調査をするキツネ娘っ
「呪具だと?」
「うい。呪具ならピンポイントおkあいた!?」
「リジー、口調!」
「あ……ピンポイントな呪いが可能です」
そう言われた市長陛下は、自分が身に付けている物をキョロキョロと確認し始めました。
「呪具だと……これはあの時に貰った物だし、これもあの時に」
「大丈夫……です。今は何も感じない……です」
そう言われて市長陛下は、再び顔をわたくしに向けました。
「聖女殿、この者は大丈夫なのかね?」
「呪いに関しましては、わたくし以上のエキスパートですわ」
「……これが、かね」
完っ全に疑いの眼差し。まあ、分からなくはありませんが。
「百聞は一見に如かず、ですわ。まずリジーの言う通りにしてみましょう」
「う、うむ……」
しかし、呪具ではなくリジーの犯行なのですが、どのような誤魔化しをするつもりなのでしょうか。
市長陛下に連れられて、選挙対策事務所へ。
「ちょっとストップ」
「何かね」
「あの屋敷の屋根裏、強烈な呪具反応」
「はあ?」
確かに、なかなかに強い呪いを感じますわね。
「あの家は住む者が全員不幸になるので、今は誰も住んでいない」
「誰も住んでないならラッキー、ちょっと行ってくる」
「お、おい!?」
屋根に飛び乗ったリジーは、迷う事無く拳を振り下ろし。
バキ! メキィ!
「お、おま、呪われているとは言え、他人様の家の屋根をぶち破るかあ!?」
「あった」
市長陛下の突っ込みをスルーし、手に持っているのは…………釘?
「これは〝張り付けの釘〟と言う呪具。文字通り、罪人を張り付けにする時に使われた釘」
「どのような呪いを?」
「本来はそこまで強力な呪具では無い。だけど間違って家を建てる時に使われた事で、呪いが倍増した」
ど、どうしたら、そんな釘を間違って使うんですの?
「では、今は?」
「解放された事により、大半の呪いは霧散したと思われ。よってあの家は救われた」
「屋根に大穴が空いた時点で価値は無いに等しいわ!」
「直せば何とかなる」
「他人事みたいに言うなあああ!」
市長陛下、完全にリジーのペースに巻き込まれてますわね。
事務所までの道中に、四点の呪具を見つけてホクホク顔のリジー。
突っ込み疲れて、グッタリした市長陛下。
「リジー、早く行きますわよ。時間を掛けすぎですわ」
「すまそ」
「見えてきた、あそこが私の選挙事務所だ」
派手に飾られた窓際には、市長陛下の顔が印刷されたポスターが、傾いたまま放置されています。
「呪いのせいで誰も寄り付かなくなっ」
「むむむむ! 呪いをビリビリ感じるのだああ!」
リジー?
「呪いだと!? どこだ、どこからだ?」
「むむむむ!」
そのまま事務所に駆け込むリジー……さて、どうやって誤魔化すのでしょうか。
「むうう! 天井裏から強烈な」
「天井裏は倉庫にしているから、何も異常は無い筈だが」
「……ではなく、床下から強烈な」
「地下室を倉庫にしているから、何も異常は無い筈だが」
「……ではなく、建物のどこかから強烈な呪いがっ」
「だから、どこからだ!!」
迷走してますわねえ……あら?
「市長陛下、祭壇ですが……」
祭壇に飾られているハートにヒビが入っています。
「な、何だと!?」
「あああ、強大な呪いの前では、聖心教も無力なのですぅ~」
……………………はい?
「リジー、今、何と仰いまして?」
「え? 強大な呪いの前には、聖心教も無りょ…………あ」
「リジー、貴女は今は、何を信仰していますの?」
「え、えっと、聖心教です」
「あらああ、そうでしたか。でしたら、何故に聖心教を否定なさるような事を仰いますのおお?」
「あ、え、えっと、それは、言葉のあや」
「言葉のあやですの、そうでしたの………………で、済まされる筈が無いでしょう!」
「ひいいいっ!」
聖女の杖を取り出し、フルバーストで振り下ろします!
「フルバースト天誅!」
ズドバギャア!
「ひいいいい!!」
「フルバースト天罰!」
グワッシャアア!
「ひいいいい!!」
「聖女殿! 事務所、事務所がああ!」
「フルバースト滅殺!」
ゴワッシャアアン!
「うぎゃああ!」
何かを一緒に殴ったようですが、何よりリジーですわ!
「フルバーストフルリターン抹殺!」
バガバガバガバガバガバガバガアアン!
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬうう!」
「フルバーストエターナル撲殺!」
ドッカアアアアアアアン!!!!
「あぎゃはあああ!?」
「……は!? せ、選挙事務所がありませんわ!」
何が起きたのでしょうか!?
「リ、リファリス、あの……」
「悔い改めなさい」
「は、はい……」
「では、許します。聖なる心で貴女が満たされん事を」
「あ、許してもらえるんだ……」
「……ですが、リジー」
「はい?」
「この顛末は、どう致しますの?」
「えっ」
「この後始末を、今回の貴女への課題とします」
「え、さっき許すって」
「これは課題。聖心教をディスった事とは別ですわ」
「課題って、課題がキツすぎるって」
「偉大な呪い様に助けてもらいなさい」
「やっぱり許してないじゃないと思われ!」
この後、リジーは色んな呪具と知恵を用いて、どうにか誤魔化したらしいです。
「き、貴重な呪具が犠牲に……」
「どうやって誤魔化したんですの?」
「呪具を以て呪いの代わりに」
……聞かずにおきますわ。後で何が起きても、わたくしは関知致しません。
フルバーストエターナル!




