決意新たな首だけ聖騎士っ
「リファリス、リファリスゥゥ」
「ちょ、何なんですの、リブラ!?」
大司教猊下との会談から教会に戻ると、リブラが突然絡み付いてきました。
「私、大司教猊下に認めてもらえたわ!」
「そ、そうですわね」
「つまり、アンデッド狩りに怯えなくていいのよね!」
「そう……なりますわね、多分」
「つまり、堂々と表を歩いていいのよね!」
「それは当然ですわ」
「やったああああ! 首を外して堂々と歩けるなんて!」
「「いや、それは不味い」」
わたくしが止める前に、エリザとモリーが一言……あら?
「モリーはともかく、エリザも知ってましたの?」
「え、何や?」
「リブラがデュラハーンだという事です」
「ああ、ウチの知り合いに居てんねん、デュラハーン。そいつと色々と似てるんや」
ええっ!?
「デュラハーンのお知り合いが!?」
「あ、元の世界でやで、元の世界」
あ、ああ、成る程。
「何や、デュラハーンってそんな珍しいかいな?」
「あ、いえ、そうでは無く……」
「聖心教ではね、アンデッドは存在してはならないものなのよ」
「へ?」
エリザがポカンとした顔をしています。
「アンデッド全部なん?」
「そうですわ」
「うっわー……ならライラなんて存在できへんやん」
ライラ?
「あ、ウチの秘書してたメイドや。ゾンビなんや」
ゾンビが秘書ですの!?
「大丈夫や、腐っとらへんし」
「「いや、そういう問題では」」
……あ、話が逸れましたわね。
「それでリブラ、何故引っ付いてくるんですの?」
「あ、そうよそうよ、すっかりアンデッド談義になってたわ」
「あ、そうやったわ。今更やけどお帰りなさいませ、聖女様」
エリザも本当に今更ですわね。
「で、リブラ」
「あ、そうだったそうだった。また逸れるとこだったわ」
ズルズルズルズル
「な、何故引き摺るんですの?」
「何でって、聖騎士になれたんだから、ヤる事は一つじゃん」
ヤる事って。
「エリザ、部屋の準備は」
「御命令通り、整えてございます」
整えるって何をですの!?
「ちゃんとリクエスト通りに……」
「無論、硬めのマットレスに交換済みです」
何故に硬めのマットレス!?
「ではリブラ様、ごゆっくりぃ……んふふふふ」
「覗いちゃ駄目よ、んふふふふ」
「勿論ですわ、んふふふふ」
一体何なんですの、その含み笑いは!?
ズルズルズルズル
「はい、着きました~」
い、いつの間に!?
「ではお二人さん、ごゆっくりぃ~」
ギィィ バタン!
「ちょ、ま、待って下さ」
スルリッ
きゃあ!? な、何故こんな簡単に法衣が?
「ウフフフ」
スルリッ
リブラの修道服まで!?
「リ・ファ・リ・ス~」
ジリジリ
「な、何故ににじり寄って来ますの!?」
「それは勿論…………訓練に決まってるじゃない」
く、訓練?
「聖騎士である以上、剣はともかく敵との取っ組み合いも想定しなくちゃなんないのよ」
そ、そうでしょうか?
「で、私の周りには格闘術の心得がある人が居ないの」
「で、でしたらエリザに」
「リファリス、そのエリザ本人からの推薦で、貴女を先生にする事にしたの」
エリザの推薦?
「ウチなんかよりリファりんの方がよっぽど強いで~……ってね」
エリザの方が強いに決まってるでしょう!
「そう言う訳だから。先生、よろしくお願いします」
「待って下さい、わたくしの話を」
「先ずはタックル!」
ズドムッ!
「ぐふぅ!?」
い、いいのが入りましたわ……!
「ぐふぅって、大丈夫?」
「ケホケホ、ナ、ナイスタックル…………じゃありませんわ!」
腰に回されていた手を掴み、更に小指を掴んで捻ります。
「あいでででででで!」
「これが格闘術の訓練ならば、容赦しませんわよ!」
「いだいいだいいだい…………くぅぅ!」
きゅっ
「はああああああああん!」
不意打ちを食らい、思わずはしたない声を上げでしまいます。
スルッ
「よし、逃れた!」
「リ、リブラ、今のは反則ですわよ!」
「暴漢相手に反則もクソも無いわよ! はあああ!」
両手で胸を隠していた為、思いっきり隙だらけになり。
ボフンッ
「きゃっ」
再び押さえ込まれ。
「ふーっ」
「ひゃはああああああああん!」
「ペロリ」
「はあん! はああああああああん!」
ぼ、暴漢が耳を吹いたり舐めたりしますの!?
「さあ、今から寝技の訓練よ!」
ぼ、暴漢は寝技なんかしてきませんわよ!
キュッキュッ
「はああああああああん!!」
だ、だからそこは……! 力が抜けて……。
……チュンチュン……
「ふう、朝まで充実した訓練だったわ」
ど、どこが訓練なんですの……!
「リファリス、起きなきゃ。元リフター伯爵領に向かうんでしょ?」
「そうなのですが……あ、足が……」
「へ?」
「こ、腰が……」
力が入りません……!
「……ああ、そうね。弓なりになったり、自分で腰を動かあばぎゃぶべ!」
カチャッ
い、いたたた……。
「おはよう、リファりん♪」
エリザ……!
「貴女もグルだったのですね……!」
「ウチはメイドとして、リブラんに従っただけや♪」
面白がってるだけでしょう!
「で、リブラんはどないしたん?」
ああ、リブラですか。
「格闘訓練の後、油断して血の海に沈んでますわ」
「ち、血の海!?」
「エリザ、後片付けをお願いします」
急いで部屋に駆け込むエリザ。
「リ、リブラん!? 生きとるんか!? しっかりせいや、リブラん!」
自らに回復魔術をかけてから、旅立ちの準備を始めました。
リブラKO。




