戦ったでござるな?」

「え?」

「これぞ忍法・口車の術。拙者の術にかかった、お主の負けだ」


「う……か、勝った筈なのに、負けたかのような複雑な気持ちだわ……」


 ……その忍法、何の役に立つんですの?

口車の術があったら、高評価・ブクマをお願いしまくれるのに……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=529740026&size=200 ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ