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説教会準備の撲殺魔っ

 次の日、宿屋さんのご主人から乞われる形で説教会を開催する事になりました。


「説教する事は構わないのですが、どこか会場はありまして?」

「そりゃあ、以前のような晴天の下……」


 ……まさか。


「水着着用での説教会をあぶぅらぼぬぇ!?」


 やっぱりっ。ついモーニングスターを出してしまいました。


「……ご主じーん、生きてるー?」

「こひゅー、こひゅー……がくっ」

「あ、亡くなった」

「やりすぎましたわね……『穢れし魂よ、汚物……』ではなく『肉体に戻れ』」

「汚物は流石に……」



「は、初めて死を体験しましたが、あんな感じなんですねぇ……」

「ええ。あーなってこーなったでしょう?」

「で、最後にパアアア……って」


 分かります、分かりますわ。


「ああ、そうなのよね。地獄のような苦しみがあって、その先にパアアア……があって」

「あれが最高に気持ち良いと思われ」

「……死ぬ事に気持ち良さを求めるなよ……」


 あら、また話が逸れましたわね。


「会場ですが、近くに教会はありませんの?」

「教会でしたら、今は誰も居ない廃墟でしたらあります」


 廃墟。


「何故に教会が廃墟に?」

「あー……あまり大っぴらに言える話じゃないんですが……」


 何か事情があるのですね。


「その教会の牧師を務めてたのが、俺の従兄弟なんですが……」

「従兄弟さんですの」

「その……教会の寄付金とうちの売り上げ盗んで出奔しやがって」


 確かに大っぴらに言える話じゃありませんわね!



「ここです」


「……確かに廃墟ですわね……」

「そう? うちの教会よりマシじゃあぎゃはあ!」

「見た目の不気味さはうちの教会に勝るふぎゃぶえ!?」

「……うちの教会の方が……趣はあるな、うん」


 そうです、趣があるのですわ。決してオンボロなのではなく。


「モリー、十点獲得ですわ」

「十点って……何の十点?」

「撲殺回避ポイントですわ。百点で一回撲殺をされずに済む権利を獲得できます」

「誰得!?」

「そうですわね……リブラとリジー、後はルディ辺りでしょうか」

「……欲しいだろうな、その三人……」

「しかし-が多すぎますから、百点満点は夢のまた夢ですわね」

「……意味ねえポイント……ちなみに俺は何ポイントあるんだ?」

「お待ち下さい……」

「メモってんの!?」

「ええっと、今日の十点で……あら、おめでとうございます。ちょうど百点ですわ」

「いつの間にかポイント貯まってた!?」

「では、これ。撲殺回避券を差し上げます」

「ありがとう……って、メモの切れっ端じゃんか!」

「割り符ですわ」

「割り符する程のもん!?」



 話が再び逸れましたわ。


「建物はしっかりしていますから、掃除だけで済みそうですわね。礼拝堂を徹底的にお掃除しますわよ」

「分かったわ。私はステンドグラスを磨く」

「私は床を掃く」

「俺は椅子を磨く」


 礼拝堂のお掃除は毎日の日課でしたから、皆慣れたものです。


「あ、あの、聖女様、掃除でしたら私達が」


 ご近所の方がお手伝いを買って出てくれますが、全て丁重にお断りします。


「掃除も修行の一環なのです。わたくし達は床を磨くのと同時に己を磨いておりますので、どうか温かい目で見守って下さいな」

「な、何と言う……!」

「これが聖女様なのですね……!」


 何故か皆様、涙ぐんで帰って行かれましたが……はて?



「リファリス、終わったよ」

「終わったであーる」

「俺も完了したぜ」


 わたくしも祭壇のお掃除が終わりました。これで完了……。


 ピチョン


「え? ピチョン?」


 ……ザアアア……


「ありゃりゃ、雨が降って来たぜ」


 ピチョン ピチョン


「……雨漏りしてますわね……」

「そう言えば、床に水滴の跡があった気がしなくもない」


 リジー、早く言って下さい。


「仕方ありませんわね、修理してきますわ」


「……え? 修理って、シスターが?」


「……? 何か問題でも?」


「問題でもっつーか、シスター御自ら?」


 ……何かおかしいでしょうか?


「いいよ、俺がやる。屋根登ったりなんかはお手のものだから」


 ……まあ……別に構わないのですが……。



 カンカンカン

「はい、釘ですわ」

「あ、ああ、ありがとう」


 金槌を振るうモリーの隣で、わたくしは浮いています(・・・・・・)


「……飛べるんだな」

「『浮遊』という魔術がありますの」

「納得した。そりゃシスターが担当する筈だわ」


 ……教会の修繕の為に習得した、とは言えませんわね……。


「しかしモリー、言うだけあって手際良いですわね」

「まあ……生まれも育ちも貧乏だったからな、直せるものは自分で直すしかなかったんだ」


 カンカンカンカーン!


「……よし、良いぜ。もう大丈夫だ」

「ご苦労様です」

「さて、下りるか」


 ツルッ


「うわっと!?」

「モリー、危ない!」

「ちょ、待っ、うわ、うわわわわわ!?」


 メキメキメキメキ ズッシャアアアアン!



「……完全に屋根が抜けてしまいましたわね……」

「申し訳無い」

「……お陰様で晴天の下、水着での説教会になってしまいましたわ……お詫びがてら」

「重ね重ね申し訳無い」

「……モリィィィィィィィ!」


 すると、モリーはサッと割り符を出し。


「シスター、これで撲殺回避、だよな?」


 う、うぐ、くく……!


「そ、そうですわね。一回回避ですわね……」

「は、はは。まさか役に立つとは」

「く……うっがああああああああ!」

 どっかんどっかんどっかん!

「な、何で私が撲殺されるのよ!?」

「消化不良ですわ!」

「八つ当たりかよぎゃあああああああああ!」

リブラの宿命。

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