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好き嫌いな撲殺魔っ

 ジュウウウ……


 あとは塩胡椒で味を整えて……。


「……ゴクリ」

「ジュル……」


「リジー、リブラ。夕飯まで時間がありますから、背後からジッと見つめるのは止めて下さい」


 気になって仕方ありません。


「そうだぜ、肉食組。そんなに待ち遠しいなら、何か手伝えってんだよ」

 シュシュシュシュ


 見事な野菜の皮剥きを

しながら、モリーが指摘してくれます。


「うっ……」

「わ、わかったと思われ……」


 スゴスゴと二人はモリーの皮剥きに参加しようとしますが。


「こっちは間に合ってる。つーか、もう終わる」


「え」

「ほ、本当だ」


「だから今日の夜の見張り、二人で何とかしな」

「「えーーーーっ!?」」


 あらあら、本当でしたら自分の番だった夜の見張りを、二人に押し付けるつもりみたいですわね。


「私達は昨日やったわよ!」

「そうだそうだ!」


「なら、毎回毎回『腹減った腹減った』って騒がずに、ちゃんと手伝えっての」

「「うっ」」


 図星すぎて何も言い返せないようですわね。


「そ、それとこれとは話が別!」

「そ、そうよ! 大体リファリスが焼いてるお肉、私達が穫ってきたヤツだからね!」

「いや、俺は食わねえし」

「「うぅっ!」」


 ……言われてみれば……。


「わたくし達、食性が極端に分かれてますわね」


「え?」

「急にどうしたの、リファリス?」


「わたくしとモリーは菜食中心、リブラとリジーは肉食中心です」


「そ、それがどうかした?」


「栄養の偏りはよくありません。ですから」

「ですからって……」

「ま、まさか……」


「今夜はメニューをまるっとチェンジしましょう」

「「「えーーーーっ!?」」」


 肉食組だけでは無く、モリーからも異議が出ます。

 が。


「異議は認めません。もしも不服でしたら、料理片付け諸々わたくしが担ってる役回りを全て引き継いで頂きますが?」


「「「…………文句ありません」」」


 わたくしの役回りには「信者への対応」があります。セントリファリスに近付いていますから、わたくしが聖女である事はバレバレです。


「つまり普段の倍以上は信者様への対応が増す訳ですから、弟子である貴女達にも手伝って頂けたら、大変ありがたいのですが」


「「「……全ての食材に感謝して、食べさせて頂きます」」」


 宜しい。



 肉食組の本来のメニュー、水牛のサーロインステーキ。


「のみ、ですわ」

「のみ、なのかよ……胸焼けしそうだな」


 一方、わたくし達のメニュー。葉野菜のサラダにポテトソテー、干し野菜のスープにトマトとレタスのサンドイッチ。


「に、肉が無い……」

「緑色ばかり……」


「ニンジンやトマトは赤いですわよ」


「「そういう問題じゃなくて!」」


 何故か涙目で涙声。そこまで嫌いなのでしょうか。


「ううぅ、貴重なサーロイン……」

「しかも一番いい部位なのに、サーロイン……」


「まあ良いですわ。頂きましょう」

「……はい……」

「頂きます……」

「……うぇぇ……」


 まずはモリー。小さく切り分けたお肉を、ため息混じりで口に運びます。


「はぁぁ…………パクッ」


 口に入れた瞬間、思いっ切り表情を歪めます。


「うわぁぁぁ……脂っこいぃ……」


「そんなに苦手ですの?」


「俺はずっと貧乏暮らしだったから、肉っつっても比較的安い鶏肉くらいしか食えなかったんだ」


「あら、鶏肉も美味しいですわよ?」


「もう卵を産まなくなった鶏さ。安く出回るから、貧乏人にとっては貴重な肉さ」


 廃鶏ですわね。少々硬めですが、料理次第で充分に美味しいですわ。


「だから脂っこい牛肉なんて食べた事が無くて……」


「まさかとは思いますが、その状態で初めて食べた牛肉が……」

「うん、これ」


 サーロインですか……それは胸焼けしますわね。


「それから牛肉は完全に苦手になっちゃって。その弾みか、他の肉もあまり……」


「そう言えば、食べるお肉はササミくらいでしたわね」


「ササミはアッサリしてるから」


 成る程。そういう理由でしたら、仕方ありませんわね。


「に、苦い……」

「う、美味くない……」


 一方、肉食組。


「モリーと違って、貴女達は完全な好き嫌いではなくて?」


「ち、違うわよ! 私はデュラハーンだから……」


 はい?


「アンデッドは正気を失うと、まず食欲が表に出て、人間を含めた肉を求めるでしょ?」


「そうですわね。食人鬼(グール)なんているくらいですから」


「あれって、アンデッド全般に言える事なのよ。私達でも肉への渇望が強くなるわ」


「つまり……種族的な要因ですの?」


「勿論、好き嫌いはあるだろうけど……あまり肉以外受け付けなくなるのは事実ね」


 そう言われますと、リブラも仕方ありませんわね。


「ではリジーも?」


「うい。私はキツネ獣人だから、肉食になって然るべき」


「そうですか、では仕方無…………待って下さい。キツネは雑食ですわよ」

「ギクッ」

「木の実とかも食べる筈ですわね」

「ギクッギクッ」


 簡単にボロが出ますわね。


「……つまり、種族的要因や生活環境に左右されていない……つまり、好き嫌いですわね?」

「うぅっ」


 言い訳できず、リジーはガクリとうなだれました。


「ではリジー、明日から肉だけでは無く野菜もたっぷりと食べましょうね?」


「リ、リファリスだって、肉あんまり食べない! つまり好き嫌い!」


「あら、わたくしは肉は食べれますわよ」


 切り分けたサーロインをパクリ。うん、ジューシーですわ。


「え、あ、あれ? なら何で普段は食べないの?」

「……お肉は……高いですから」

「ああ、リファリス貧乏だから」


 清貧と言って下さい。

サーロイン、美味しい。

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