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教典作成撲殺魔っ

「わたくしにも手伝えとは、何をさせる気ですの!?」


『うーん、それは勿論…………何してもらおかな?』


 何も考えずに発言したんですの!?


「あ、貴女、そんな適当な考えで『洗脳』を使ったんですか!?」


『んー? まあいいじゃない、行き当たりばったり大切よ』


 そんないい加減な考えで洗脳されては堪ったものじゃありませんわ!


『まあまあ。だったらいい加減なものじゃなくなればいいんだよね?』


 はい?


『ちゃんと筋が通った、誰もが信仰しやすい宗教になればいいんだよね?』

「ま、まあ、そうですわね」


 思いっ切りはぐらかされた気が……。


『うん、じゃあ決まった。リファリス・リフター伯爵夫人、貴女には教本を作って頂きます』


 …………はい?


「きょ、教本とは?」

『聖心教の成り立ちから私の教えを事細かに、神話形式で書き上げて下さい』


 それ、教本ではなく教典ですわよね。


『内容は全てお任せするから、後は宜しく~』

「ま、待って下さい! 何故わたくしがそのような」

『え~? そんなの、自分の旦那と領民半分を撲殺した罪の報いに決まってるじゃない』


 ぐっ。


『ちゃんとした教典できたら、貴女の罪はチャラにしてあげるから』


 チャラにって……わたくしが言うのもアレですが、そんな簡単なものではありませんわよ。


『ま、今戻りたいならそれで構わないわよ。但し、信じてたメイド達に絶賛撲殺中だけど』


 断々固として、拒否致しますわ。


「はああ……分かりましたわ。やってみせますわ」

『よっしゃ! 一番面倒臭いのを押し付けられた!』


 神様なんですから、面倒臭いだなんて仰らないで下さい!



 それからわたくしは、ありとあらゆる宗教の教典を読み漁り、聖心教の教典を一から作っていきました。


「教徒内での身分の違いは、やはり考慮すべきではありませんわね。フラットに考えなければ」

「治安維持に関わる違法行為は、宗教上も禁忌としておきましょう。最悪は破門ですわね」

「祈りや善行を無理には強制せず、あくまで本人からの奉仕の心を大切に」

「唯一神としてパルプンテシア様に君臨して頂きますが、あまり地上への干渉はして頂かずに……」


 教典の名前を「福音書」とし、パルプンテシア様とわたくし達との繋がり方や、普段行うべき祈りや奉仕の作法まで、事細かに決めていきます。


『おー、随分できてきたじゃない』


 わたくしの隣に積み上げられた紙の束を見上げ、パルプンテシア様は感嘆の声を上げられました。


「ほぼほぼ出来上がってますわ。後はパルプンテシア様に目を通して頂くだけです」


 これだけの量です。さぞ大変な作業でしょう。


『分かったわ……「瞬間読破」』


 へ?


「……っ……っ……あら、凄いじゃない。ちゃんと教典っぽく仕上がってるわ」


 な、も、もう読んだんですの!?


『ただ……ちょっと手直しをお願いしたい箇所が幾つか』


 手直しを?


『まず一つ目。私の存在をもっと匂わせてほしいわね』


「それは……止めておいた方が宜しくてよ」


『何故?』


「神という立場で在られる以上、神秘性やカリスマ性は必須です。フレンドリーだとそれらが薄れます」


『……フレンドリーな神様も悪くないんじゃ?』


「人々が宗教に縋る理由は何だと思います?」


『え? んー…………一人じゃ寂しいから?』


「一番主な理由は、人間以上への存在に対する憧れですわ」

(注! リファリスの個人的な見解です)


『憧れ?』


「人は皆、必ず弱い面を持っているもの。故に人間以上の存在に願い、祈る事で心の均衡を保とうとするのです」


『ほわあ、凄い経験……虐殺やらかしてた領主様に、神とは何たるかを語られるなんて』


 それは置いておきなさいっ。


「ですから、フレンドリー過ぎますと頼られにくくなります。それは唯一神として、マイナスになると考えました」


『成る程ねー。それは理解したわ…………だけどさ、これは手直し必須』


 次は何ですの?


『二つ目。私に対する捧げ物が書かれてない』


 はい?


『一応私にも好みはあるからさ、その辺りは明記しておいてもらいたいわ』


「お供え物に関して、教典で言及しろと!?」


 一気に安っぽくなってしまいますわよ……。


『別に「お肉よりお魚が好き」とか「ニンニク大好き、わさびは苦手」とか載ってたって』

「駄目です! 先程も言ったでしょう、神秘性が大事なのだと!」


 但し、これに関してはパルプンテシア様も頑として譲らず、最終的には「匂わせ」程度に済ませる、という事で落ち着きました。


「匂わせるというのも、難しいんですのよ」

『贖罪贖罪。頑張って』


 気楽に言って下さいますわね。


『あ、まだ重要なのが』


 まだありますの!?


『死んだ人の中から、イケメンと美少女は私の元へ来れるように』

「それを教典に求めないで下さい!」

『いやさ、また匂わせ』

「匂わせでどうにかなるものではありませんわ!」

『えー、ケチー』


 ケチってません!


「教典に異性の好みが書いてある筈がないでしょう!」


 結局、これはパルプンテシア様自身が厳選する事になりました。



 余談ではありますが、稀に復活魔術が失敗しますが、それは。


『あ、駄目駄目! この人は私のハーレム構成員の一人なんだから!』


 パルプンテシア様に拒否られたのが主な原因だったりします。

 ですので、失敗した時は。


「……主に必要とされているのでしょう」


 と言っています。実際、そうですし。

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