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滝行の撲殺魔っ

 シスターを見ていれば分かると思うのじゃが、聖心教には様々な修行が存在する。現在進行形の巡礼もその一つじゃな。

 その修行の中には、一般の信者は絶対に手を出さないような過酷なものもあるのじゃ。千日独歩じゃとか、永年祈じゃとかが有名じゃな。

 そのような荒行の中で、比較的手を出しやすいものもある。それが今回シスター達が挑戦する〝瀑布の横切り〟なのじゃ。



 ドドドドドドドドドド……


「ま、間近で見ると、迫力が桁違いだな……」

「寒い冷たい寒い冷たい」

「す、水圧で首が取れなきゃいいけど」


 心頭滅却すれば、冷水も温かいのですわ。温かいのですわ。温かいのですわ……。


 ドドドドドドドドドドドドドド……


「うっわ、飛沫だけで冷たいな」

「冷たい痛い冷たい痛い冷たい痛い」

「リ、リファリス、本当にやるの?」


「貴女達がわたくしを焚き付けたのでしょう? でしたら最後まで付き合いなさい」


「「「ひ、ひええ……」」」



 焚き付けた状況に関しては、想像できるじゃろ?

 何、よく分からんじゃと? やれやれ、簡単に説明すればじゃな。


 一、キツネ娘が〝瀑布横切り〟の看板を発見、シスターに問う。

 二、首だけ令嬢もノリノリで聞いてくる、危険を察知した元親分は黙る。

 三、シスターが〝瀑布横切り〟の歴史を詳しく解説。だけど長くて途中からダレる。

 四、一番最初に飽きたリジーが、暇つぶし程度にシスターを挑発。リブラも乗る。

 五、挑発に乗ってシスター滝行決定。だけど修行の一環として、全員巻き込まれる事に……。


 と言った具合じゃな。あのキツネ娘、いい加減に「口は災いの元」と言うことわざを胸に刻むべきじゃろうに……。



「ま、まずはモリー!」

「えええ!? な、何で俺からなんだよ!?」

「ナ、ナイフ使いは切り込み隊長って、相場が決まってるのよ!」

「んな理屈があってたまるか!」


「では、わたくしから参りますわ」


「リ、リファリス!?」

「さ、流石リファリス、躊躇無さげ」

「シスター……」


 さあ、いよいよです。心頭滅却すれば、冷水も温かいのですわ。


 ドドドドドドドドドドドド……


 心頭滅却すれば、冷水も温かい。


 ドドドドドドドドドドドド……


 心頭滅却すれば、冷水も温かい…………はあああっ!


 ドドドドドドバシャバシャバシャバシャ


 ひぃああああああ! つつつ冷たああい!


 バシャバシャバシャバシャバシャバシャ


 い、いえ、これも主がわたくしに課した試練なのです。越えなければなりません!


 バシャバシャバシャバシャ


 心頭滅却すれば、冷水も温かい! 心頭滅却すれば、冷水も温かいのです!


 バシャバシャバシャドドドドドドドド……


「わ、渡り切った……」

「あの大瀑布を、微動だにせず」

「な、何という御方だ……!」


 同じように滝行に挑まれた方々から、感嘆の言葉をかけられます。


「あ、ありがとうございます。無事に乗り越えられましたわ……」


「女性で〝滝を割りし者〟になったのは、貴女が初めてではないか?」


 そう……なのでしょうか。


「ほら、暖まりなさい」


 そう言われ、焚き火の前に連れて来てもらいました。ああ、暖かい……。


「貴女、もしかして聖女様では?」

「聖女様!? ではシスターリファリスですか?」


「はい。リファリスと申します」


「やはり……」

「聖女様でしたか……」


 それを聞いた若い牧師さんが、感涙を流しながら立ち上がりました。


「聖女様が成し遂げられた日に同じ地に居られただけでもありがたいのに、我々は同じ日に同じ境地に達する機会を与えられたのだぞ!」

「そうだ! 聖女様に負けてはいられない!」

「聖女様に追随するのだ!」

「聖女様ばんざーい! うおおおっ!」


 な、何故でしょうか。躊躇なさっていたであろう方々が、我先にと滝に駆け込んでいかれます。


 バシャバシャバシャバシャ

「ブルル、つ、冷たい……!」

「大丈夫だ、我々には聖女様が付いていらっしゃる!」

「そ、そうだ! 乗り越えるぞ!」

「うおおおおおっ!」


 バシャバシャバシャバシャバシャバシャ



「あ、あれ? 向こうからいっぱい来たぞ?」

「リファリス以外は誰も行かなかったのに、何故急に?」

「うわ、寒そう冷たそう」


 バシャバシャドドドドドドドド……


「わ、渡り切った! 渡り切ったぞおお!」

「これで我々も〝滝を割りし者〟だ!」

「ついにやり遂げたぞおお!」


「た、滝を割りし者?」

「この修行を耐えられた人に贈られる称号だ」

「ふうん。称号要らないから呪具欲しい」


「ま、待て。ここから戻らないか?」

「な、何ぃ!?」

「正気か!?」

「お前達……向こう側には聖女様が居られるのだぞ」

「そ、そうだ! 再び聖女様に!」

「よし、俺はやるぞ!」

「俺も!」

「俺もだ!」


「え、また戻ってくわよ?」

「往復なんて聞いた事無いぜ!」

「達成したら、もっと偉業なの?」

「あ、ああ、前代未聞だよ」



 ドドドドバシャバシャ

「つ、冷たくない! 痛くない!」

「聖女様の為!」

「聖女様の為!」

「我々は再び、滝を割るのだ!」


 バシャバシャバシャバシャドドドド……


 す、凄いですわ。あの方々、往復を成し遂げられました。


「み、皆様、お見事ですわ!」

「「「聖女様! 再びお目にかかれて光栄でございます!」」」

「はい?」



 ほら、あれじゃ。滝行を終えてびしょ濡れのシスターは……色々と透けておっての。

 主の試練は男性の純然たる煩悩によって、軽々と達成されてしまった……という事じゃ。

白い着物ですから、色々透けて見えるでしょうね。

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