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赤と黄色と撲殺魔っ

「「「せいじょさま、これをどーぞ」」」


 可愛らしいお子さん達が一列に並んで、お花を手にしています。近くにある託児施設で毎年お花を種から育て、咲く寸前になったらあちこちに寄付して下さっているのですが、この教会も対象なのです。


「ありがとうございます。今年も大切に植えさせてもらいますわね」


 ニッコリと微笑んでお礼を言いますと、お子さん達は頬を赤く染めて、笑い返して下さったり俯いてしまったり先生の後ろに隠れてしまったり…………うふふ、可愛いものですわ。

 本当に、みいいんな、頭をかち割りたいくらいに可愛いですわ………あは、あははは、あははははははははは!


「ひぅ!?」

「こ、こわいよ~!」

「うええええええええん!!」

「わあああああん!」


「リファリス、太陽背後に回ってるから」


 あらいけない。



「あー、そう言えば花壇ってあったんだよね」


 今更感ありありですが、リブラはようやく気付いたようです。


「ええ。この教会に赴任した際に、ご近所の皆様がボランティアで作って下さったんです」


 それから毎年、大切に使わせて頂いております。


「花は何を?」


「特に決まっておりませんわ。頂いたお花でしたり、散歩している時に見つけたお花でしたり」


「……散歩中に見つけた花って……要は雑草だよね?」


「はい…………数年同じお花ばかり咲いて大変でしたわ」


 可憐なお花でしたが、生命力豊かで周りに果敢に増えていきますから、しばらく他のお花が植えられませんでした。


「ここ数年は託児施設のお花の寄付が続いてますので、大体そのお花ですわね」

「へえ……その黄色い花は何て言うの?」

「フクジュソウですわ。春の代表的なお花ですわね」

「え…………は、春?」


 季節はもう冬。普通ならばあり得ないのですが。


「うふふ、わたくしの魔術の成果ですわ」


「リファリスの魔術?」


「意外にもお花を育てるのが好きなモリーが、土に回復魔術をかけたらどうか、と提案して下さって」


「…………同感ではあるけどさ、リファリスさあ、弟子のモリーの行いに対して『意外』って言うのは流石に……」


 あらいけない。失言でしたわね。


「後で謝罪しておきますわ。それよりリブラ、植え替えを手伝って下さいな」

「あーはいはい。ま、今日は休息日だから暇だしね」


 一時間程かけて、頂いたフクジュソウを全て花壇に植え替えます。


「お水をあげて、念の為に回復魔術をかけて」

 ザアアア

 パアアア……


「……よし、終了ですわ。リブラ、手伝って頂いてありがとうございました」

「別に。さっきも言った通り、休息日で暇だったから」


 何かお礼をしなくてはいけませんわね。


「これからお茶を飲みますが、ご一緒に如何です?」

「お茶ね……ちょうど喉も渇いてたし、頂くわ」

「はい、では少しお待ち下さい。頂いたお茶請けもありますので」



 ……こうして休息日の午後を、リブラと二人で静かに過ごしたのでした。



 三日後。

 異変は突然起こりました。


「シ、シスター、大変だ!」


 教会の椅子を磨いていますと、血相を変えたモリーが駆け込んできました。


「何事ですの?」


「じ、実は意外にも花好きが俺が、花壇の面倒も見てたんだが」


 何故わたくしの失言を知ってるんですの!?


「フクジュソウが全滅してるんだよ!」


 えええ!?



 急いで駆けつけてみますと。


「あ、赤い、花?」


 黄色い筈のフクジュソウが、何故か真っ赤なお花に取って代わっていたのです。


「やっぱりフクジュソウだったよな、植えてあったの」


「え、ええ。幾つか蕾が綻んでいましたが、中は間違い無く黄色かったですわ」


「……何かしたか?」


「え、えっと、お花と土全体に回復魔術を」


「回復魔術を? それで枯れる筈は無いんだが……」


 ……そう言えば……このお花、どこかで…………あああ!


「このお花、以前に道端で咲いていて、花壇に植えたのと同じですわ!」


「道端にって……雑草かよ!」


「確かナガミヒナゲシとか……」


「ナガミヒナゲシ…………滅茶苦茶繁殖力の強いヤツじゃねえか」


 そ、そうなんですの?


「その種が残ってて、シスターの回復魔術で復活しちまったんだな」


「で、ではフクジュソウは!?」


「ナガミヒナゲシって、他の草を枯らしちまうからなあ……」


 ナガミヒナゲシを掻き分けて見てみると、枯れたフクジュソウが横たわっていました。


「そ、そんな……」


 良かれと思ってかけた回復魔術が、このような結果を招いてしまうなんて……!


「どどどどういたましょうか!?」

「落ち着けシスター、とりあえず正確な言葉で語ってくれ」

「あわわわ……い、一体どうすれば……来週には託児施設のお子さん達がまたいらっしゃるのに……」

「……見に来るのか?」

「は、はい」

「ん~……そうなると……」


 モリーが対策を考えてくれているようですが………………あ。


「土に回復魔術が効くのでしたら……植物に復活魔術が通用するのでは?」

「あー、確かに。それが一番手っ取り早いわな」


 そうと分かれば、早速。


「『土に還りし者よ、再び現世に戻れ』」

 パアアア……


 ……どうでしょうか?


 ……ボコ!

「え゛!?」


 に、人間の手!?


「せ、狭いいい……? ありゃ? ワシャ百年も前に死んだ筈じゃが?」


 へ?


 ボコ! ボコボコ!


「あ、生き返った……?」

「つーか、狭いっつーんだよ!」

「どいてええ! 早くどいてええ!」


 は、はい?



 花壇の土……どうやら元墓地のものだったらしく……。


「亡くなった方の因果が染み込んでいたのですね……」

「そんな些細な因果から生き返らせるシスターが凄すぎんだよ!」



 結局この騒ぎが原因で、お子さん達が来る行事は中止となりました。残念ナような、助かったような……。

花は一応生き返ったようです。

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