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容赦ないキツネ娘っ

「あの方……」

「どうした、シスター」


 サポートとして控えていたモリーが、わたくしの独り言を耳にしたようです。


「あ、いえ。わたくしの対戦相手の」

「ああ、どこぞの子爵の次男坊だったか」

「はい。妙に晴れ晴れとした表情をしていらしたので、何かあったのかと」


 するとモリーは苦々しい表情を浮かべ。


「まあ……色々と悟ったんだろうさ」

「……何をです?」

「まあ、色々だよ」


 ……はあ……色々、ですか。


「……願わくば、汝の行く先に幸あらん事を」


「……モリー? どうしたんですの?」


「いや、心の傷が深くない事を祈っただけだ」


 はいい?



 ギィン!

 クルクルクルクル……ガラランッ


 大剣を首に突きつけられた剣士は、うなだれながら両手をあげられました。


「勝者、リブラ侯爵夫人!」

 ワアアアッ!

「リブラ侯爵夫人は相変わらずですなあ」

「いや、確か亡くなられたのでは?」

「あれは跡を継がれた妹君ですな。いやはや、姉君に負けず劣らずですなあ」

「全く。太刀筋までよく似ていらっしゃる」


 よく似ていらっしゃるどころか、同一人物ですわ。


「リブラ、危なげ無いですわね」


「当たり前よ。あんなボンボン騎士になんか負けてたまるもんですか」


 ボンボン騎士、ですか……そう言えば先程の騎士様も、子爵家のご出身だとか。


「……やはり貴族の子弟にはボンボンが多いのでしょうか?」



「うぐふぅ!?」

「アラン様!? 傷が痛むのですか!?」

「い、いや、ボクのガラスの心にヒビが」

「……はい?」



「リファリスも……当然一回戦突破だよね?」


「はい。子爵家の方でしたわ」


「子爵家……まさかアラン君?」


「知ってますの?」


「ええ、今年の卒業生の首席ね。確か自由騎士団(フリーダン)が勧誘するって意気込んでた筈だけど」

「え、フリーダンが?|わたくし、何も聞いていませんわよ?」

「……そう言えばリファリスが団長だったわね」

「代理、ですが」



「アラン君、我々フリーダンに入らないか?」

「え、フリーダンに!?」

「お、おめでとうございます、アラン様!」

「もし入る気があるんなら、騎士団長である聖女様にご紹介」

「ぐふぅ!」

「え? ア、アラン君?」

「アラン様? アラン様ーー!!」



「まあ……辞退するだろうね」


 ……? 何故でしょうか。


「それより、リジーも出てるんだって?」

「ええ。もうすぐ試合の筈ですわ」

「よし、見に行こう」


 リジーはわたくしと同じ会場ですわ。


 ザワザワ……


「ん? 何か雰囲気が妙だな」


 確かに、試合の盛り上がりとは少し違うような。


「いやあ!!」


 っ!?


「今の叫び声は」

「リジーの」


 リブラとわたくしは合図した訳ではありませんか、同時にスピードを上げます。


「いや、いやあ!!」

「だから、その呪具は装備禁止なんだよ」

「呪具は私の身体そのもの!」

「しかしだねえ……」


 ……やはり。


「あれだけ呪具は止めとけって言ったんだがなぁ」


 魔術によるバフが禁止されている大会ですから、呪具に身を包んで出場すれば、どうなるかは火を見るより明らかでしょうに。


「もういい。強行出場する」

「あ、待って下さい!」


 そ、その会場には、わたくし特製の違反防止結界が……!


 バヂヂィ!

 パアアア……

「え…………きゃあああああああああ!」


 結界に触れた呪具は全て浄化されてしまい、残ったのは……。


「……リジーの姉御、ブラまで呪具だったのかよ」


 呪いが比較的弱いらしい、パンツと靴、そしてナイフが一本……。


「こりゃあ……勝負する前に勝負ありだな」


 恥ずかしがり屋のリジーが、手ブラ状態で戦える筈がありませんわ。


「おい、審判。結界は閉じちまったんだよな?」


 すると対戦相手が、審判に何か言い始めました。


「え? あ、はい。もう閉じちゃってますね」

「つまり、勝敗が決するまでは、どちらも出られないんだよな?」

「そう……なりますね」

「そういう訳だ! そこの女ぁ、尋常に勝負勝負ぅ!」


 な、何を考えたのか、半裸のリジーに猛然と斬りかかる対戦相手。


「っ!?」

 ギィン!


 落ちていたナイフを拾い、咄嗟に受けるリジー。


 ギリギリ……ギャリリ


「へえ、やるじゃねえか。だが、片腕でいつまで保つかな!?」

「く……ぐ!」


 片腕で胸を隠しているリジーは、両手剣に明らかに力負けしています。


「止めなさい! その勝負、聖女の名において」

「んぎゃぐひぃ!?」

「中断……え?」


 リ、リジー?


「片腕は塞がってるけど、両足は健在と思われ」


 いつの間にか、リジーの蹴りが……その……殿方の急所に炸裂していました。


「く、くはぁ」


 そのまま崩れ落ち、悶絶する対戦相手。


「しょ、勝負ありですね。勝者リジー」

「まだまだ」

「え?」


 何を思ったのかは分かりませんが、リジーが勝利宣告を止め。


 ごろんっ

「う、ううぅ」


 痛がる対戦相手を仰向けに寝かせ。


「れでぃー……」


 た、対戦相手の股関の前に、しゃがみ込み!?


「ごー」


 ナイフを振り上げて一直線に!?


 ぶすぅ!

「ぎゃああああああああああああ!」


「うっわ、えげつね」


「てんちゅーてんばつめっさつまっさつひっさつ」

 ぶすぅ! ぶすぅ! ぶすぅ! ぶすぅ! ぶすぅ! ぶすぅ!

「ぎゃは! ぐはっ! があ! ぐああ! あがあああ!」


「や、止めなさい! もう勝負あり! 勝負ありだあああ!」


「チカンヘンタイゴーカンマ、チカンヘンタイゴーカンマ、チカンヘンタイゴーカンマ」

 ぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすぶすっ

「ぎゃひ! ひ、ひぎゃあ! も、もう止めてくれえええ!」



 次の試合から、何故か男性の観客が激減したのは……リジーが原因でしょう。

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