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団長を止める撲殺魔っ

 此奴、何を血迷っておるんじゃ。自分の部下を些細な事で刺し殺しおった。

 副団長を始め、騎士団員の怒りを沸々と感じるのじゃが……この騎士団長、相当な問題児のようじゃが……?



「団長! 何故そのような真似を!!」


「その者、聖女と呼ばれるシスターに恐怖を覚えさせた。それだけで万死に値する。そう考えたから処断した」


「聖女様はお許しになる旨を仰っていたではありませんか!」


「……副団長、我のやり方に不満を感じるのか?」


「不満とか言う問題では無く、部下の命を軽く考えないでほしいと諫言申し上げい」

 ズブリッ

「我に諫言等無用。逆らうのならば、処断するのみ」

「がっ……は!?」


 な……何をなさってるのですか!!


「聖女の戒『茨』!」

 グルルルッ


 とりあえず危険人物としか思えない騎士団長様を封じます。


「副団長ー!」


 他の騎士様が副団長様を看て下さっています。ならばわたくしは。


「……やはり、既に事切れてらっしゃいますね」


 最初に刺された黒い騎士様がお亡くなりになっているのを確認し、使う魔術を回復から復活に切り替えます。


「『迷える魂よ、元の身体に戻れ』」


 致命傷となった傷が塞がり、天へ召されかけていた魂が身体に戻り。


「…………う、うぐっ、ぐはあ…………え?」


 黒い騎士様は息を吹き返されました。


「い、生き返った!?」

「これが聖女様の奇跡……!」


 次に副団長様に駆け寄ります。


「傷の具合はどうですの?」

「まだ息はありますが……致命傷です」


 確かに。段々と顔色が青白くなっています。


「ならば治すだけですわ。『癒せ』」

「ふぐっ…………うぅ」


 重要な臓器の幾つかを剣は貫いたようですが、全て元通りに復元していきます。


「出血も酷いですわね……『赤い生命の奔流、再び』」


 失われた血液も再生し、身体中に酸素(生きる素)を行き渡らせます。


「顔色が戻ってきましたわね。ならば傷口を『癒せ』」


 剣が貫いた皮膚組織も再生し、これで完全に治癒できました。


「き、傷が……」

「副団長様、もう異常はありませんわね?」

「え、あ、はい。ありがとうございます」


 全快を確認すると、今度は黒い騎士様に視線を移します。すると仲間の騎士様に支えられ、こちらに歩いてくる途中でした。


「副団長様の治療もありましたので、貴方は血液の再生を最低限しか行っていません。一週間は養生なさって下さいね」

「せ、聖女様……無礼を働いた私にまで過分な慈悲を頂き……何と言えばいいのか……」

「傷口が開いている時ではないと、体内組織の再生はできないのです。本当に申し訳ありませんでした」

「な、何を仰いますか! 命を助けて頂いたのに、文句などあるはずが!」


 そんなやり取りの最中、背後で何かが呻いていました。


「我を……我を……いつまで拘束するつもりだ」


 口から泡らしき何かを吹き出し、荒い息遣いをなさっている団長様が呻いていたのです。


「いつまで……と仰いますが、解放されるとお思いですか?」


「どういう……意味だ」


「考えれば分かりますわよ。主は基本的に殺生を禁じられておられます。貴方も聖心教徒でしたら、ご存知でしょう」


「知っている。だが、それがどうしたのだ」


 ……はい?


「今シスターも言ったではないか、主は基本的に(・・・・)殺生を禁じている、と」


「はい、言いましたわ」


「基本的に、ならば例外は存在するのだろう」


 はい。生きる為に他の動物を殺して食べる、等の行為は禁じられておられません。


「我の行いはその例外に該当する」


「……申し訳ありませんが、仰っている意味が分かりませんわ」


「我はそう解釈している、と言っている」


 解釈、という言葉でわたくしは思い出しました。


「貴方、まさか新解釈派ですの!?」


「そうだ。我が提唱したのだ」



 さて、また難しい言葉が出てきたからの、ワシが説明しよう。

 聖心教も様々な解釈があり、それによって派閥が存在する。まずは一番主流な古典派。古くからの教えを忠実に守る事を重きに置く派閥で、大司教を始め五割はこの派閥じゃな。

 そして改革派。古い考えに捕らわれずに新しい解釈を取り入れるべき、という考えを持った者が集まっており、この派閥が三割を占めておる。比較的に庶民の参加する割合が多い派閥じゃな。

 そして中立派。これが残りの二割を占めておる。この派閥の説明は追々に、じゃ。

 さて、今シスターが言っていた新解釈派じゃが、これは改革派内の強硬派を示しておる。言ってしまえば、教義を自分達の都合の良いように解釈する、という自分勝手な連中の集まりでの、旧貴族の一部が属しておるの。あまりに強硬すぎる故、改革派内でも疑問視されており、大司教から破門通告が出されるのも時間の問題、と言われておるような連中なのじゃ。



「……成る程、貴方の凶行の理由が分かりましたわ」


 これは、何を言っても無駄な方ですわね。


「……一応お聞きしますが、貴方方も新解釈派……ですの?」


 それを聞いた副団長は、頭を左右に振られました。


「我々は改革派でございます。自由騎士団はその中核でありますから」


「そうですわね。わたくしもそのように理解しておりましたが……その改革派の中心に居るべき方が、あのような……」


「我々も、その点に関しましては、団長と意見を違えております」


 それを聞いて安心しました。


「ならば、わたくしの裁量により、騎士団長様は暫く拘束させて頂きます。理由はわたくしの目の前で行われた殺人行為。宜しいですわね?」


「はい。聖女様の権限を出されては、私達は何も言えません」


「騎士団長様の罪が確定するまで、副団長様が団長代理を務めて下さい」


「了解しました」


 ……幾分か、騎士団の皆様の表情が明るくなったのは、気のせいでしょうか。

捕まった団長を撲殺した方がいい、と思う方は、高評価・ブクマを頂ければ、シスターが念入りに撲殺します。

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