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慰労する撲殺魔っ

「もう少し右、右、右」

「「「くっくっくっ」」」

「あー、行き過ぎ行き過ぎ」

「「「くぅぅぅ」」」

「左、左、左、もうちょい、もうちょい」

「「「うがああああっ」」」

「ああ、右右、また行き過ぎ左左左」

「「「だあああああああっ」」」

「右、左、右、左、右左左左右、右左右右左」

「「「あぅあああああっあああっ」」」


「…………ルディ、何をなさってるんですの?」


 弟子達がいつまで経っても帰って来ないと思ったら、何かの台座を押したり引いたりして汗だくに……一体何をしてるんですの?


「あ、リファっち。弟子達借りてるよ、にゃは~♪」

「物ではありませんのよ、借りた貸しただなんて」


「「「はぁぁ……」」」

 バタバタッ


 わたくしとのやり取りの間にルディの手が止まり、弟子達は汗だくの身体を冷たい床に横たえました。


「修行にも身を入れてもらわねば困りますから、いい加減に解放して下さいまし」

「むぅ……修行を理由にされては仕方無いにゃ」


 にゃって。


「分かった……リブラ、リジー、モリー。多大なる奉仕、感謝致します」


「「「え、つまり……」」」

「交代で」

「「「やたああああああああああ!!」」」


 全くもう、手間がかかる弟子達だこと……ふふ。



「三人共、お疲れ様でした」

「「「ふひゃあはぁぁ……」」」


 殿方には見せられない体たらくですが、あれだけの苦行を乗り切ったのですから、多少は仕方ありませんわね。


「モリー」

「んん?」

「下町に、行ってみたいと言ってましたわね?」

「!」


 わたくしの弟子……つまり見習いシスターとなってからは、あまり治安の宜しくない場所には出入りさせていませんでした。


「い、行っていいのか!!」

「不純異性交遊さえしなければ」

「んな気色悪い事できるか!」


 外見は特上の美少女であっても、中身は壮年の男性ですしね。


「……分かりました。犯罪行為以外でしたら、ご自由に」

「ヒャッハーー!」

 バヒュンッ


 世紀末な叫び声をあげながら、モリーは部屋から飛び出していきました。あら、まだあんな元気があったのですね。


「次に……リジー」

「ふにゃ?」

「教会地下のアレ、少し見てみたかったのでしたわね?」

 ガタッ


 立ち上がってブルブル震えています。


「ア、アレって、まさか」

「はい、〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトの一つが、地下入口の部屋に収蔵されています」

「な、な、な……」

「触る事は許しません。持ち去るなんて以ての外です」

「み、見るだけで、同じ空間に居られるだけで幸せっ」

「それでしたら、許しましょう」

「うほほーい!」

 ドヒュンッ


 リジーは窓から飛び出して……ここ、三階ですわよ?


「……さて、リブラは」

「ワクワク、ワクワク」

「何を期待しているのかは分かりませんが、そこまで大した事はできませんわよ」

「ワクワク、ワクワク」


 そうですわね……。


「……帰省を許しましょう」

「ズウゥーーン……」


 ズウゥーーンって。


「久し振りに妹様と過ごして」

「ズウゥーーン……」

「あの、リブラ?」

「ズウゥーーン……」

「……実家に行きたくないんですの?」

「うんうんうんうん!」


 何なんですの、この意味不明なテンションは。


「つまり、どうしたいんですの?」

「えー、モリーとリジーへの待遇から察するに、疲れ切った私達の希望を叶えてやろう、という意図が鑑みえます」


 鑑みえ……?


「え、ええ、間違ってませんわ」


「つまり、それは私にも適用される……と見受けられます」


「そう……ですわね」


「つまり、私の希望を叶えて頂けるのですね?」


「え、ええ、まあ」


「そうですか…………ふふ、うふふふ、うふふふふふふ」


 い、嫌な予感しかしませんわ。


「私がしたい事……リファリスには分かってるよね?」

「さ、さあ、何でしょうか。分かりかねますわ」

「分からない? 本っ当に分からない?」


 にじり寄ってくるリブラ。退くわたくし。


 ドンッ


 壁に背中を着いてしまい。


 ドンッ


 リブラの右手がわたくしの顔を横切って、壁に手を着き。


「リファリス」

「は、はい!」

「頂きます」


 い、いやあああああああああ!!



「……あ、モリー」

「リジーの姉御か。当分の間、中には入れねえぞ」


 宿舎からは地響きに似た振動と、シスターの悲鳴……嬌声かな……が聞こえてくる。


「うっわ、リファリス大丈夫かな」

「リブラの姉御も、飽きれば出てくるだろ」


 仕方ねえか。一段落するまで、また下町で遊ぶか。


「……もう一回教会行ってくる」


 リジーの姉御も一旦引き上げか……ま、それが賢明だな。



「おはよ、モリー」

「リジーの姉御か……まだみたいだぞ」


 昨日と変わらぬ地響きと、シスターの……アレな声。


「あー……一晩中【ぴー】してたのか」

「モリー、ストレートすぎ」


 これは失敬。


「でも、これは……長くなるかも」

「そう思われ。明日も一日様子見るべき」


 同意見だ。


「仕方ない、しばらくセントリファリスに戻るか」

「うむうむ、再び呪具を堪能する」


 本当に好きだな、姉御……。



「お、済んだみたいだな」


 次の日の朝、宿舎は静けさを取り戻していた。


「モ、モリー、あれ」


 姉御が指差した先には…………うわっ。


「張り付けにされてる血達磨、どう見てもリブラと思われ」

「ま、間違い無い」


 中に入り、シスターの部屋の前へ行くと。


『リ、リブラ、一日半もわたくしを……い、いたた、腰が……』


 シスターの不機嫌そうな声を聞いて、俺達はもう一泊外泊を決めた。

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