お楽しみの撲殺魔っ
にゃっは~……。
……やっぱり来ましたわね。
にゃは~♪ にゃはにゃはにゃっは~♪
お出迎えは……不要でしょうか。
にゃはにゃはにゃはにゃは♪
くんっ
にゃは?
びゅごおっ! ごぎゃぐぎめきぃ!
あにゃっはああああああああああ!?
「…………あ」
失念していました。痴漢対策にモーニングスターの罠を仕掛けていたのでしたわ。
「リファっちの愛が痛い……」
「治してあげましたでしょう? それに早朝に突撃してくるような不心得者を、愛を持って迎えるとでも思ってまして?」
「にゃふぅ!? リ、リファっちの対応が冷たい」
ルディは相変わらずちゃらんぽらんなようで。
「そ、それよりリファっち! 彼女ができたって本当ぶごびびゃ!?」
「…………誰から聞いたんですの?」
聖女の杖を顔面で受け止め、ルディは事切れて……あ、それは不味いですわね。
「『穢れきった魂よ、卑しき肉体に戻れ』」
パアアア……
「……ぅぐげふ!? はあ、はあ……ふ、復活魔術に悪意を感じたんだけど!?」
「他人のプライベートに土足で踏み込むような輩、歓迎する理由がありまして?」
「うぐ……正論が痛い……」
「全く……ルドルフにまた怒られますわよ?」
そう言うとルディは明後日の方向に視線を逸らしました。ま、まさか……。
「貴女……もしかして、また降格したのでは?」
「にゃははは……補佐解任されて、枢機卿に戻っちゃいました……」
……っ……何をしているのやら……。
「で、解任されました枢機卿猊下、わたくしに何のご用ですの?」
「あ、そうだった! リファっち、彼女って誰ぶげしゃ!?」
「あらあら、聖女の杖が穢れた血で汚れてしまいましたわ……『聖水よ』」
ジャアア、パシャパシャ
「……綺麗になりましたわ…………あ、忘れてました。『苦痛を伴って蘇れ』」
パアアア……
メキメキミチミヂィ!
「……んぐひ!? 痛い痛い痛い痛いひぎいいいい!」
逆再生のように傷が塞がるルディは、あまりの痛さにのたうち回ります。
「うぐぅ、ふぐぅ…………リ、リファっち、痛みを伴う復活は禁止だって言ったよね……?」
「あらぁ、プライベートを詮索し続ける行為も、禁止されていないのでしょうかああ?」
「だ、だって、リブラが自慢気に語ってたから」
……………………はい?
「リブラが、ですの?」
「うん」
「リブラが、語って、ましたのね?」
「うん」
「どこで、ですの?」
「教会前の通り」
「いつ、ですの?」
「今今だって」
「つまり、リブラはまだ教会前に居ますのね?」
「うん、掃除中」
ブゥン! ジャラララララ……
…………ズドォォン!
「ぷぎぃ!」
…………ジャララララ パシィ
「血がベットリ……手応えありですわ」
「その鎖、どんだけ長いの!? もはやモーニングスターじゃないよね!?」
「これは鎖の先に棘付き鉄球を付けて頂いた特注品ですわ」
「モ、モーニングスター以外にも凶器が増えてたのか…………にゃは……」
飛び道具は何かと便利なのです。
「ルディ、これ以上この話題に触れるのは、命の危険と心得なさい」
「も、もう三回落命したけどね、にゃは」
三回?
「わたくし、まだ二回しか執行してませんわよ?」
「死刑執行みたいに言わないで。一回はルドルフからだよ」
……一体何をやらかしたんですの?
「つまり、ルドルフから逃げてきたのですね?」
「にゃは~♪ 当ったり~♪」
……通報しましょうか。
「あ、そうそう。それとさ」
「まだ何か?」
「リファっちが使ってるの、モーニングスターじゃなくてフレイルじゃない?」
……はい?
「棍棒の先がトゲトゲ鉄球なのがモーニングスターなのは分かる?」
「え、ええ」
「そのトゲドゲ鉄球が鎖で繋がってる場合は、分類上はフレイルなのさ、にゃは~♪」
フ、フレイル?
「まあ、正しく言うなら、モーニングスター状のフレイル、って感じかな。にゃは~♪」
「で、でしたらモーニングスターと呼んでも構わないのでは?」
「にゃは~♪ 主は正しきを尊ぶ……福音書第三巻の八章第二部」
うぐっ。
「にゃは~♪ リファっち、自らの過ちを認めて、悔い改めよ」
「く……す、枢機卿猊下のご指摘、ありがたくご教授させて頂きます……」
「宜しい」
こ、こういう時だけ、枢機卿の立場を利用して……!
「にゃふふふふ、リファっちをやり込めるのなら、枢機卿猊下の立場も悪くないかも♪」
………………はい?
「今までは代理だったり補佐だったり、直接的な権限は無かったから、強大な権力は新鮮、にゃは~♪」
……ふふ……ふふふふ。
「聖女の戒『茨』」
ピシュルル!
「え!? にゃ、にゃは!?」
「うふふふふ……あっはははははははははは! わたくしを権力でねじ伏せるおつもりで? 片腹痛いですわ、あははははははははは!」
「リ、リファっち?」
「最近モーニングスターばかりで、直接的な感触を忘れがちでしたから……」
「え、ちょ、待っ」
「久々に聖女の杖で撲殺しますわ! そおれ、天誅!」
ブゥン! ゴギャ!
「んぎゃひ!」
「あはは、天罰!」
ブゥン! ゴチャ!
「がふぅ!」
「あっははは! 滅殺!」
グシャア!
「抹殺!」
ビチャア!
「撲殺!」
グワシャア!
……ドサァ
「あはははははははは! 枢機卿になっても汚らしい花火は相変わらずですわね! さあて、あと十回は付き合って頂きますわよ! あっはははははははははははははははははは!」
この日、一日の撲殺記録を更新致しました。




