痒いところに触手……な枢機卿猊下っ
「あ、おはようございます、タコ壷猊下っ」
「おはようございます、タコ壷猊下」
……ぶふっ。
「にゃっはー! 誰がタコ壷猊下かあああ!」
「「すみません~」」
「リファっちもこっそり笑わない!」
笑ってませんわよ。
「口。口が引きつってる」
「え、おかしいですわね。ちゃんと無表情になるように…………あ」
「無表情になる、って事は、表情が変わる何かがあったんだよね?」
「さ、さあ、何の事でしょうか」
「…………えいっ」
きゅっきゅっ
「はあああああああああんっ!」
「……これで許してあげるよ、主へ誓う」
……道端に女の子座りをしたまま、しばらく動けませんでした。
「ただいま天誅」
きゅっきゅっ
「にゃっはああああああああんっ!」
背後から近付き先端を摘まみます。うん、上手くいきました。
「リ、リ、リファっちぃぃぃ!」
「あらあ、この間の仕返しですわ」
「仕返しって、あれは先に笑ったリファっちがイケないんでしょうが!」
「笑うのは耐えましたわ。それに難癖をつけてきたのはルディでしてよ?」
「笑うの耐えたって……やっぱり我慢してたんでしょ!? つまり笑うつもりだったんじゃない!」
「別にどちらでも宜しいでしょ? 耐えたという事は、我慢する意思があった表れですわ」
そう言ってから立ち去るわたくしの背中に、ルディの恨めしげな視線が突き刺さりました。
「ふんふんふーん♪」
「にゃっはー、『風よ舞い上がれ!』」
ごおおおおっ!
っ!? あ、足元から強烈な上昇気流が!
バサササッ
「え……きゃあああああああああ!!」
ワ、ワンピースの法衣が、腰の辺りまで捲れ上がって……!
「おー、リファっちらしい純白だねえ♪」
「ル、ル、ルディィィィ!」
「よーしよし、し・か・え・し。にゃは~」
きゅっきゅっ
「はあああああああああああんっ!」
わたくしの叫び声を聞けて満足したようで、ルディはそのままわたくしを解放しました。
「……っ」
急いで身なりを整えて、心新たに立ち上がります。
「にゃっはにゃはにゃは~♪」
隙だらけの背中。今ですわ!
ジャララッズシィン!
「ぶぎゅるっ!」
成功ですわ!
「あっははははは! ルディ、先日の仕返しですわ。如何かしら、わたくしのモーニングスターの味は?」
「し、死にそうなんだけど、にゃは~……ぐふっ」
「あら、強烈すぎましたわね。もう少し優しくしてあげるべきでしたかしら……あは、あははは、あっははははは!」
虫の息以下のルディを指差しながら、わたくしは心行くまで笑い続けたのでした。あー、可笑しい。
「ふんふんふんふーん♪」
ジャリッ
あら、ルディ?
「リファっち、またまた復讐に来たよ」
「懲りませんのね。しかも正面からいらっしゃるなんて、自殺行為ではなくて?」
聖女の杖を取り出し、身構えます。
「……リファっち、本当はこの手は使いたくなかったんだ」
はい?
「リジっちと同じように、脈々と呪いを全身で感じ、呪いを使いこなす」
え?
「天才ルドルフ・フォン・ブルクハルトの半身なのは伊達じゃないって教えてあげる。『呪具支配』」
じゅ、呪具支配ですって!?
「呪具を扱えるのは呪剣士だけ、なんて固定概念は捨てた方がいいよ……じゃないとリファっち、酷い目に……遭うよ」
にゅるるるるるるっ
「えええええええええ!!!?」
ルディの頭に乗ってる壷から、タコの足が大量に!?
にゅるるん
き、気持ち悪い……!
「天誅!」
ブゥン! にゅるん
「え!?」
「にゃはは、タコ足には打撃技は通用しないよ♪」
にゅるるるるー!
ばしぃん!
「あぐぅ!!」
強烈な一撃が、脇腹にめり込みました。こ、これは効きますわ……!
「にゃふふ、前回の仕返し、思い知れ~」
にゅるるるん
し、しまった! タコ足に捕まりましたわ。
「にゃふふふ、思い知れ!」
にゅるるるるん
「え、ふ、服の中ににゅるにゅるがっ」
にゅるるるるん
「あ、は、ふ…………あはははははははははは!」
にゅるるるるん
「く、くすぐったい……あはははははははははは! や、止め、くふふふふ! あははは、あっははははは!」
「タコ足にゅるにゅるくすぐり、どうだ!」
「あははははははは! 参りました、参りましたわ、あひゃはははははははははは!!」
「も、もう駄目ですわ……」
全身ヌルヌルで気持ち悪い事この上無いのですが、笑いすぎて身体に力が入りません……。
「にゃは~、今回は勝ちだね」
「そ、そうですわね、わたくしの負けですわ」
笑いすぎて冷静になりました。今回、色々とやりすぎでしたわね。
「ルディ、謝罪致しますわ。色々と申し訳ありませんでした」
「え……ええええええええ!?」
……何故驚いてるんですの?
「リ、リファっちが自ら謝って来た!?」
「……わたくし、自分が間違えてましたら、ちゃんと謝りますわよ?」
「うっそだああ! リファっちが謝ったのって、ルドルフが介入した時くらいじゃん!」
あら、そうでしたかしら。
「めーずらし! めーずらし!」
「珍しくって申し訳ありませんね」
「また謝った! 本当にめーずらし!」
何度も言いますが、わたくしだって間違えたら謝りますわ。
「めーずらし! めーずらし!」
「はいはい、分かりました」
「めーずらし! めーずらしあぼぎゃあ!?」
しつこいですわよ!
「や、やっぱりリファっちはこうじゃなきゃ……がくっ」




