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華麗なる撲殺魔っ 四

「貴女が伯爵に手を下したというのは、本当ですか?」

「……ええ」


 あくまで「仕方無かったんです……メイド達を守る為にわたくしは……っ……」という表情を浮かべてみせます。


「貴女はハイエルフの族長、ルドルフ殿の孫娘で間違いありませんか?」

「……はい」

「……でしたら……貴女に看板になって頂きますか……」


 看板に? チャンスですわ。このタイミングでしたら……あるいは。


「お待ち下さい。看板に、という事は、わたくしに夫殺害の罪を背負わせ、処罰するおつもりで?」

「流石は伯爵の妻、理解が早くて助かります。貴女には全ての罪を背負って頂き、我々が手を汚さずに済むようにさせてもらいます」


 ……わたくしの命は無い……という事ですのね。


「それより前に、お一つ宜しいかしら?」

「はい、何か?」

「わたくしに手を下すのは仕方無いにしても、メイド達には何の罪も無いのではなくて?」

「メイド……ですか」

「その条件をわたくしが受け入れる代わりに、この娘達の安全を保証して下さい」


「お、奥方様……」

「わ、私達の為に、自らを省みずに……」


「それは駄目だ。その娘さん達も、甘い汁を吸っていた……という事実があるのでね」


 っ!?


「我々は民衆の寄せ集めでね。多少士気にバラつきがあったのが気掛かりだったんだ」


「ま、まさか、メイド達を士気高揚の材料に!?」


「察しが良くて助かるよ」


 ……成る程。


「よーく分かりましたわ」

「何がだい?」

「それは勿論」


 ゴズッ!

「がはっ!?」


「……貴方達民主化連合とやらが、ゲスの集まりでしかない事が、ですわ」


 石を投げつけ、代表とか言うケダモノを罰します。


「痛ぅ……な、何をする!」

「何をするって、貴方達に天誅を下したんですのよ」

「天誅だと!? ふざけるな、それを下されるのはお前らハイエルフだろうが!」


 あらあら、結構出血してらっしゃるのに、お元気ですこと。


「でしたら、これで如何かしら?」

 ゴギィ!

「ぐはぅ!」

「やはりこれくらいの大きさで?」

 ガスン!

「ぎゃは!」

「いえ、小さいものでジワジワいくべきですか」

 ガッ! ガッ! ガッ! ガッ! ガッ!

「ぐぎゃ! げは! い、痛い! や、止めて! 痛いいだいいだいいいい!」


 うずくまって飛礫を防ぐつもりのようですが、それならそれで対処法はありますわ。今度は大きめの石を手に、直接殴ります。


「はい」

 ガヅン!

「ごふぅおえ!?」


 背中が丸空きですわよ。背骨という急所が、剥き出しですわよぉ?


 ガヅン! ズスン! ドムドムドムドム!

「ぎゃああああああ……!」


「うふふ、あははははは! 旦那様を撲殺するよりも、感触が溜まりませんわあ!」


 ガスガスガスガスガスガスガスガス!

「ぐ、ぐふぁ」


 あら。あらあらあらあらあらあ?


「もうお亡くなりになってしまったのですわね。うふ、うふふふ、うふふふふふふふふ!」


「……あ……ぅ……」

「な……何で……」


 わたくしの凶行を止めもせずに見ているだけだった民主化連合の皆さん。その身体には、無数の茨が巻き付いていました。


「最近完成した魔術なのですが、如何かしら? ハイエルフ独自の魔術に回復魔術をミックスした、わたくしオリジナルの封印魔術ですわ」


 名前を付けるならば……伯爵の戒『茨』で宜しいでしょうか。


「民主化連合の皆様、全員封印させて頂きましたが……気分は如何かしら?」


「う、ぐ」

「い、息が」

「ぐ、ぐるじい」


「あらら? 封印が強力すぎて、呼吸にまで影響が出てしまいましたかぁ?」


「くはー、くはー」

「ひゅーはー、ひゅーはー、た、助けて」


「あらあら? でもわたくし達を慰みものにしてから、殺すつもりだったのでしょう? そんな方々を、何故わたくしが助けなくてはならないのでしょうか?」


「そ、そんな……ぐげげげげげ!」

「こひゅー……こひゅー……」


 少おしだけ、封印の力を強めて。


「げ、ぐ、が……ぶはあ! はあ、はあ、はあ」

「はあぁぁ……ふひゅう」


 そして、再び締め上げ。


「げえええええっ」

「かは、かは、かは」

「ひゅぅぅぅ……くふっ」


 再び解除し……これをしばらく繰り返してやり。


「は、ふ、ひ、ふ」

「こひゅー…………ごぶっ」


 弱い方ばかりですわ。半数程が息絶えられました。


「さて、これだけの責め苦に耐えられたら方々には……しばらく自由に呼吸できる権利を差し上げますわ」


「ぶはぁ、はあ、はあ、はあ」

「はあああ、ふぅぅぅ……はあああ、ふぅぅぅ……」


 でぇすぅが♪ 許すつもりは毛頭ございませんわ。


「うふふふ、天誅♪」

 ぐしゃあ!

「へぶぅわ!?」


 大きめの石を脳天に叩きつけてやったら、半分くらいまで陥没しました。


 ぷしゅー……


「あは、あははは、あははははは! 噴水ですわ、真っ赤な噴水ですわあああ!」


 楽しい。楽しい楽しい楽しい!


「あははは、つーぎ」

 メギィ!

「くぎゃは!?」


 あらあ? 今度は上手く潰れず、首の骨が折れてしまったようです。


 ビクン、ビクン


「うふふ、これはこれで見ものですわね」


「や、止めて! 助けてえ!」

「あははは、女性だからって容赦はしませんよ……ほぉら!」

 グギャア!

「があああああ!?」


 横っ面を殴りつけてやったら、顔が半分ひしゃげましたわ。あはははははははははははは!


「ほらほぉら! 綺麗なお顔がグチャグチャになっていきますわよ!」

「ぐ、ぐぞおおお! 呪ってやる! お前らハイエルフ全員呪ってやるからなああああああ!」

「お生憎様、呪われたって浄化するだけですので。では、さようなら」

 グシャア!

「あっははははははははははは! うふふふふ、ひゃははははははははははははは!」



 今から思えば、これが紅月誕生の瞬間でしたわ。

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