効果ありあり撲殺魔っ
わたくしの作戦は、地道な努力によって少しずつ効果を上げていきました。
「悔い改めますか?」
「改めるっつってんだろ!」
「あらあああ、口の利き方がなってませんわねえええ?」
ブゥン! ボギャア!
「ぐあああああ! か、肩があああ!」
「あらあら、肩が砕けたくらいで泣かないで下さい。男の子でしょう…………あは、あははは、あっはははははははは!」
「て、てめえも砕かれてみろよ! 痛いに決まってんだろが!」
「分かりました」
「えっ」
メキメキ……バギャア!
「じ、自分で自分の肩を………」
「別にどうって事ありませんわよ? 『癒せ』」
パアアア……
わたくし自身が砕いた肩が、逆再生するように元に戻っていきます。
「こ、こいつ、化け物だ……」
「あらあ、シスターに向かって化け物だなんて、失礼千万ですわねえ」
ブゥン!
「ですから」
ゴシャア!
「ぎゃああああ!」
ブゥン!
「貴方の頭」
グシャア!
「ぐぴぃ!?」
ブゥン!
「粉々に」
バシャアアン!
……ドサァ
「して差し上げ……あら、もうお亡くなりになってしまいましたの? 興醒めですわぁ……あは、あははは、あははははははははは!」
わたくしの布教作戦は簡単です。最も宗教とは縁遠い方々に、主の教えを説き広めていくのです。
その縁遠い方々こそが。
「悔い改めなさい」
ブゥン! ボギャア!
「ぎゃああああ!」
「た、助けてくれえ! もう悪さはしねえから!」
「真面目に働きます! 真っ当に生きますから勘弁してくれえ!」
そう。盗賊です。
「うふふ、悔い改めなさい」
ブゥン! ボキボキボキボキ!
「げああああああ! ゴホゲホ!」
ビチャア!
あらああ? 血を吐かれて、内臓にダメージが入ってしまったかしら。
「わたくし、紅が大好きですの。ですから……もっと吐いて下さいな」
メキメキボキボキッ
「ぐがああああ…………ぎゃあああああああああ! グブゴボォ!」
一際大量の血を吐かれて、そのまま動かなくなりました。
「えええ、もう死んでしまいましたの? まだまだ楽しみましょうよ……『魂よ戻れ』」
パアアア……
「……うぐ……げふげふ、ごほぉ! はあ、はあ、はあ……」
荒い息の中で見上げた瞳は…………もう意志の光は無いようです。
「悔い改め、聖心教を信仰なさいますか?」
「……はい……主にお仕えします……」
はい、これで布教できました。
え? それは奴隷の量産じゃないか、ですって?
「お聞きしますが、貴方は奴隷ですか?」
「……違います……」
「つまり、自らの意志で聖心教に入信されたのですね?」
「……その通りです……」
ね。問題ありませんでしょう?
盗賊から足を洗った方々は、警備隊や教会に配属して働いて頂く事になります。
「あの、聖女様を疑うつもりはありませんが……大丈夫なのですか?」
はい?
「聖心教に入信したとは言え、元は盗賊です。ちゃんと言う通りにしてくれるのか……」
大丈夫ですわ。
「皆様」
「「「はい、聖女様!」」」
「こちらの警備隊員様の指示に従いますか?」
「はい、従います!」
「人々の役に立ってみせます!」
「今までの罪の償い、精一杯させて頂きます!」
目をキラキラとさせて仰られるものですから、警備隊員様も引いて……いえ、感心していらっしゃいます。
「聖女様、洗脳魔術か何かを?」
失礼ですわねっ。
「ちょっとのお仕置きと適切な説教による、真っ当な改心ですわよ」
「……ちょっとのお仕置きって……あれが?」
「全員三回以上は撲殺されてると思われ」
「あれなら、洗脳魔術と代わらねえよな」
「……何か仰いまして?」
「「「何でもありません、聖女様!」」」
……この三人も、改心させてあげましょうかしら……。
この勢いは留まる事は無く、次々と名だたる盗賊団は壊滅していったのじゃ。
「しかし盗賊を改心させて入信させ、信者を増やすとは……シスターでなければ成せぬ荒技じゃな」
「旦那様~」
背後から新妻が這い寄って来よる。
「何じゃ」
「聖女様より、私めを見て下さいな」
……またか。この元メイド、意外と絶倫じゃな。
「待っておれ。ワシにも成さねばならぬ仕事があるのじゃ」
「そんなのは、後からで良いですわ」
「いや、そう言う訳には」
「ふーっ」
「ふひゃああ!? み、耳に息を吹きかけるでない」
「旦那様~」
「ちょ、ちょ、待っ」
「っ!?」
「リファリス?」
あ、いえ。何故か女性に鎖で繋がれた獅子が見えたもので。
「それより、目標の人数にはまだ?」
「いえ、かなり増えてきましたから、今度は従来の信者様をターゲットにします」
「え? 従来の信者も撲殺を?」
しませんわよ!
「説教会を開催して、信仰心を高めるのですわ」
「信仰心を高めるって……リファリスの説教で?」
……何かご不満でも?
「いや、シスターの説教を卑下するつもりは無いんだが、信仰心を高められるかどうかは微妙じゃねえか?」
なっ!?
「モ、モリーにまでダメ出しされるだなんて……」
「ダメ出ししてるんじゃなくて、誰が説教したって同じだろ」
「わたくしじゃなくても、ですの?」
「まあ……大司教猊下くらい担ぎ出さないと、なかなか信仰心は上がんないだろな」
大司教猊下に、ですか。
「それか、わざと注目されるような説教会にするとか?」
ま、まさか……。
「また、水着の説教会ですの!?」
また水着?




