いやんばかんな撲殺魔っ
「なら行くぜっ」
ダンッ シュタタ
モリーが見事に壁を駆け上ります。
「流石ですわね」
「感心してる場合じゃねえぞ。次はシスターだ」
はい……そぉれ!
ダァン! ビタァァァン!
痛いですわ!
スタァァン! ビダァ!
く、何とか壁に……!
ジタバタジタバタズリズリズリィィ…………ストンッ
くぅぅ! もう一度!
タタタタッスタァァン!
ビタァァァン!
痛いですわぁぁ!
「……シスター、ロープ下ろすから、それで登ってきな」
は、はい……。
「いやぁ、意外と不器用だよなぁ」
ススススッ
なっ!?
「わ、わたくしが不器用だと仰るんですの!?」
ズリズリズリ
「そりゃあ……ほふく前進してる時でも、如実に差があるだろ?」
ススススッ
た、確かにモリーは速いですわよ。ですが、わたくしだって負けてはいませんわ!
ズリズリズリズリズリズリ
ビ……ビリ……
「ん? シスター、ちょっとスピードを緩めないと」
ズリズリズリズズズズズズッ
ビリビリィ!
「っ!? きゃあああむぐっ!」
「馬鹿! 天井裏で叫ぶ馬鹿が居るか!」
法衣が胸元辺りから破れてしまった事で、反射的に叫んでしまいましたが、モリーに口を塞いでもらって事無きを得ました。
「……良かった、気付かれなかったみたいだ」
「も、申し訳ありません。助かりましたわ」
「……シスター、法衣を脱いだ方がいい。こんな狭い場所じゃ、あちこち引っ掛かって邪魔なだけだ」
ほ、法衣を脱げと言われましても……。
「し、下着だけで移動しろと?」
「仕方無いだろ。つーか、誰かに見られる訳じゃないんだから」
く……し、仕方ありません。
シュルッ
「っ……て、下着は白かよっ。目立つな」
「染めますわよ……『黒く染まれ』」
パアアア……
ああ、清純の象徴である白が黒く染まっていきますわ……。
「……シスター、服に髪まで黒くしたのに、下着は白かよ……」
「み、見せないのですから、別に構わないでしょうっ」
「だが見られる結果になってんじゃねえか」
うっ。
「念には念ってヤツで頼むぜ、シスター」
……は、はい。
「シスター、何してんだよ!?」
ギシギシギシッ
「ま、待って下さい、ブラの肩紐が引っ掛かって」
て、天井裏、狭すぎますわ!
「こういう時は無駄にデカいのは不利なんだな」
む、無駄にデカいとか言わないで下さい……!
ギシギシッ プチンッ
「な、何とか取れましたわ」
「……頼むぜ……」
な、何も言い返せません。
「ん……シスター、ここからは何も喋るなよ」
モリーが下を指差します。どうやら現市長陛下の部屋が近いようです。
ススススッ
ズズッ ズズッ
物音を立てないように、慎重に……。
ススススッ
ズズッ ズズッ
ブツッ
「っ!?」
ま、またブラの肩紐が……!
グイグイッ
ミキメシミキッ
引っ張りますが、なかなか取れない……!
グイグイッ
ピピ……ブチィ!
あああ! ひ、紐が!
も、もう使えませんわ……し、仕方ありません。
スルッ
な、何故わたくし、パンツ一丁で他人様の家の天井裏を這い回ってるのでしょうか……何だか悲しくなってきました。
チョイチョイ
モリーが下を指差します。どうやら着いたようです。
「……だ……な……」
二人の声が聞こえますわね。ハッキリとは聞き取れません。
「……し……か……」
う~ん……ここはモリーに期待するしか無いようです。
「…………」
モリーはメモ帳に何か書いています。どうやら聞き取れているようです。
「……うだ。それから……」
「……ああ。それで……」
それから十五分程盗み聞きし。
カリカリ
「充分な収穫あり。出よう」
そう書かれたメモをわたくしに見せました。ああ、ようやく出られるのですね。
ズズッズリズリズリ
来た道を戻る為、どうにか方向転換します。
ズリズリズリ
い、いたた。ブラが取れたせいで、胸が引き擦られて……。
ズズズズッ
後ろからモリーが来ています。急ぎませんと。
ズリズリズリ
「っ……」
す、擦れて……。
ズリズリズリィィ
「っ……っ……」
モリーではありませんが、大きすぎるのも考えものかも……しれません。
ズズッ ズリズリズリ
「あ……くっ……」
「……? シスター、どうかしたのか?」
い、今は話しかけないで。耐えるので精一杯なのですからっ。
ズズッ ズズッ
ザリィ!
「はぅん!?」
「シスター?」
「な、何でもありませんわっ」
さ、先への刺激が……もう限界……。
「シスター、もう少しだぜ」
何気なくモリーがわたくしのお尻を押し。
ズリリィ!
限界を迎えていたわたくしには、それがクリティカルになってしまい。
「はあああああああああんっ!!」
いつも以上に艶っぽい声を上げてしまいました。
「侵入者だ!」
「探せ!」
「シスター! 何で屋根裏で艶っぽい声を出すんだよ!」
「い、色々と限界だったのですわ、色々と!」
「居たぞ!」
「こっちだ!」
ちい、見つかりましたわ!
「『眠れ』!」
バタバタッ
グー……グガー……
「とにかく、逃げますわよ!」
「見つけたぞ!」
「捕まえるんだ!」
「『眠れ』!」
バタバタ
グー……グガー……
「……なあ、シスター」
「何ですの!?」
「その魔術、どんだけ使えるの?」
「消費魔力は微々たるものですから、どれだけでも使えますわ!」
「……最初から使ってれば、わざわざ屋根裏這いずり回る必要は無かったんじゃね?」
……あ。
聖女様の宿命。




