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決勝戦の撲殺魔っ

『さあ、いよいよ決勝戦が始まります。今年の剣聖祭もこれが見納めだあ!』

 ワアアアアアア!


 いよいよですわね。


『この決勝戦、国王陛下だけでは無く、大司教猊下も御観覧だああ!』

 ウオオオオオオオ!


 だ、大司教猊下まで!? 聞いてませんわよ!


『聖女様のご活躍を耳にしたルーディア枢機卿猊下が言上し、今回の御観覧が実現したそうです!』


 ルディ、明日のお日様を拝めないものと心得なさい。



 ゾクゾクゾクゥ!

「うくひぃ!?」


「どうかしたか、我が半身よ」


「あ、いやあ。強烈な、と言うか猛烈な殺気がね、にゃは……」


「……何かあっても供養はしてやろう」


「慰めになってないよ!?」



 ふう、はあ。


「呪いの神様、私に猛烈な呪いの波動を降らせたまへ」


 ふうーっ、はあーっ。


「主よ、どうか私には祝福をしないで下さいましまし」


 ふうううーーっ、はあああーーっ。


「どこかの名も知らない神様か何か。どうか私にご助力下さいっす。なむー、あーめん」


 すぅぅううううう、はぁぁあああああ「うぐぅ! げほげほげほげほ! ごーほごほごほごほ!」



 いよいよ決勝戦じゃ。

 まあ、普通なら……。


『はあああ!』

『たあああ!』

 ぎぃん! ぎゃりり! がぎぃんがぎぃん!

『くうぅ、やりますわね、リジー!』

『そっちこそ、リファリス!』


 ……のような実力伯仲の試合展開が続き、ギリギリの攻防が観客を魅了し。


『聖女様、頑張ってええ!』

『無名剣士も負けるなああ!』


 会場を一体感が包み込んで。


『はあ、はあ……これが、最後の一撃ですわ』

『はあ、はあ……これで、全てが決まる』


 伝説となるであろう戦いは、クライマックスへ。


『『やあああああ!』』

 ギャギィィン!


『……くふ……さ、流石、リジーですわ……』

『……リファリス……やっぱり……強い』

 ドサドサッ


『な、何と! 両者同時に倒れたあああ!』


 ……何て展開になってのう。


『いいですか、先に立ち上がって「優勝しましたわ」とか「優勝したと思われ」とにこやかに宣言した方が勝ちですからね』


 ……ん? いやいや、これは違う違う。

 と、とにかくじゃ。熱血バトル漫画のような、白熱した試合展開……という事には、欠片程もならなんだのじゃ。

 結論から言えば、シスターの圧勝じゃった。しかもその理由がキツネ娘のギブアップという、何とも締まらない結果になり、盛り上がりに欠ける決勝戦となったのじゃ。

 む? 何故に結論を先に言ったんだ、とな?

 それはのう…………まあ、一部始終はこれから説明してやるわい。



『東ゲートより、イジリ選手の入場です!』


 ガシャン ガシャン


『暗闇の奥から、鎧が擦れ合う音が響いてきます! 全身を隠した謎の無名剣士、一体その正体は?』


 ガシャン ガシャン ガシャン!


『その全貌が明かされる時が、今始まるのです!』


 ガシャン! ガシャン!


「なあ、重そうな鎧だな」

「中が男なのか女なのかも分からねえぜ」


「……よくあれだけの鎧を着て、動けるものですわね……。あの装甲を突破しない限り、ダメージは与えられない……厳しい戦いになりそうですわ」


 ガシャン! ガシャン!

 ツルッ

「わ、わわわわっ!?」

 ガチャガチャ! ズシィィィン!


「…………へ?」

『こ、転んだ!?』


 ジタバタジタバタッ

「うっくっく!」


『……立てないのでしょうか』

「……立てないでしょうね、あれでは」


 ジタバタジタバタッ

「くっくっく!」


『えー、会場の皆様、しばらくお待ち下さい。温かい目で見守って頂ければ幸いです』


 ジタバタジタバタッ

「あっくっく!」


「……ひっくり返った亀より酷いですわね。自重に耐えられずに、起き上がれないみたいですわ」


 ジタバタジタバタジタバタジタバタ……パタッ

「ぷ、ぷりーずへるぷみー……」


『諦めたようですが……解説さん、このような場合はどうなるのでしょうか?』

『さ、さあ……私もこんなのは初めて見ましたから』


「へるぷみー、ぷりーずへるぷみー……」


「あの、審判さん、助けますか?」

「ま、まあ……試合も始まってませんからね……」


『あ、リファリス選手と審判がイジリ選手の元へ向かいました』

『試合前ですからね、助けるつもりなのでしょう』


「イジリ選手でしたわね。とりあえず鎧を脱ぎなさいな」

「っ!?」

 ブンブンブンッ


『えーっと、兜が激しく左右に振られていますね?』

『おそらくリファリス選手が鎧を脱ぐ事を勧め、それを拒否しているのでしょう』


「ですが脱ぎませんと、起こす事もできませんわよ?」

 ブンブンブンッ


「……どうしますか? 手の空いている方を集めて、人海戦術で立たせます?」

「それは駄目です。対戦相手と審判(わたし)以外の者が触れた場合、即失格というルールですから」

「でしたら……どうしますの?」

「……最悪……このままで試合開始するしか……」

「……はい?」

「つまり、試合開始を告げた後、イジリ選手にギブアップしてもらうしか……」

 ブンブンブン


「……嫌がってますわね」

「しかし、他に手は……」



 このままキツネ娘は一時間程粘るのじゃが、結局強制的に試合開始され。



 ガンガンガンガンガンガンガン!

「うきゃあああ! 耳に響く耳に響くぅぅ!」

 ガンガンガンガンガンガンガン!

「もう無理もう無理! 参った参ったギブアップー!」



 ……という事で、ただ鎧を叩きまくったシスターの勝ちとなったのじゃ。本当に、締まらん結果じゃのう。

そりゃリジー、鎧脱げないわな。

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