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求婚された撲殺魔っ

「貴様……たかがシスターの分際で、我から権限を奪えるとでも思うたか」


 わたくしの魔術『茨』に捕らわれたままでも、騎士団長様の尊大な態度は変わりませんでした。


「わたくしは聖女として宣告致しました。よって、貴方の権限は全て剥奪されます」


「どのような権限だ」


「大司教様にお許し頂いた、聖女の権限です」


「具体的には」


「大司教様から聖女の称号を与えられましたが、わたくしはそれを拒否致しました。ですが、それをお許し頂けなかったのです」


「ふむ」


「ですから、わたくしは二つの条件を飲んで頂ければ、と提示しましたら、大司教様はそれをお許し下さったのです」


「具体的には」


 ……この方、一体何を聞き出したいのでしょうか。


「大司教様が許可して下さいました権限は二つ。一つは、聖女と呼ばれる事を拒否する権利。やはりわたくしは聖女の器ではございませんから」


「もう一つは?」


「もう一つは……大司教様の権限が及ぶ限りですが、相手の身分関係無く裁きを与えられる権利、ですわ」


「……そうか……そうか。やはりそうなのか!」


 そこまで聞いた騎士団長様は、今までの無表情の仮面を剥がし、高らかに吠えたのです。


「やはりお前は『生殺与奪の権限』を持っているのだな! そうだ、我はそれが欲しかったのだ!」


 ……はい?


「我は大司教に申し入れをした。新解釈派の長として、我に『生殺与奪の権限』を寄越せと」


「……寄越せと言われて、軽々と手に入れられるとお思いですの?」


「大司教が認めた『生殺与奪の権限』ならば、この大陸ではどのような身分であっても適用が可能だからな」


「あの、わたくしの話を聞いてますの?」


「そうしたら大司教めが、聖女にその権限を譲り渡したとほざいたのだ!」


「……貴方、大司教様を蔑称するのは止めなさい」


「だから我は大司教に迫った。『生殺与奪の権限』を我に与えなければ、お前の大事な大事な聖女がどうなっても知らんとな」


 わ、わたくしを脅迫材料に使いましたの!?


「すると、だ。あの大司教めが、お前を我に売り渡したのだ」


 ……。


「そこまで『生殺与奪の権限』が欲しければ、聖女を己がものと、な」


 わたくしを?


「そうすれば、我がお前の持つ聖女の権限を代行する事を許そう、と」


 ……ああ、そういう事ですのね。


「分かりましたわ。率直に言わせて頂きますが」

「我も率直に言わせてもらおう。我の妻になれ」

「わたくしの話を最後まで聞いてから仰って下さいまし。わたくし、貴方と夫婦に為るくらいでしたら、死んだ方がマシでしてよ」



 ほぉう、シスターははっきりと振りおったのう。しかしこの騎士団長、全く話を聞いていないように見受けられるが……何と返事するのか、見ものじゃのう。



「そう言うのは分かってた。だから」


 するとわたくしの魔術で縛られているはずの騎士団長様が、少しずつ身体を動かし始めたのです。


「我は、力ずくでも、お前を我がものにする……っ」

 ブチッ ブチブチッ


 わたくしの『茨』を引き千切った!?


「我は自由騎士団団長アレックス・フリード……団長を務める者は……常に最強でなければならないっ!」


 唖然としていると、副団長様がわたくしの前に出られました。


「シスター、お逃げ下さい。団長が団長を務めていられたのは、あの言葉通り、最強であったからなのです!」


「最強……とは、騎士団で最強、という意味ですわね?」

「はい、その通りです!」

「そうですか。それなら問題(・・・・・・)ありませんわ(・・・・・・)

「……え?」


 ブチィ!


 最後の『茨』が千切れ。


「我が前に這い蹲るが良いわああああ!」


 全力でわたくしに殴りかかってきたのです。



 何とまあ、騎士の風上にも置けない奴じゃの。主君と同様の立場にある大司教を軽く見、しかも女性を手込めにして無理矢理婚姻を結ぼうとするとは。

 じゃがこの男、ある者の存在に気付いておらぬようじゃの。



 バギャア!

「ごがああっ!?」


 わたくしに迫ろうとしていた騎士団長様は、ある者によって蹴り飛ばされたのです。


「シスターに何をするつもりか、下郎が」


 それは、ホウキを持って構えるリブラでした。


「主に仕えし聖女様に手を出す事は、己の命を溝に捨てると同じと知れ」


 立ち上がった騎士団長様は、怒りに我を忘れているようで。


「き、貴様ぁ……見習いシスターの分際で、我を足蹴にするとは何事かああああっ!」


「貴様こそ、自由騎士団を束ねる立場に在りながら、聖女様に襲い掛かるとは何事か」


 息を荒くした騎士団長様は、ついに長剣を鞘から抜き放ち。


「ならば貴様から血祭りにあげてくれるわ!」


 リブラに斬りかかります。


「危ない! 下がって!」


 副団長が割って入ろうとしますが、わたくしが片腕で制止します。


「ご安心を。あの娘は、リブラ侯爵家の関係者ですから」

「えっ」


 リブラ侯爵家、と聞いた副団長が息を飲みます。

 何故なら。


「遅い」

 バシィ!

「がああっ!?」

「基礎が甘い」

 ズドムッ!

「ぐふぁぁ!!」

「結論、弱い」

 バギィ!

「ぐぎぃぃ!?」


 ホウキ一本で、騎士団長様は叩きのめされてしまったのです。


「さ、流石はリブラ侯爵家の……」

「ええ。王家指南役を代々受け継いできたリブラ侯爵家の関係者には、弱い者は居りませんわ」


 しかもリブラはリブラの名を許される程の元当主。つまり、リブラ侯爵家の中でも最強に位置しているのです。


「つまりリブラは、国内最強なのですわ」



 確かに、騎士団最強と国内最強では勝負にならんのう。

リブラと真剣勝負してみたい方は、高評価・ブクマを頂ければ、叶うかもしれません。

但し、マジ強いです。

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