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華麗なる撲殺魔っ 二

「まさかと思うけど、リファりん、サーシャ・マーシャを知ってるんか?」

「……太陽帝サーシャ・マーシャ……」

「は?」

「リズワーン帝国初代皇帝ですわ!」

「そ、そうなん?」


 ど、どうしてリジーやエリザの世界との共通点が、多々あるのでしょうか……?



『気にしなくても、本っ当に単なる偶然よ』

『パルプンテシア様! 口調口調!!』

『うっさいわね、別にいいじゃないのよ!』



「え? えええ!?」

「……リファりん?」


 い、今のは『神託』だったのでしょうか?


「あ、いえ、気になさらないで下さい。どうやら全くの偶然らしいのです」

「はえ?」


 な、何故にわざわざ神託なさったのでしょうか……?


「あ、それより続きですわね」



 ハイエルフはエルフからは敬われていましたが、人間からは特に上にも下にも見られず、お互いに不干渉のまま平和な時を過ごしていたのです。


「うんうん、一気にきな臭くなってきたな」

「そやな。平和な暮らしが続いてたんいう場合は、何か起きる前兆やで」

「きな臭い……ですか? 特に何もないのですが」

「「は?」」


 その当時のハイエルフの族長がルドルフであり、その孫娘が……わたくし、リファリスです。


「ん? ルドルフって聞いた事あるような……」

「聖心教大司教、ルドルフ・フォン・ブルクハルトと言えば分かりますか?」

「えっ」

「大司教さんがハイエルフだったん!?」


 そう言えばお爺様、普段は耳を隠してみえましたわね。


「リファりん、大司教さんのお孫さんやったんやなあ……」

「一応秘密にしています。孫娘が聖女だなんて、示しがつきませんもの」

「……でも聖女を選んだんは、大司教さんちゃうの?」

「その辺りが、これからの話の核心になってきますので」

「そうなん。やったら続き聞こか」



 ある日、たまたま森の中を散策していたわたくしは、ある男性と運命的な出逢いを果たします。


「ああ、それがリフター伯爵の関係者やったんやな?」

「伯爵本人ですわ……でもよく分かりましたね」

「まあ、ベタやし」


 ベタ。


「んで、二人は恋に落ちたけど、周りからは大反対された、とかいう事だろ?」

「? いえ、全く反対されませんでしたわ」

「「はい?」」


 わたくしとリフター伯爵は一目見た瞬間から惹かれ合い、激しい恋に落ち、一週間もしないうちに将来を誓い合い。


「一週間って早いな!?」

「いやあ、分かるで。運命的出逢いっちゅーんはそういうもんや。ウチもリファリス様と出逢った時は、周りにキラキラと光が見えたもんやで」


 ……わたくし、エリザと似たような錯覚を見た覚えがあります。そういうものなのですね。


「で、どんな男やったんや?」


 どんなって言われましても……。


「高圧的で、自尊心が高くて、金遣いが荒くて、粗野で、気に入らない事があればすぐに暴力を」

「待って待って待って! それ一番あかんヤツやろ!」


 ……言われてみれば……そうかもしれませんね。


「シスター、それを甘んじて受けていたのか?」

「いえ、相応にやり返してました」

「やり返してたんだ……」

「特にうっかり(・・・・)撲殺してしまった日は、どうしたらいいのか……という焦燥感以上に、天上の甘露を味わったかのような幸福感」

「あーはいはい、お似合いの夫婦やったんやな」

「つーかよ、その当時からシスターは復活魔術が使えたのか?」

「復活魔術はハイエルフの秘伝魔術です。わたくしが最も得意としていました」

「秘伝魔術が得意魔術って……」


 何か問題でも?



 飛び交う罵詈雑言、飛び散る血飛沫、毎夜聞こえる嬌声と断末魔。わたくし達の夫婦生活は、それはそれは仲睦まじいものでした。


「いや、なんか違う。仲睦まじいって、そういうのや無いで」

「毎夜断末魔って、主に旦那さんか?」

「いえ、主にでは無く、100%主人でしたわ」

「シスター強いな!」


 そんな刺激に満ち溢れた生活も、人間至上主義者の横行によって終わりを告げました。


「人間至上主義か……そんなん居るんやなあ」

「今は下火だがな。でも俺も極力妖精族だって事は明かさなかったぜ」

「ふぅん……ウチらの世界では…………まあ、居らん訳や無かったけど、台頭してきたっちゅー話は聞いた事ないなぁ」

「その時代が切っ掛けで、妖精族は山に引き籠もったって聞いてるぜ」


 それはわたくし達ハイエルフも同じでした。毎日のように館に押し掛ける人間達には、ホトホト手を焼かされたものです。

 そんな憂鬱な日々が続くある日、ついにあの事件が起きてしまうのです。


「わたくしがリフター伯爵夫人となる切っ掛けとなった事件。それが『リフター伯爵撲殺事件』です」


「……それって……」

「犯人、リファりんなんじゃ……」


「し、失礼な! わたくし、そのようなヘマは致しませ……ではなく、夫を撲殺してそのままにはしておきませんわ!」


「いやいや、ヘマ言うたやん」

「俺も聞いてたぞ」


「それは言葉のあやです! とにかく、わたくしは夫を自分で殺してしまいたい程度には愛していましたわ!」


「「愛情表現が斜め上すぎて、理解が追いつかない」」


 く……! や、やはり万人に認めてもらうのは、何人にも不可能なのですね……!


「と、とにかく! わたくしは犯人ではございません!」

「はいはい」

「じゃあ、続きをどーぞー」


 あ、貴女達は……!


「話を進める前に、撲殺的罰則が必要ですわね……!」

「「え」」

「モリーは経験ありましたかしら? エリザは当然ながら未経験ですわよね?」

「け、経験って何のや?」

「そ、そりゃあ、勿論……」


「撲殺に決まってますわ」


「え、マジ? マジなん?」

「シスターがそう言ってんだから、本気なんだろうさ!」


 モリーは既に逃げ始めています。エリザはまだ戸惑っているようですから……。


「先ずはエリザからですわ!」

「え、待って、待ちいや! ホンマに洒落にならへんて!」



「うっぎゃああああああああ!」


「……やべ……逃げよ」

 がしぃ

「ひぃ!?」

「逃がしませんわよ?」



「うっぎゃああああああああ!」

二日に一回の投稿、第一回目。

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