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不正を正す撲殺魔っ

「つーかさ、この選挙、絶対に不正だらけじゃねえか?」


 それは……その通りでしょうね。


「わたくしや大司教猊下の名前を利用してる時点で、かなりギリギリのラインですわ」


 やはり各国によって選挙の法律は随分と違いますが、マリーナ市国はかなり厳しい方です。


「なら、警備隊は既に動いている?」

「いや、それは無いな」


 わたくし達の会話に、壇上より降りてこられたマーリン様が口を挟まれました。


「何度か我が墓所に参りに来ていた警備隊幹部共が言っていた。選挙期間中は、一切取締りをするつもりは無い、とな」


「取締りしないって、んなもん不正をした者勝ちじゃねえか」

「その通りだ。リジー殿が散々呪いを放ってくれたお陰で、愚物共は随分と大人しくしてくれておるようだが」


「大人しく? まだ何かしてますの?」


「一応、今日も刺客に襲われかけた」


 っ!?


「刺客だと!? 俺は何も感じなかったぞ!」

「厳密に言うならば、襲ってくる前に始末した、と言うべきかな」


 襲ってくる前!?


「あの愚物、あれだけの呪いに見舞われながらも、まだ一発逆転を信じておるようだ」


 一発逆転……つまり。


「我を暗殺してしまえば、競合相手は居なくなる。つまり、自分の当選が確実になるのだ」


 ……そこまでするだなんて……。


「流石に許せませんわね」


「あ……これは不味いな」

「む? 何が不味いのだ?」

「いや、あの反応は……間違い無くシスターの撲殺心(せいぎ)に火が点いたな」

「正義とな?」

「……多分、シスターは今夜にも動くだろうな」



 ……ムクッ


「リブラ、リジー、モリー、起きていらっしゃいますか?」


 夜半過ぎ。辺り一体が寝静まった頃を見計らって、行動開始です。


「も、もう声出ない……ムニャムニャ」

「うふふ、呪われちゃえ、うふふふ」


 リブラとリジーは……お疲れのようですわね。


「モリー、モリー?」


 ……居ないようです。


「……仕方ありませんね。今回はわたくしのみで」

「ほら、行くぜシスター」

「ひゃはあああ!?」


 背後から声を掛けられ、思わず声が出てしまいます。


「おい、姉御達が起きるぞ」


 モ、モ、モリー!?


「何故起きてるんですの!?」

「何故って……どうせシスターは出掛けるだろうと思ってたから、準備して待ってた」


 準備って……。


「わたくしを……手伝ってくれるんですの?」

「まあ……今回一番手が空いてるのは俺だし」

「モリー……ありがとうございます!」

「ちょっ!? シ、シスター、抱き着くなって!」

「感謝を表明するには、これが一番じゃなくて?」

「いや、だから、色々当たって、色々っ」


 色々当たってって…………あぁ。


「失礼しました。モリーはあまりこういうのには免疫が無いのでしたね」

「あまりって、そんなの当たり前だろ! 男同志でそんな状況になったら、俺は舌噛んで死ぬぞ!」


 ……はい?



 モリーが落ち着いてから、夜の街へと駆け出します。


「ったく、俺は何つー事を口走ってるんだ……」

「申し訳ありません。心にも無い事を言わせてしまいました」

「き、気にしないでくれ。これは俺自身の問題なんだから」


 わたくしと目が合う度に、顔の赤さが増していっている気がします。


「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫、大丈夫。精神統一精神集中……」


 目的地であるマーリン様の事務所に着いた頃には、モリーも冷静さを取り戻していました。


「……よし、忍び込むか」

「はい」

「って、ちょっと待て。シスター、そんな格好で天井裏に入るつもりか!?」


 そんな格好って、いつもの法衣ですが。


「っ……よくもまあ、今まで俺に付いて来たもんだ……」

「あの、何か差し支えありまして?」

「差し支えありまくりだろうが……っ!?」


 モリーがわたくしを連れて物陰に隠れます。


 ……ザッザッザッザッ……


 ……見回りの警備隊……危ないところでした。


「……シスター……こんな真っ暗な中で真っ白い法衣だなんて、目立つだけだろが」


 ああっ。


「確かにそうですわね。うっかりしてましたわ」

「うっかりどころじゃねえだろ!」

「でしたら……『黒く染まれ』」

 パアアア……


 染色魔術で法衣を真っ黒にします。


「これで如何?」

「髪! 髪の色!」

「ああっ」


 そう言われてみれば、髪も真っ白でしたわ。


「でしたら、同じように……『髪も黒く染まれ』」

 パアアア……


「……はい、これで目立ちませんわね」

「か、髪まで黒くできるのかよ…………贅沢言うなら、肌も黒くしてもらえりゃ完璧だな」

「肌もですわね。分かりました」

「えっ」

「『肌を小麦色に染めよ』」

 パアアア……


 真っ白な肌が、健康的な小麦色に変化します。


「これで如何?」

「い、如何も何も、もうシスターだなんて分かんねえぜ」

「そうですか。でしたら安心ですわね」

「あ~……それと口調だな」


 口調?


「そんな丁寧な言葉遣いする侵入者が居るかよ」


 ああ、言われてみれば、その通りですわね。


「でしたら雑に話せば宜しくて?」

「あ、うん。そうだな」


「分かりましたわ。じゃあモリーの姉貴、行きやしょう」

「っ!?」

「どうかしやしたか、姉貴?」

「……や、止めてくれ。違和感以上に落ち着かねえ」


 あら、お気に召しません?


「でしたら……さっさと侵入するのニャ」

「誰の言葉遣いなんだよ、それ!?」

「猫獣人ですニャ」

「シスターがその言葉遣いするのは色々危険だから止めろ!」

「あら、でしたらポーズも」

「止めてええええっ! 理性、理性があああ!!」

リファリスなのニャ!

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