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弟子の授業と撲殺魔っ

 キーンコーンカーンコーン……


「では本日の講義を始めます。皆さん、よろしくお願いします」

「「「よろしくおねがいします!」」」

「よろしくお願いしま~す……」

「よ、よろしくぅ~……あふぁ~」

「よろしくぅ」


 周りのお子さん達はやる気満々ですのに、わたくしの弟子ときましたら……!


「……一番後ろの三人。一番前の席に移動して下さい」

「「「ええええ!?」」」


 ドズゥン!


「……何かご不満でも?」

「「「喜んで移動させて頂きます!」」」


 全く……何故わたくしの弟子達は、こうも不真面目なのでしょうか……。



 別に格別の事情があった訳ではありません。ただ単に託児所の先生から、お子さん達に主の教えを説いてほしいという依頼を頂き、こうして参上したのですが。


「行ってらっしゃーいあふぁぁ……」

「うふふ、今日は楽だ、うふふ」

「……姉御達、サボる気満々だろ……」


「…………三人共、一緒に来なさい」

「「「ええええ!?」」」



 ……という事情があっただけです。


 カッカッカッ

「ですので、主はこう仰られて……」


 福音書の解説をしながらお子さん達を見ていますが、皆さん良い子ばかりです。ちゃんとわたくしの言葉に耳を傾け、真剣にノートを取っていらっしゃいます。

 それに比べ、わたくしの弟子達は……。


「ふんふんふふーん♪」

 くるくるっ


 まずは一番弟子である筈のリブラっ。鼻歌を歌いながら鉛筆を振り回すだなんて……!


 ビシュ! パカンッ

「痛っ! ……あ」


 チョークが当たった事でようやく自らの誤りに気付くとは……まだまだですわね。


「くかーすぴー」


 次は…………わたくしを守護する立場にありながら、グースカグースカ寝ていらっしゃる、聖騎士のリジー……!


「聖女の戒『茨』」

 ピシュルルッ

「『ポイッ』」

 ガラッ ポーイッ

 ヒュウウゥゥ……びたぁぁぁぁん!

「ぶごぶぇし!」


 授業を真面目に聞かないような方は、二階の窓から投げて構いません。

 そして……。


「ふむふむ」

 カリカリカリカリ


 …………あら?


「モリー、ちょっと失礼」

「えっ」


 ノートを見せて頂きましたが……ビッシリと書き込まれていますわね。


「しかも赤・青・黄色をふんだんに使って、ちゃんと見易く仕上がっています……」

「お、おい、見るなよ!」


 そう言ってノートを奪い返すモリー。い、意外でしたわ。


「あ、貴女、勤勉でしたのね」


「勤勉つーか、姉御達と比べたら、誰でもそうなるだろ」


 それは否定しません。



 カッカッカッ

「更にここで主は……」

 カリカリカリカリ

 ガリガリガリガリ


 皆さん、真剣です。わたくしの言った事書いた事、全てノートに取られているようです。


「ふぁ~あ」

「……くぴー」


 ですが……あれだけ叱られたのに、また欠伸してよそ見しているリブラ。二階から突き落とされたのに、戻ってきてまた寝るリジー。


「…………瞬殺」

 ジャララッ ズゴォォン!

「「ぶべぉ!!」」


 モーニングスターと共に、壁にめり込む二人。血が滴り落ちますが、気にしてはいけません。


「さあ、授業の続きをしますわよ」

「「「はーい!」」」


「……なあ。鉄錆臭くて集中できないんだけどよ」


 あら失礼。



 モリーに手伝ってもらい、掃除と消臭を済ませて授業再開です。


「現に、主は……」

 カッカッカッ

 カリカリカリカリ


 わたくしの解説とお子さん達の鉛筆の音。それだけで神聖な空気を醸し出しています。


「そして主は、わたくし達に」

「ハアハア」

「真なる道を説き」

「ハアハアハアハア」

「導き…………ストップ。どなたですか、鼻息荒い方は?」


 急にハアハア聞こえだしたのですが、一体……?


「ハアハアハアハア、お姉様、お姉様ああああ」


 ひぃ!? こ、この声は……!


「リファリスお姉様ああ! ハアハアハアハア」


 きょ、教室の扉が少し開いていて、その隙間から視線が……!


「ハアハアハアハア、お姉様、お姉様ああああ!」


「あ、そう言えば、今日は第一王女が学校に視察に来るって言ってたような」

「いやあああああああああああっ!」

「ハアハアハアハア、嫌がるお姉様もハアハアハアハア!」

「「「せんせい、ハアハアうるさいでーす!」」」


 で、でもアレだけは、アレだけはわたくし、撲殺したくありませんわ!


「はぁぁ……えい」

 ビュッ サクッ

「んびゅ!?」

 ……ドサッ


 ……え?


「シスター、とりあえず眉間にナイフ刺しといたから、これで静かになるだろ?」


 そ、それは確かに、眉間にナイフが刺されば静かになるでしょうが……。


「一応言っておきますが、アレでも第一王女ですわよ?」

「知らねえよ。授業の邪魔するような王女、どっちにしても要らねえだろ」


 そ、それはまあ……。



 変態……いえ、第一王女殿下はしばらく廊下でひっくり返っていたようですが、いつの間にか居なくなっていました。



「で、ありますから、主は……」

 カッカッカッ

 カリカリカリカリ


 授業も終盤。戻ってきたリブラとリジーも、渋々ではありますが授業を受けています。


 ガラッ

「にゃっは~! 皆、元気かな~?」


「あ、るでぃちゃんだー!」

「あそぼー!」

「わーいわーい!」


 ゾロゾロ……ピシャ


 ……あ、あら?


「お、お子さん達は?」


「現実逃避すんなよ。大司教……じゃなくて枢機卿猊下が連れてったじゃねえか」


「な、何ですって……!?」


「そりゃあシスターの説教聞くよりは、遊ぶ方がマシぶべごしゃ!?」


「モ、モリー?」

「大丈夫?」


「だ、だいじょばない……がくっ」

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