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聖女様になっちゃった撲殺魔っ

 それからしばらくの間、パルプンテシア様からの注文(ケチ)は続き。


『あー、これは駄目ね。こうして頂戴』

「ま、またですの!?」

『待って、それも問題あるわ。ああして頂戴』

「ま、待って下さいな! そんなの、どう匂わせろと!?」

『それは貴女の才気と努力によって♪』

「無茶言わないで下さいまし!!」


 突然の注文は日常茶飯事、下手したら半分以上書き直さなくてはならない事態もザラ。


『うんうん、かなり固まってきたわね』

「わたくしは最終稿のつもりなのですが!?」

『いーえ、まだまだ手直しが必要だわ』

「なっ……も、もうわたくし、付き合い切れませんわ!」

『え? だったら戻りたいの、メイド達からの集団暴行の場に』


 うぐっ。


「っ~……わ、分かりましたわ! 直します! 直しますわよ!」



 そんなやり取りを何億回、何万年と続けまして、ついに。



『う~ん……』


 ……あら? 今回は反応が違いますわね。


『う~ん……良いんだけどなぁ』

「はい」

『良いんだけどなぁ……あとはここだけなのよねぇ』

 パンパンッ


 原稿の束を叩き、ため息まじりに一言。


『何故に私の名前が一行も記されていないのかしら?』


 ああ、その事ですか。


「それは、神秘性を高める為ですわ」

『神秘性を高める?』

「はい。他の宗教に共通している事なのですが、唯一神の名は信者達が知らない例が多いのです」

(注! この世界ではたまたまそうなのです)


 パルプンテシア様は目を閉じ、小さく何か呟かれて……。


『……確かに、そうみたいね。だいたいは「神」とだけしか伝えられていない』


「はい。その方が唯一神としての神秘性が増し、更に信仰心を高めると思うのです」


『…………分かったわ。それは貴女の言う通りにします』


 ホッ。


「つまり、これで教典……福音書は完成という事でよろしいですわね?」


『そう……ね。そうなるわね』


 や、やった……。やりましたわ……。


「これで贖罪は終わり」

『あー、待って。まだ重要な課題が』

「まだありますの!?」


 もう解放して下さいな!


『次は教団の人事よ』

「人事って……今のままで良いのでは?」


 せっかく洗脳したのですから、そのままの方がやりやすいでしょう。


『チッチッチ。聖職者でありながら私腹を肥やすような連中、信用できないでしょ』


 そ、それは……まあ、確かに。


『それに私を崇め奉る教団が、汚職塗れになるのは御免被るわ』


 確かに、それはそうかもしれません。


「でしたら教皇を含め、全員入れ替えてしまえば」

『その人事に、貴女も関わってほしいのよ』


 はいい!?


「わ、わたくしに人事を差配しろと!?」

『そうですわ。こういうものは、事情に精通してる方が適任でしょ?』


 そ、そんな……ようやく解放されると思ってましたのに……!


『とは言っても、そこまで難しい事じゃないわ』


「……はい?」


『貴女自身が教会の幹部になればいいのよ』


 はああああああああああ!?


「待って下さいな! わたくしはリフター伯爵夫人なのですよ!? 領を預かってますのよ!?」

『殆ど人が居なくなっちゃったのに?』


 うぐっ。


『大丈夫よ。生き残った人達も殺された人達もひっくるめて、サルバドル近くに移住してもらうから』


 移住!!!?


『瞬間移動に瞬間洗脳に瞬間復活。うふふ、忙しい忙しい♪』


 瞬間でできるんですの!?


『ゴニョゴニョ……はい、できたわ』


 へ??


『街の名前は……まあ貴女自身に決めてもらいましょう』


 え、えええ??


『後は貴女の立場よね……別に初の女性教皇でもいいんだけど』


 わたくしが、教皇!?


『いや、ちょっと待てよ……やっぱり手駒(あなた)にはフリーな立場で居てほしいわよね……』


 ……パルプンテシア様、明らかにわたくしを使いまくるつもりですわね。


『よし、貴女のお爺様、教団で頑張ってもらおう』


 は?


『貴女のお爺様、一応大司教として聖心教に登録されてるでしょ?』


 それはまあ……ハイエルフ族長を受け継ぐ時に付いて来た、肩書きの一つですわね。


「先代族長が当時新興宗教だった聖心教の教皇とお知り合いだったそうで」

『それで名だけの大司教? 理解し難いけど、今回はそれが吉と出たわね』


 巻き込まれるお爺様は堪ったものじゃありませんわね。


『貴女のお爺様、相当遣り手っぽいし。やる気のベクトルを教団に向けてやれば、早い段階で最高権力者になるでしょ』


 それは否定しません。



 実際お爺様は、パルプンテシア様に何かされてから一年後、大司教のまま頂点に立ってしまうのですが……どんな荒技を使ったのかは割合します。



『さて、次は貴女よね』

「わたくしもですか…………はぁぁ、教典作らされた挙げ句、お爺様と同様ですか」

『あら、貴女は自由な立場に居てもらうって、さっき言ったばかりじゃない』


 わたくしが、自由な立場?


『だから……役職は無くても、権力はある。そんな地位で居てもらうわ』

「何ですか、その便利屋に最適な立場は」

『無論、そのつもりよ』


 本人の前で堂々と便利屋呼ばわりしないで下さいまし!


『そうねえ……普段は教会一つ預かってるくらいだけど、発言力は絶大…………うん、よし。貴女には「聖女」を名乗ってもらうわ』


 ………………………………はい?


「わたくしが、聖女?」

『そう』

「領民の大半を殴り倒したわたくしが、聖女?」

『そこは修正するから』

「修正しても、罪が消えるものではありませんわよ!?」

『勿の論。だから聖女になって奉仕に励んで、贖罪して下さいね♪』


 うぐっっ。



聖女様になっちゃった。

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