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またまた盗賊と撲殺魔っ

 パカラッパカラッ

 ヒヒィィン!


 ……またですか。


「シスター!」

「分かってますわ。やはり盗賊ですの?」

「まあ、ほぼ確定だな。どうする、さっきみたいに?」

「ええ、今回も一人囮ですわね」


 ザザッ


 エリザ、モリーが武器を持って対峙します。


「さっきはウチやったさかいな、今度はモリりんやってえな」

「さっきのは公平にジャンケンで決めたよな? だったら今回もジャンケンだ」

「く……や、やけど、ずっとウチばっかやないか!」

「……そこまでジャンケンが弱いと、もはやわざとやってるんじゃねってくらいだよな」

「し、仕方無いやろ!」


 ほぼ確実にグー、チョキ、パーの順番でしか出しませんから、勝てる筈がありませんわね。

 エリザの気持ちも分からなくはありませんし、何より揉めている時間はありません。


「仕方ありませんわね。今回はわたくしが囮になりましょう」



 治安が比較的良いセントリファリス一帯に比べますと、この辺りはいささか物騒ではあります。無論、以前にわたくし達が滅ぼした〝残虐砦の十三人〟とは比べるべくもありませんが。


「ですが質より量なのですわ、この辺りは」


 西側で最大の貿易都市が近く、隊商(キャラバン)がよく行き来するこの辺りは、盗賊にとっても絶好の狩場なのです。


「その割には大した連中は居らへんな」


「国も黙って見ている訳ではありませんわ。年に数回程度は大規模は掃討作戦を行い、かなりの成果をあげてますもの」

「年に数回も? やったら何で盗賊多いんや?」

「簡単に言ってしまえば、近隣の情勢があまり良くないからですわね」


 先程も言いましたが、この周辺はあまり治安が良くありません。交易を独占している商人の皆様に富が集中してしまい、そのおこぼれに肖れる方々が限られているのです。

 つまり、貧困層が拡大する一方、そこから盗賊に身を落とす者も増える一方……と言う訳です。


「欲深い業突く張りばかりだからな、盗賊の恰好の標的だろうぜ」

「やっかみの対象やから、自然と盗賊行為も黙認されるっつー訳やな」


 地元民の中にも協力者は多いのでしょう。おそらく、貧しい方に施しを行い、味方につけているのでしょう。


「だからと言って、盗賊を容認するつもりは一切ありませんわ。確実に、徹底的に潰して差し上げます」



 パカラッパカラッ


「……居たぞ、獲物だ!」

「どうやら、どこぞのご令嬢みたいだ。今は川沿いで休憩中みたいだな」

「ご令嬢か。どうせ商人の娘か何かだろ……よし、身包み剥いでやれ!」

ご令嬢(中身)はどうするんだ?」

「そりゃ勿論、楽しませてもらおうぜ」

「ヒャッハー!」


 どうして盗賊の方々は、あのような奇声を上げたがるのでしょうか?


「標的は三人! メイドと御者とご令嬢!」

「三人だあ? 妙に少ないな」

「別にいいじゃねえか! ヒャッハー、メイドも頂きだぜ!」

「お、おい、待て、様子がおかしくないか」


「きゃあああああ、盗賊ですわ! 命、命だけはああ!」


「やっぱり完全なカモじゃねえか!」

「金目のものは全て奪え! 野郎はぶっ殺しても構わねえが、女は生かしたままだ!」

「ヒャッハー! 夜が待ち切れないぜええ!」


「きゃあああああ…………もう良いですわよね。充分引き付けましたわね」

「よっし、やったるで!」

「ここまで固まれば、後は一網打尽だあ!」



 ドガアアアアアン!

「「「うぎゃあああああっ!!」」」



「「「い、命だけは……」」」


「大丈夫ですわ。貴方達を警備隊に引き渡すつもりはありません」


「つ、つまり殺すつもりか!?」

「うわあああ、かあちゃーん!」


「殺しませんわよ……いえ、一度か二度は殺しますね」


「「「……一度か……二度?」」」


「うふふ、そんなに怖がらなくて大丈夫ですわ。痛いのは少しの間、ある程度を過ぎれば何も感じなくなります」


「こ、このシスター、何か怖いぞ!?」

「うわあああ、かあちゃーん!」


「あー……シスター、またアレをやるのか」

「アレって何や?」

「えーっと……百聞は一見に如かずってな」

「はあ?」



「うふふ、先ずは誰から殺りましょうか」


「お、脅しだ! 屈するんじゃねえぞ!」

「かあちゃーん!」

「ママー!」

「言った側から屈するなああ!」


「決めました。お説教をしている貴方からにしましょう」


 聖女の杖を取り出すと同時に、背後に太陽が回って、わたくしの顔を影で塗り潰していきます。


「うふふ、あはははは! 撲殺、撲殺ですわ! あっははははははははははは!」


「か、顔に紅い月が三つ……ま、まさか、お前は〝紅月〟か!?」


「巷ではそう呼ばれてますわね」


「う、うわあああああああああ!?」



 ボギャ! グシャ! バシャアン!


「リファりん何してんのや!?」

「落ち着け、エリザ」

「モリりんは何で放っておくんや! あんなん、一方的な殺人やで!」

「だから落ち着け。よく見てろ」

「こんなん落ち着いて見てられんわ!」


「『魂よ、戻れ』」

 パアアア……

「……う……うぐげふ!?」


「え、い、生き返った?」

「シスターはああやって、盗賊を懲らしめるんだよ」

「懲らしめる!? いやいや、死ぬのってめっちゃキツいやろ!」

「だからお仕置きなんだよ。二三回繰り返せば、大体は矯正されるみたいだし」

「きょ、矯正て……」


「さあ、次は誰が真っ赤な花火を咲かせますの? あははははははははははは!」


「……やってる本人が一番楽しそうな気が……」

リファりん、間違い無く楽しんでる。

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