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締め出される撲殺魔っ

 ガギィン!

「聖女様はご遠慮願います」


 ついに始まった千年祭ですが、会場に入ろうとしたわたくしに差し出されたのは、交差した二本のパルチザンでした。


「……どういう意味ですの?」

「大司教猊下からの御命令です。聖女様は会場に入る事無く、己が役割を全うせよ、と」


 なっ!?


「お待ち下さい、それはあんまりではありませんか!」

「わ、私にそれを言われましても」

「今日までの準備にわたくしがどれだけ貢献してきたか、皆様もお分かりでしょう!?」


 本来はこのような物言いは好きではありませんが、今回は致し方ありません。


「そ、それは我々も理解していますが」

「でしょう!? でしたら」

「しかし大司教猊下の御命令ですので」

「だから何だと言うのですか!?」

「ですから、大司教猊下の御命令」

「っ……もういいですわ」


 強行突破するまでです!


「だ、大司教猊下からの御命令を無視されては、罰の対象となりますぞ!」


 罰……それが何だとっ。


 ガシ

「リファリス、駄目」


 リ、リブラ……?


「ここは我慢よ、リファリス」


 っ……く……。


「………………分かりましたわ。お騒がせして申し訳ありませんでしたっ」


 肩に置かれたリブラの手を振り払い、会場を後にしました。



 ムカつくムカつくムカつくムカつくクソジジィクソジジィムカつくムカつくムカつくクソジジィクソジジィクソジジィィィ!


「……リファリス」

「何よっ!」

「素が出てる」


 あっ。


「す、すみません……」

「別にいいけどさ、そこまで荒れるような事なの?」


 ……はい?


「何が、そこまで荒れるような事、ですの?」

「言葉通りだけど?」

「あ、荒れて当たり前ですわ! 千年、千年に一度行われるかどうかという貴重な場に、中に入れないのですよ!?」

「…………」

「聖女という称号は、名ばかりなんですの!?」

「……リファリスはさ、千年祭に何故出たいの?」

「何故って、当たり前ではありませんか!」

「何が当たり前?」

「ですから、聖心教を信仰する者にとっては、最高の誉れ」

「誉れの為?」


 ……え?


「リファリスは誉れの為に、千年祭に出たいの?」

「え……」

「それとも聖女だから出たいの?」

「そ、それは……」

「それって、普段からリファリス自身が私達に戒めてる、俗世の権益への執着じゃないの?」


 っ!!!!


「師匠であるリファリスが、戒めてる筈のものに執着するんなら、弟子である私達はどうすればいいの?」


「な……わ……わた……くし……は……」


「私達も、己の欲に負けていいの?」


 そ、そんな、わたくしは……。


「欲に負けて、主の教えを捨てて、自堕落な人生を歩めばいいの?」

「…………それは……いけませんわ」

「でしょ? だったら、師匠であるリファリスが模範を示してくれないと」


 …………。


「リファリス……千年祭と私達、どっちが大事なの?」


 そんなの……そんなの決まってますわ!


「……ふふ……うふふふふ、あはははははははは!」

「…………」

「ふふふふ……まさかリブラに諭されるだなんて、わたくしもまだまだ修行が足りませんわね」

「……リファリス」


 半泣きなのを自覚しながらも、リブラの両手を握り締めます。


「ありがとうございました。わたくしはもう少しで、聖女に相応しくない愚者に堕ちるところでしたわ」

「…………リファリス、愚者でいいじゃない」


 はい?


「昔は嫌がってたじゃない、聖女って呼ばれるの」

「……正直……今でも好きではありませんわ」

「そうなの?」

「ですがわたくしには、貴女という弟子ができました。その時から、師匠に相応しい存在であろうと思い、聖女と呼ばれる事を受け入れました」

「……そうだったんだ……」


 無理しているつもりはありませんが、今でも「聖女」と呼ばれると、何か引っかかるものを感じています。


「……だったらさ、リファリス。もう師匠も弟子も止めようよ」


 はい?


「私達の為に己を殺して聖女であり続けようって言うなら、そんな一方的な無理強いはしたくない」

「え?」

「弟子を辞めても構わないから、リファリスはリファリスとして私達に接してほしい」


 …………!


「無理しないで。全てを背負い込まないで。私達は師弟じゃない、友達なんだから」


 友……達……!


「ひ、卑怯ですわ。このような状況で、そんな告白は」


「卑怯じゃない。これは私の心からの言葉だから」


 ……ふふ。


「分かりましたわ。もう無理して貴女達の前で、聖女で居続ける事は止めます」

「うん」

「ですが、貴女達の師匠を止めるつもりはありませんよ」

「別にいいよ。だけど私も、リファリスの友達を止めるつもりは無いよ」

「それは当たり前ですわ。わたくしをここまで口説いたのですから、責任は一生をかけて取って頂きますから」

「うん、責任取る」

 ガシィ


 はい?


「ちょうど向こうが物陰だから、見られずに済むわね」


 は、はい?


「ちゃんと責任取るから」

「え、責任って」

「私がリファリスに対して取れる責任は、やっぱコレだから」

「コ、コレって何ですの!?」

「コレって、コレよ」

 きゅっ

「はあああああああああああん! な、何を」

「リファリスー、愛してるよー」


 ちょ、ちょっと待って下さいいい!



 ……千年祭の1/4程度を、あられもない声を上げさせられる羽目になりました……。


「リ、リブラ、あの言葉は全てこれの為の布石でしたのね!?」

「てへっ」


 てへっじゃありません! あ、足腰が震えて……立てない……!

リブラ、欲まみれ。

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