大掃除と撲殺魔っ 三
「うふふふ……順調ですわ…………とってもとっても順調ですわぁ……あはは、あはははは、あっははははははははははははは!」
「ママー、あのまっかなおねーちゃん、サンタさんかなー?」
「しーっ! 指差しちゃいけません!」
あらあ? あらあらあらあら、あらあああ??
「わたくしがサンタさんに見えますの?」
「えっ!?」
「ひぃ!!」
「あらああ、くりっとしたおめめが可愛らしいですわね。ついつい、殴り殺しちゃいたくなりますわあああ……あはははははははは!」
「う……うわああああああああああん!」
「ひいいいっ! ど、どうか、命だけは! 命だけはあああああ!」
あらあら、急に怯え始めて、どうしたのでしょうか?
「ボクちゃああん、花火でも見ますかあ? 真っ赤な真っ赤な、悪人さんの頭が弾ける綺麗な綺麗な花火ですけどぉ……あははははははは!」
「え、はなび? みたいみた」
「駄目駄目駄目駄目駄目です!! は、早く逃げ……いえ帰りますわよ!」
「えーみたいみたいみたいよおお!」
嫌がるお子さんを引き摺って帰っていく母親。ああいう無理強いは良くありませんわよ。
「リファリスゥゥ……流石に子供にまでは」
え?
「わたくし、罪無きお子さんにまでは、手を出すつもりはありませんわよ?」
「え? さっき『撲殺しちゃいたいくらい可愛らしい』とか言ってたよね?」
「はい、言いましたわよぉ。お母様の表情が硬かったようでしたから、リラックスして頂く為に冗談のつもりで」
それを聞いたリブラは、ガックリと肩を落としました。
「シャレになんないって。その状態のリファリスじゃ、シャレになんないって」
「あら、そうですか? でしたら、あのお子さんがお好きなようですから、この状態でサンタさんの振りをして……」
「まさか、プレゼントは悪人の首、とか言わないわよね!?」
「あら、それ良いですわね! 採用しましょう」
「止めてええええええええええ!」
もうすぐ真夜中。あと少しで年が明けます。
バガァ!
「ごがっ!?」
「さあ、これで何とか揃いましたわあああ!」
「これが毎年恒例なの……」
「はい、毎年毎年欠かさずに開催してますわ♪」
「……マジか……」
さあ、カウントダウンも近付いてきましたわ。
「では始めますわよ……『討伐されし魂よ、再び肉体に戻れ』」
パアアア……
「っ……うぐ、げふ!」
「あがああ! い、いてえ、いてえよぉ」
「い、生き返ったのか……?」
「うっわ、百人以上を一気に復活させるなんて……」
これから起きる幸せな瞬間を考えたら、これくらいの苦労は大した事はありません。
「ではカウントダウンを始めましょう……あは、あはははは、あっははははははははは!」
一人目の悪人さんに近付き、ニッコリ微笑んで。
「おめでとうございます、貴方様が最初ですわ」
「うわあああ! 来るな、来るなあああ!」
「そんな貴方には、祝福を」
そう言って、おでこに軽い口付けを。
「え……」
再びニッコリ微笑み。
「では、祝福の…………天誅!」
ブゥン! バギャ!
「ひぎゃあ!?」
「天罰!」
ブゥン! ゴギャ!
「げぴぃ!」
「滅殺! 抹殺! 撲殺!」
グチャグシャビシャア!
ドチャア
「あはははは、まずは一人目! そして」
「ひいい! 嫌だあ、死にたくないいい!」
「一度死んだでしょう? でしたら二度目も三度目も似たようなものですわ。では、天誅!」
ブゥン! グチャア!
「ごふぁあ!」
あ、あら?
「まさか一発で? やはり女性の頭蓋骨は若干弱いのでしょうか?」
「いや、そんなに変わんねえだろ」
「三人目の貴方、妙に落ち着いてますわね」
「……去年の五十八番目だ」
あら。あらあら。
「また参加して下さいましたの?」
「いや、強制じゃねえかよ!」
「ちゃんと矯正なさっていれば、こんな事にはなりませんでしたのに」
「……洒落か、今の。全く笑えねえが」
「…………」
ブゥン! ゴギャア!
「ぐはあ! な、何にも言わずに撲殺するな」
メキャゴギャグッチャグッチャグッチャグッチャグッチャ!
ドサッ ビチャア
「……リファリス……もしかして、イラッとした?」
「いえ、別にぃ」
「……絶対に気にしてるよね……」
「それより、続きを始めましょう!」
「あ、誤魔化した」
リブラ、五月蝿いですわ!
「七十八人目! 撲殺!」
バガァン!
「ぐひゃあ!」
「リファリス、ペースを早くしないと間に合わないわ」
あら? 少し遊びすぎたようです。
「でしたら、少しペースアップしましょうか」
モーニングスターを取り出し、一気に振りかぶり。
「七十八人から一気に八十八人目!」
ジャララッ ゴオオ!
バガガガガガガガガガガ!
「「「うぎゃあああああ!」」」
「……い、一気に短縮したわねぇ……」
「まあ、この辺りの方々は、比較的罪が軽い方ですから」
「……罪が軽いのに撲殺……」
「さあ、ここからがメインディッシュ! いよいよ重罪人エリアですわ!」
「はい、最後。百八人目は連続婦女暴行犯」
「そうですの。でしたら」
ブゥン! グシャア!
「ぐぎゃああああああああああ!!」
「まずは断種、ですわね」
「まあ、当然よね」
「や、止めてくれえ! もうやらないから、命だけはああ!」
「あら、もうヤレませんわよ?」
「リファリス、ソレは復活させないでね」
「勿論ですわ」
さて、今年最後の!
「天誅!」
ブゥン! ゴギャ!
「ぎゃは!?」
「天罰!」
ブゥン! メキャ!
「ぽげぇ!?」
「滅殺! 抹殺! 必殺!」
バギャバギャバギャ!
「ひ、ひぐぅえ……」
「あははははははは、撲殺!」
ゴシャアン! ドチャ
「あっはははははは! 真っ赤ですわ! 真っ赤で綺麗で汚らしい花火ですわああ! あはははははははははは!」
「リファリス、あと四秒あるよ」
「えええ!? ピッタリじゃありませんの!?」
「三」
「百八人目が早すぎましたわ!」
「二」
「も、もう誰も居ない……リブラ、代わりに一撲殺されて頂けませんか!?」
「嫌よ! 一……」
「ああああっ!」
百八つの煩悩……ではなく撲殺でした。
皆様、良いお年を。




