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新春企画 別世界の撲殺魔っ

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

凄い揺れでした。びっくりです。

「はぁぁぁ……」


 失敗しました。新年を迎えると同時に、百八人目の撲殺が完了する予定でしたのに……。


「はぁぁぁ……」

「どうしたの、リファリ」

 バガァン!

「ぶげぇ!」


「はぁぁぁ……」


「モリー、今のリファリスに近寄っちゃ駄目よ」

「分かってるさ。新年早々、リジーの姉御みたいに頭かち割られたくねえ」

「リジーが撲殺一号だったわね」


 はぁぁぁ……物足りないですわ……何かやり残したような、モヤモヤが胸を焦がして……。


 ブゥ……ン


 ん?


「あ、あれ?」

「リファリスの足元に?」


 ブゥゥゥ……ン


「リジーから黒い何かが……」

「まさか、呪具!?」


 呪具でしたら浄化してしまえば……。

「『浄めよ』」

 パアアア……


 これで禍々しい穴も塞がる筈ですわ。


 ブゥゥゥ…………ン


 ……あら?


 ブッブー!!


「はい?」


 な、何でしょうか、今の音は?


 ブゥン! ヴヴヴヴヴヴ!


「さ、更に広がった!? わたくしの浄化が効きませんの!?」


「リファリス、早く逃げて! 飲み込まれるよ!」

「シスター、危ねえ!」


「く、『浄化』! 『浄化』!!」

 パアアア……パアアア……

「こ、効果が無……ああああああ!」



「リファリスウウウウゥゥゥゥ…………」



「く……!」

 クルンッ スタン!


 どうにか一回転し、石畳の上に着地しました。


「い、一体何が……?」


 落ちてきた穴の底は、薄暗い空間でした。ハイエルフですから夜目はききますが、それでもあまり遠くは見えません。


「……『灯り』」

 パアアア……ヴン


 灯りがかき消された?


「魔術阻害の呪法ですか……でしたら『浄めよ』」

 パアアア……ガシャアアン!


 ガラスが割れるような音が鳴り響き、わたくしを覆っていた呪法が弾けます。


「これで使えますわね……『灯り』」

 パアアア……ピカァ!


 グゴォ!?

 グゲ、ゴゲェ!


「な…………!」


 眩しい光が辺りを照らし出し、わたくしを囲んでいた者達を目の当たりにさせました。


 ヌボゥゥ……。

 ウグォウウ……。


「ゾ、ゾンビ?」


 よくよく見れば、立派な屋敷の内部に出たのは分かります。しかしそれに似つかわしくないゾンビ達が、わたくしにゆっくりと迫ってきていたのです。


「ふふ、結界系の呪具ですか。このゾンビ達はここで命尽きた方々ですわね」


 ここに閉じ込められた方々の恨みや辛みを糧とし、この呪具は起動しているのでしょう。


「ですがシスターであるわたくしの前では、ゾンビは無意味ですわ…………『浄めよ』」

 パアアア……


 ウアア……

 グアアア……


 ほら、一気に浄化されて…………あら?


 ……ガアア!

 ゴアアアア!


「効いてませんわね……呪法に慣れて耐性ができているのでしょうか」


 ウボゥ!

 ゲガァ!


「でしたら、直接手を下すしかありませんわね!」


 右手に聖女の杖、左手にモーニングスター。撲殺二刀流です!


「行きますわよ。『属性付与・浄化』」

 パアアア……


 モーニングスターに浄化魔術を纏わせ、それを振り回し。


 バガガガガガ!

 ギャアアア!

 グァアアアア!


 頭を砕いて脳を霧散させて頂きます。


「いくら聖属性に耐性があっても、中枢である脳に直接ぶち込まれては一溜まりもありませんでしょ?」


 ガ……ゴ……ガ……


 どんどん動けなくなっていくゾンビ達。


 バガァ! バギャ! グシャア!

 ドサドサッ


 聖女の杖も唸りを上げ、迫るゾンビの頭を砕いていきます。


「まだまだ居ますわね……えいやあたあっ」

 バギャバギャ!

 ゴアア……


 まだまだ撲殺しなくてはなりませんわね……。


 ブゥン! グシャグシャア!

 ジャララッ ゴシャゴシャゴシャアン!


 まだまだ湧いて出てきますわね……。


 グシャグシャグシャグシャグチャグチャグチャグチャ!


 まだまだ……まだまだ……。


 ブゥン! ゴシャゴシャゴシャゴシャゴシャ!


 …………ふふふ。


 グッシャゴギャアグッチャガシャアン!


 ふふ、ふふふふ。うふふふふふふ。


 グッシャ! グワッシャ! ドギャギャギャギャン!


「あはは、あはははは、あっははははははははは!」


 ブゥゥゥン! グチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャア!


「あはははははははははははははは! 汚らしいですわ! 臭いですわ! 血で血で真っ赤ですわあああ! あっははははははは!」



「リファリス! リファリスゥゥ!」

「落ち着け、リブラの姉御! まずはリジーの姉御を起こして、詳しい事を」



 あはははははははははははは…………



「あ、あれ? 今のって……」

「リファリスの……」


「おそらく、リファリスは大はしゃぎしているかと」


「「リジー!?」」


「あれは〝怨嗟の牢獄〟という腕輪型呪具」


「怨嗟の……」

「……牢獄?」


「対象を異世界の牢獄に閉じ込めて、一生出られなくする呪具」


「一生出られなくなるって……どういう事なのよ!?」

「大丈夫。私から何とかできる」

「なら今すぐ何とかしなさい! と言うか、何とかしろ!」

 ガックンガックン

「おおお落ち落ち落ち着いて」

「落ち着いてられるかああ! 今すぐリファリスを助けなさい!」

「いや、今は多分リファリスはお楽しみかと」

「……は?」



「あはははははははは! 新年早々楽しくて楽しくて仕方ありませんわああ!」

 ブンブンブンブングチャドチャグチャドチャ!

「あっははははははははははははは!」

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