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利用される撲殺魔っ

「うむっ!」


 新たに自らの肉体となったホムンクルス製の身体を見回し、くるくる回り、ペタペタとあちこち触り。


「うむうむうむっ! 女性とはこのようなものなのか!」


 股関をペチペチ叩き始めたところで、流石にはしたなさを感じ、やんわり制止します。


「初代様、お止め下さい」

「む? そうか、流石に女性でもこれは恥ずべき行為なのだな」


 男性でも女性でも恥ずべき行為に決まってます!


「いや、失敬失敬。今まで当たり前にあった物が無くなるのは、やはり違和感しか感じぬな」


 なっ!?


「初代様、一応淑女の前なのですから」

「む? そうであったな、はははは」


 ははははじゃありません! リジーなんて真っ赤になってますし、モリーは……。


「うん、分かる。分かるぜ」


 ……そうでわね。辿った道は違えど、着いた先は同じ仲ですわね……。


「で、聖女殿よ」

「は、はい?」

「どうせ女性になったのだ、大きくできるものは大きくしたいのだが?」


 ……大きくしたい、ですか……。


「……現在は標準的な大きさにしてあるのですが……」

「ホムンクルスであれば、その辺りは自在であろ? ほれ、ボンキュボンだ」

「と、突然そう言われましても、どの程度になさるんですの?」

「……そうさな……聖女殿より上が良いぞ」


 わたくしより、上!?


「リファリスより上……Hくらい?」

「いや、Jは言ってるんじゃ」


 そんなにありませんわ!


「むう、それで良い! どうせからババーンと行こうぞ、ババーンと!」

「しょ、初代様、何故そこに拘るんですの!?」

「む? そんなのは簡単な話だ。現市長が居る以上は、無理矢理地位を奪う訳にはいかんのでな」

「……はい?」

「つまりはだな。正面から、正々堂々と奪わなくてはならぬ」

「ま、ますます意味が分からないのですが」


 初代様は指を左右に動かしながら、チッチッチッと呟かれ。


「聖女殿、我が国は市国ぞ。つまり、市長が統べる国だ」

「……そうですわね」

「市長とは即ち、市民によって選ばれる者。つまり」


 ま、まさか……。



『え~、大変お騒がせしております。皆様のマーリン、マーリンでございます。今の腐りきった市長ではなく、若いマーリンが必ず市政を立て直してみせます……』


「……リブラの声、完全に棒読みですわね」


 強制的にウグイス嬢にされたリブラは、連日の激務で目が死んでいます。


『マーリン、マーリン、マーリンでございます。皆様、市長候補のマーリンをよろしくお願い致します。皆様のマーリン、庶民の味方のマーリンでございます』


 まさかちょうど選挙の時期だったなんて。


「いや、完全に狙ってただろ」

「元々は現市長陛下の身体を乗っ取るつもりだったようですから、これは失敗した際のプランの一つだったのでしょうね」

「んで、シスターだけじゃなく、大司教猊下や枢機卿猊下まで呼んだのか?」


 おそらくは。

 背後に棚引く横断幕には「大司教猊下推薦」「枢機卿猊下応援」など、色々と問題がありそうな語句が並んでいます。


「聖心教って政務不介入じゃないのか?」

「まあ、ロードの例もありますから、完全に形骸化した決まりですが……流石に大司教猊下自らは不味いでしょうね」

「なら、いいのかよ?」

「おそらく初代様は『大司教と言っても聖心教の大司教猊下では無い』とでも言い訳するのでしょう」

「え……他の宗教の大司教って言いたいのか?」

「そこは……まあ……」


 聖心教以外の大司教だなんて、魔王教くらいでしか聞いた事はありませんが……。


『では皆様、市長候補のマーリンが直接挨拶をさせて頂きます。どうかご拝聴をお願い致します』


 そう言って壇上に上がったのは……わたくし以上のないすばでーに仕上がった、色気ムンムンのマーリン様でした。


『皆の者、我が新しく市長になるであろう、マーリンである!』


 もう市長になるのは確定事項なのですね。


『我は我が国が腐りきった愚物共に食い荒らされるのを見かね、ここに立ち上がった!』

 わあああああ!


 見た目もあるでしょうが、ハッキリとした物言いが人気を集めているようです。


「まあ、元市長なんだから、演説はお手のものだろうが……対抗馬はどうしてんだろな?」

「それでしたら、雇われたリジーが嬉々として呪いを飛ばしてますわよ」

「え……」

「現市長自身への呪い、近寄る者への呪い、協力する者への呪い、目にしただけでも呪われる状態らしいですから……」

「も、もう選挙運動どころじゃ無いんじゃ……」


 自宅で寝込んでいるようです。


『……と言うのが我が主張だ。皆の者、我に付いてまいれ! 新たな市国を我と共に作り上げようぞ!』

 わあああああ!


 まあ……これは確実にマーリン様で決まりですわね。


『む、あそこにいらっしゃるのは聖女殿ではないか?』


 はい!?


「あ、本当だ」

「聖女様だ!」

「ま、まさか聖女様まで応援に!?」


 な、何を仰るんですの!?


『いやいや、聖女殿は分を弁えた方。聖心教の教えに従い、選挙に手を貸すような事はなさらぬ』

「そ、そうですわ! わたくし、ただ通りかかっただけです……モリー、行きますわよ!」

「あ、ああ」

『いやいや、聖女殿はただ通りかかっただけであって、我を応援しに来た訳では無いのだ。早とちりであった、すまぬすまぬ』


「……何でも利用すんなあ、マーリン様は……」


 あ、あれでは、わたくしが非公式に訪問したようにしか見えませんわよ!

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