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真っ赤な花と撲殺魔っ

 シスターの策略によって、あの男の目論見は見事に潰されたようじゃな。それにしても、嘘発見術式を改良して、いや改悪して、全ての質問に電撃が走るようにしてあったとは……。

 さてさて、最早逃げも隠れもできまいて。フリードとやらの無様な最後、見届けるとしようかの……。



 タンタンタンッ!


「魔女審判はシスター・リファリスの無実を認め、代わりに執行人・フリード公の不正を認めます。フリード公並びにお抱えの魔術士全員捕縛なさい!」


 本来であれば、魔女と認定されたわたくしを捕まえるはずだった衛兵達が、術式執行人であるフリード様と配下の者達を縛り上げていきます。


「離せ! 我は自由騎士団自治領主であるぞ! 衛兵如きが触れるで無いわ!」

「フリード公、往生際が悪いですぞ。潔く縛に就かれよ」

「う、五月蝿い! 五月蝿い五月蝿い五月蝿いいい!」

 ザシュ!

「ぐあああっ!?」


 フリード様?


「この糞共がああっ! こうなったらこの場に居る全員を斬り殺し、あの女を魔女に仕立て上げてやるわ!」


 あらあ。あらあらあらあら。


「つまりぃぃ、わたくしが全員殺した事にして、自分の罪を有耶無耶にしようとしてるのですねぇぇぇ?」


「お前が、お前が大人しく我の妻になっていれば、このような面倒な事にならなかったのだ!」


 何を言い出すのかと思えば、わたくしに責任を押し付けての自己正当化ですの、この期に及んで?


「だから、全員殺す殺す殺す殺す殺す!」

 ザクッドシュッズバッ!

「ぎゃあああっ」

「がはあっ」


 自分の部下であった魔術士達を斬り殺し、自らを捕縛しようとしていた衛兵さん達を刺し殺します。


「お止めなさいな。無駄な殺生は己の罪を増やすだけですわよ……『迷える魂よ、身体に還りなさい』」


 傷口から大量の血を流して死んでいた方々が、生気を取り戻して立ち上がります。


「なぁ!?」


「早くお下がりなさい。もう殺されたくありませんでしょう?」


 生き返られた魔術士や衛兵さんは、急いでフリード様から離れます。


「こ、この魔女があああっ! どこまで我の邪魔をするかあああっ!」


 標的をわたくしに変えたフリード様が、高速でわたくしに迫ります。


「死ねぇぇぇ!」

 ガギィン!


 その剣を、短剣でリブラが受けました。


「前にも言ったが、聖女様に刃を向けるのは私が許さない」

「見習い風情が、調子に乗るなあああっ!」


 バギ……ギャリギャリ


「ちぃ……二束三文の短剣じゃ、騎士剣には分が悪い」


 わたくしの関係者であったリブラは、武器の持ち込みはできません。せいぜい短剣くらいを隠し持つだけで精一杯だったのでしょう。


「不味いな……リファリス、逃げて」


 え、わたくしが逃げる?


「リブラ、一旦退いて下さい」

「リ、リファリス?」

「わたくしなら、大丈夫ですわ」


 バキィィン!


 短剣が折れ、リブラが弾き飛ばされ。


「魔女め、浄化してくれるわ!」


 返す刀で、わたくしの左肩に刃が触れ。



 ザグンッ



 わたくしの身体を刃が駆け抜け、右の腰辺りまで灼熱の痛みを生んだのです。


「リファリスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「ふはははははは! 魔女は断罪された!! はははははははははは!」

「あははははははははは!」

「はははははは…………は?」


 刃は、確かに身体を駆け抜けました。


「なぁにが可笑しいのでしょうか、このお間抜けさんは。あははははははははは!」


 が、刃によって斬り裂かれたのはわたくしでは無く、法衣のみ。裂けた箇所からわたくしの無傷の肌が覗きます。


「な、な、な、何だと!? た、確かに手応えがあったはず…………な、ならば!」


 再び剣を振り上げ、わたくしに斬りかかります。


 ザグンッ

 ……パサッ


 が、斬られた法衣が落ちるのみ。わたくしは揺らぎもしません。


「な、何が起きているんだ! 何故死なないのだ!」


「さあ……何故でしょうねぇぇぇ?」


 聖女の杖を握り、一歩踏み出します。


「っ!? く、来るな、化け物がああ!」


 ザンザンザンザンッ!


 鋭く速く、わたくしの身体を刻んでいきますが、法衣が細かく落ちていくだけ。


「何故だ! 何故死なないんだあああ!」

「あらあ? そんな事も理解できないんですの?」


 一歩、また一歩と進む度に、フリード様も一歩ずつ後退していきます。


「痛みなど、慣れてしまえばそれまで。死など、超越してしまえばそれまで。それだけの事ですわ」


「死を超越など、できるはずが無い!」


「できた者が居るのですから、貴方様はこうやって追い詰められているのですわよ?」


 その背後で、リブラがポツリと言葉を漏らしました。


「……まさか……本当に居たなんて…………『無痛剣奏』に辿り着いた者が」


「うわああああ! 化け物が、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇ!」


 ザクザクザクザクザクザクッ!


「はぁい、着きましたぁ」


「何故だ! 何故死なないのだあああっ!」


「あは、天誅」

 バキャ!

「ぐあああっ!」


 まずは剣を握っていた右手を叩き潰し、剣を持てないようにします。


「あはは、天罰」

 ゴキャ!

「がはあああああっ!」


 続いて肘を砕き、フリード様の騎士としての命を奪います。


「あはははは、滅殺」

 ボキャ!

「ぐはあ!」

「あはははははは、抹殺」

 グチャ!

「げぴぃ!」

「あっはははははははははははは、撲殺ぅ!」

 ゴシャン!

 

 フリード様の頭が弾け、真っ赤な真っ赤な大輪の花が咲き……。


 ブシュウウゥゥ……

 ……ドチャッ


「あはははははは! 咲きましたわ、咲きましたわ、真っ赤な花が! 綺麗で華麗で薄汚い、真っ赤な花が! あはははははははは!」



 あ、あれを花に例えるかのう……うっぷ。

フリードよ、成仏してくれ……と思われる方は、高評価・ブクマを頂ければ、次回フリードは生き返ります。

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