新たな武器は蹴殺魔っ
「ねえ、リファリス」
「えいっ!」
ブン! スポーン カランカラン
む、難しいですわ!
「リファリスってばー」
「たあ!」
ブゥン! スポーン カランカラン
う、上手くいきません……!
「聞こえてる? リファリスー」
「やああっ!」
ブゥン! スポーン
「ああ……っ」
「あららら」
クルクルクルクル……スコーン!
「んきゃひ!?」
リ、リブラの部屋に!?
「ちょっと取ってきますわ!」
「リファリスー? 寝起きのリブラって危険なんじゃ……聞いてないと思われ」
ガチャガチャ バァン!
「リブラ、すいませんでした!」
「……むぅぅ……」
「ああ、頭に大きなたんこぶを……本当に申し訳ありませんわ」
「……リファリスゥ……」
「え、リブラ?」
きゅっ
「はあああああああああんっ!」
「リファリス、リファリス……」
「え、ま、ちょ【R指定】ん! 【いやん】ん! は【聞かせられないよっ】んん!」
……二時間程で……ようやく解放されました……。
「お帰りー、リファリス」
「…………はい」
「だから気を付けてって言ったのに」
「う…………」
「それにしても、ご近所にまで響いてたよ」
「……何がですの?」
「喘ぎ声」
っ!!!?
「窓開けっ放しだった」
きゃあああああああああああ!!
一週間程素振りを続け、ある程度様になってきましたので。
「リブラ、お願いします」
「私を練習相手に指名するかな、普通……」
木剣を構えてブツブツ独り言のリブラ。
「……何ですの?」
「だからさぁ、聖女の杖やモーニングスターでなら、私は充分に相手できるよ。だけどそんな特殊な武器を、たった一週間素振りしただけで……」
「あら、わたくし相手では不満ですの?」
「不満。役者不足よ」
言って下さいますわね。
「言っておきますが、一週間前のわたくしでは……ありませんわよ!」
トンファーを握り締め、一気に間合いを詰めます。
「はあああっ!」
ゆっくりと木剣を構えるリブラの脳天に、まっすぐにトンファーを振り下ろしてっ。
ブン!
「あ、あれ?」
「はい?」
クルクルクルクル……
スコーン!
「あぎゃあ!?」
どうやらすっぽ抜けたようで、落ちてきたトンファーがリブラの脳天を直撃しました。
「痛い痛い痛いい!」
「すすすすいません!」
急いで回復魔術をかけます。
パアアア……
「……ふう……」
「申し訳ありません」
「リファリス……今の、狙ったの?」
いえ、完全にすっぽ抜けました。
「と言うより、使い方が全然違ってるよ?」
はい?
「トンファーって棍棒みたいな鈍器じゃなくて、ここを持ってこうするの」
リブラの持ち方を見て愕然とします。横に突き出ていた箇所が持ち手だったのですから。
「トンファーってのは、武器と言うより防具に近いの」
ぼ、防具?
「これで相手の攻撃を受け止めて、もう片方で攻撃したり」
もう片方? つまり二刀流ですの!?
「蹴りを入れたりもできるわ」
蹴るんですの!?
「後はこう、回転させて殴りつけたり」
想像していた武器とは全く違いますわ!
「こんな感じだけど……使うの?」
「む、難しいですわね……」
「まあ、難しいには難しいけどね。これなら私が心得あるよ」
本当ですの!?
「教えてあげよっか?」
「ぜ、是非!」
リブラはニンマリと笑います。あ、嫌な予感が。
「分かったわ。なら、訓練は一週間。試験はその後」
試験?
「試験にパスしない限り、トンファーを使っての出場は認めない」
えええ!?
「当たり前よ。剣聖祭に出場する人達は、本当に命懸けなの。それだけの気構えの中に、リファリスは生半可な気持ちで入り込むつもりなの?」
「う……」
「相手は真剣なんだから。下手したら、死ぬのよ」
「…………分かりましたわ。わたくしもそれくらいの覚悟で臨みます」
一週間程度リブラから基本的な戦い方を学んだ後、しばらくは自主練。素振りだけではなく、様々な戦い方をリジーや
モリーとの実戦形式の訓練で磨いていきます。
「うん、まあ、いいんじゃないか?」
「後は場数を踏むだけ、と思われ」
場数、ですわね。
そして、リブラによる最終試験の日がやってきました。
「…………ねえ、リファリス」
「何ですか?」
「私があげたトンファー、確か白かったよね?」
「そうでしたか?」
「……何で真っ赤なの?」
「何故でしょうか。ウフフフフ」
「…………ねえ、リファリス」
「何ですか?」
「どうして法衣に、スリットが入ってるの?」
「それは勿論、蹴りやすくする為ですわ……ウフフフフ」
「……………………ねえ、リファリス」
「何ですか?」
「何で紅月状態になってるのよ!?」
「それは勿論、先程まで訓練していたからですわ……あは、あはは、あはははははははは!」
「それ、訓練と書いて撲殺と読むってヤツだよね!?」
「あらあ、違いますわよ。たまーに蹴り殺す……蹴殺もありましたわ。あはははははははは!」
「け、蹴り殺すって……」
「蹴球と同じ要領ですわ。最後には千切れて飛んでいってしまいましたが……あは、あはは、あはははははは!」
「千切れて……」
「飛んでいった……」
「さあ、リブラ! 命懸けの真剣勝負、始めますわよ!」
「あー……合格で」
「はい?」
「つーか、棄権します。蹴り殺されるのはご勘弁」
「ええ!?」
「つーか、私、リファリスと剣聖祭で当たったら棄権します」
な、何故ですの!?
リファリス、新たな快感に目覚める。




