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強化魔術と撲殺魔っ

 強化魔術……特殊な魔術ではありますが、使いこなせれば強力な事に変わりありません。


「ど、どんな使い方が普通なんだ?」


「強化魔術は一見地味な魔術ですが、どんなものにでも強化を付与できるというのが最大の特徴です」


「どんな……ものにでも?」


「はい。例えば」

 ジャララ ズシィン!


 最近わたくしがよく使っているモーニングスターですが。


「そ、そんなに重い素材だったか? 地面にめり込んでるぜ」


「今強化魔術で『結合強化』をしました」


「は? け、結合強化?」


「理解し難いでしょうが、全ての物質は細かい粒子によって構成されています」


「……?」


「それらの密度を高めれば、硬度も上がって重量も増幅するのです」


「……??」


「まあ、そういうものだと思って下さい。つまり、隙間を埋めるイメージを対象に送り込むのです」


「ふ、ふうん……?」


「実践してみましょう。モリー、貴女に触れますわよ」


「あ、うん」


 モリーの靴に魔力を送り込み……。


「……『結合強化』」

 ズシィン!

「……え?」


「モリー、歩いてみて下さい」


「あ、うん」

 ズシィ

「うわ、おっも!?」


「結合強化で靴の重量を増やしたのです。これが強化魔術ですわ」


「へ、へえ……」


「まあ、わたくしにできる強化魔術はこれだけなのですが」


「ほ、他にもあるの?」


「ええ、かなり豊富ですわよ。自らの身体能力を上げる事はお手のものですから、攻撃力・防御力・素早さ等は自由にバフできますわね」


「す、凄いじゃんか……?」


「ですが、それだけ……とも言えます」


「それだけ?」


「簡単に言ってしまえば、同じ魔術でしたら攻撃魔術の方が圧倒的に効率が良いですから」


「効率って…………ああ、直接攻撃すればいいから?」


「そうです。強化魔術はあくまで自身の強化でしかありませんから、近付かなければ意味がありません」


「……攻撃魔術なら距離が離れてたって、問題無いって訳か……」


 わたくしの見たところ、モリーは強化魔術に突出しているタイプに思えます。

 まあ、一応試してみますか。


「モリー、他の魔術を試してみますか?」


「他の魔術? やるやるっ」


 やる気は充分ですわね。でしたら……。



 基本的な攻撃魔術である『火球』を例に説明します。


「手に魔力を集中し、火属性に変換します」

「ど、どうやって?」

「全てはイメージする事です。イメージしたものを具現化する、それが魔術なのですから」

「イ、イメージ…………熱を指先に、燃える炎を指先に……」


 ……ヴゥン……


 ……魔力操作に関しては天才的ですわね。


「燃えろ……燃えろ……燃えろ……」


 ボッ ボオオ……


 指先に炎が現れました。これはもしかしたら……。


「モリー、ナイフを投げるイメージで放ちなさい!」


「っらああああ! 『火球』!」


 ボッ ゴオオオオッ!


「え?」

「はい?」


 モリーの指から放たれる筈の火球は、何故かモリー自身に纏わりつき、全身を炎が……あああ!?


「『魔術阻害』! 炎よ消えなさい!」


 パアアア……ボフン!


 若干消えましたが、まだチラチラと残り火が……!


「熱々々々々々々々々! あっちいいいいい!」

 ズシズシズシズシズシズシズシズシドバッシャアアアン!


 再び燃え上がり始めたモリーは、焦った様子で川へ飛び込んだのです。



「あちちちち……」


 治療して傷は治りましたが、服はボロボロです。


「重くしたままの靴で、よく川まで走れましたわね……」


「火事場の馬鹿力ってヤツだよ……あちち」


 火傷は治りましたが、流石に服までは……。


 ボロッ


「あ~あ、下着までボロボロだぁ……」


「……………………モ、モリー……貴女……」


「ん、何だ?」


「貴女…………女としての慎みが無いんですの!?」


「はあ?」


 は、半裸で隠しもしないだなんて……はしたない、はしたないですわ!


「と、とにかく隠しなさい!」

「イタタタタタ! きゅ、急に何だよ!?」

「胸をさらけ出したままで素で居られるなんて……!」

「胸がポロリしてたくらいで、何で騒いでるんだ?」

「女とはそういうものです!」

「……素っ裸で戦ってたシスターが言う事か?」


 うっ!


「そ、それは、場合によってはと言う……ああ、いけませんわ! 魔術の話でしたのに、話が逸れましたわ!」

「逸らしたのはシスターなんだけど」


 お、おほん!


「そ、それより。貴女は火球を作り出せたのに、何故か燃えたのは自身でした。その意味が分かりますか?」


「分かんない」


「つまりですね、貴女の火球は『強化』の括りに捕らわれて『火属性付与』となったのです」


「火属性……付与?」


 やはり間違いありません。モリーは強化魔術に特化しているのです。


「試しにナイフに属性を付与してみなさい」


「え、あ、はい」


 ナイフを抜き、再び火属性をイメージさせています。


「……火……火……火……『ナイフよ燃えろ!』」

 ボッ!


 やはり。


「うわ、本当に火属性が」

「これで新たな戦力となりますわね」


 身体を強化するだけでは無く、属性を刃に乗せられるのは大きな武器と言えますわ。


「そ、そうか。確かにこれなら……っ!?」

 カチャン


 ……? 突然ナイフを離しまして……?


「あっつ! 柄まであっつ! 持てねーっつーんだよ!」

「……まずはコントロールから学ぶべきですわね」



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