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傍聴の撲殺魔っ

 そして明後日、いよいよ懲罰委員会が開催されたのじゃ。これに関しては改めての説明は必要無いじゃろ。

 普通の貴族ならば聖女の権限で何とかなったかもしれぬが、流石に領主クラスとなると……のう。

 さーて、ではあの愚かな男の顛末を見届けるとしようかの。



 タンタンッ


 木槌の音が、場内に響きます。


「これより自由騎士団自治領の領主・フリード公の懲罰委員会を始めます」


 いよいよ、元騎士団長の懲罰委員会が始まりました。わたくしとリブラも証人として委員会に召集されています。


「ではフリード公の罪状について、訴追側からの説明を」


 委員長様の指示を受けて、訴追側の諜報部隊長様が立ち上がります。


「今回フリード公を懲罰委員会に訴追した罪状は、今回出席頂いております聖女様への婚姻の強要と、大司教猊下への不遜な態度と物言い、更に自らの部下である騎士団員への過剰な罰、以上であります」


「一つ一つの説明を」


「はい。まずは聖女様への婚姻の強要ですが、本人の意思を確認する事も無く迫り、嫌がる聖女様を手込めにしようと」

「異議あり!」


 訴追側の説明の最中に、弁護側からの反対意見が。


「手込めにしようとした、と言うのはそちらの勝手な見解であり、実際に行われたかどうかは不明です。確たる証拠が無い罪状を述べるのは控えて頂きたい!」


 委員長様は周りの委員様と相談した上で。


「……今はまだ訴追側の主張を聞いている段階です。異議は最後まで聞いてからにして下さい」


 つまり、却下されました。弁護側は渋々着席なさいます。


「……では続けます。手込めにして既成事実にしてしまおうと画策したのであります。そして二点目、大司教猊下への不敬でありますが……これについては数多くの目撃証言もございますれば、弁護側も事実認定を争う事は無いかと」


 確かに弁護側は、先程のように異議を訴えたりするつもりは無さそうです。


「そして三つ目、騎士団員に対する過剰な罰。こちらについても、騎士団員の証言がありますれば」

「異議あり!」


 え。


(ま、まさか、この罪状で異議を唱えるとは)

(かなり無理があると思いますわよ)


 リブラがわたくしに小声で話し掛けてきた為、わたくしも同じように応じました。


「その件に関しては、騎士団員達が結託しての捏造の可能性があり、まだ確定した罪状ではありません。それをかくも事実かのように発言されるのは、フリード公を貶めるのが目的であると疑わざるを得ません。即時撤回をっ」


 そう言われました諜報部隊長様は、わたくしをチラッと見た上で反論なさいました。


「先程からの弁護側の主張、聞くに耐えませんな」


 そう言われました弁護側が鼻白みますが、特に何も言い返しません。


「一つ目の罪状、そして現在主張中の罪状。そのどちらにも聖女様が深く関わっておいでです。それらに対して異議を唱えられるのは、聖女様に対して何か思うところが有る、と捉えざるを得ませんが?」


 わたくしの名前を出されましたか。これは異議を否定するには最大の武器ですわね。


「……その通りだ」


 ……え?


 ザワッ


 弁護側はこれで異議を引っ込めるだろう、というわたくしの想像は、フリード様の発言によって、否定される事になったのです。


「我は聖女を名乗るシスター・リファリスをこそ弾劾する。我の名を貶める為に、やってもない罪をでっち上げ、我が騎士団員をそそのかしたのだ。その女は聖女等では無く、魔女の間違いでは無いのか!!」


 それを聞いたリブラが激高しました。


「無礼者! 聖女様を魔女呼ばわりするとは! 恥を知れ!」


 リブラの言葉に後押しされ、懲罰委員会を傍聴していた方々からも、フリード様に対する野次が飛びます。


「聖女様に何て事を言うんだ!」

「謝れ!」

「破門だ破門だ!」


 タンッタンッタンッ!

「静粛に!」


 委員長様の叩く木槌の鋭い音が会場内に響き渡り、騒がしかった傍聴席が一気に静まり返ります。


「……フリード公、流石にその発言は看過できぬ。即刻取り消したまえ」


「断る。聖女に値せぬ女に聖女の名乗りを許した大司教猊下の責任も追求せねばならぬからな」


 ザワワッ


 再びざわめく傍聴席。今度は大司教様を!?


「フリード公、もう一度言おう! 貴公の発言は聞くに耐えん! 即刻取り消したまえ!」


「断ると言ったら断る。聖女の名を貶めるシスター・リファリスの悪行に、我はもう見ていられん」


 …………。


「いい加減にしなさい! 委員長、聖女様に対する侮辱、あまりにも目に余ります!」

「そうです! 最早懲罰委員会を開催する間でも無い!」

「すぐに処罰すべきだ!」


 リブラも、諜報部隊長様も、そして傍聴席からも、フリード様を咎める声が発せられます。


「静粛に! 静粛に!!」

 タンッタンッタンッ


 再び木槌の音が響き、一斉に静かになります。


「……聖女様。貴女様のご意見を伺いたいのだが」


 委員長様はわたくしに話を振りました。と言うより、わたくしが何か言わない限りは事は収まりませんわね。


「……では僭越ながら、わたくしの意見を述べさせて頂きます」


 そう言って立ち上がりますと、フリード様がわたくしに向かって言葉を発せられました。


「魔女は黙っていろ」


 と。

 再びざわめきかけた傍聴席を、わたくしは右腕を上げて制止します。


「貴方がわたくしを魔女だと仰るのでしたら、わたくしを断罪できるのですわね?」


「……?」


「委員長様、わたくしもこのように魔女だ魔女だと言われたままでは立つ瀬がございませんわ」


「……何かご希望ですか、聖女様」


 わたくしはフリード様を見て微笑むと、こう主張しました。


「あそこまで仰るんですから、フリード様自ら、わたくしを魔女審判なさればよいのでは?」

シスターの目論見が知りたければ、高評価・ブクマを頂ければ、明日分かります。

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