国宝級の撲殺魔っ
何を考えているのか、イマイチ分からない狐娘じゃが、ちゃんと仕事をしておったのじゃのう。諜報部隊長も何かを嗅ぎ付けておるようじゃし、まだまだシスターの周りはきな臭いようじゃな。
む? あの狐娘、シスターと首だけ令嬢を連れて、どこかに出掛けるようじゃの。どれどれ、追ってみようかの。
……正直気が進みませんわ。
「いいからいいから、レッツラゴーと思われ」
「そうよ、リファリス。人間、偶には息抜きも必要なのよ」
「息抜きが必要って、貴女は充分すぎるくらいに息抜きしてるじゃありませんの」
「何を言ってるのよ? 私、朝の奉仕も懺悔の奉仕もちゃんと真面目に参加してるわよ」
そう仰るリブラに、わたくしは自分の胸を指差し。
「わたくしの下着を全て黒のレースに替えたのは貴女ではなくて?」
わたくしに指摘された途端に、明後日の方向に視線を向けるリブラ。やっぱり……。
「ああ、だからリファリスの下着、白のシンプルなのから急に大胆なのになったんだ」
そう呟くリジー。わたくしだって、下着がそれしか無ければ、流石に着用せざるを得ませんわ。
「……つまり、現在進行形で着用?」
ピラッ
「きゃあああっ!」
「ををっ、これはまた黒レースの切れ込みがえげつない大胆かつ高級感溢れ」
ばがあああん!
「くじゃぴっ」
み、道の真ん中で、貴女は何をなさってるんですの!?
「あーあ、リジー伸びちゃった」
白目を剥いて泡を吹いたリジー。このまま放置しておいて構いませんわっ。
「でもさ、リファリス。実際に着てみてどうなのよ」
「どうなの……とは?」
「ああいう大胆な下着を着けてると、改めて自分は女なんだって意識しない?」
はい?
「改めても何も、わたくしが女である事には変わりなくてよ?」
「そうじゃなくてさ、その、普段の堅苦しい生活の中に、自分が女で在りたいって意識を」
「……貴女は一体何が言いたいんですの? はっきり仰って下さいな」
「はっきりと? いいの?」
「ええ。言葉にしなければ伝わらないものは、確かに有りましてよ」
「そ、そう…………な、なら…………私、リブラは!」
往来の真ん中でとんでもない事を叫んだ首だけ令嬢は、狐娘と並んで泡を吹く羽目になったようじゃ。まあ、自業自得じゃな。
リジーの提案によって訪れる事になった共同浴場は、時間帯の割には混んでいました。
「うわあ、凄い人だね」
「中に入るだけでも大変と思われ」
「……貴女達はいつの間に追いついたんですの?」
「「今」」
……確かに、少し息切れしているようですわね。
「わたくしが聞くのもおかしいのですが、大丈夫ですの?」
「「大丈夫」」
「大事をとって止めた方が良くってよ? わたくし、手加減無しで殴りましたわよ?」
「「大丈夫」」
……何故か二人とも、目が血走ってるような気がしますが……。
「こんなチャンス、滅多に無い」
「一緒に住んでいる私でも稀なんだから」
一体何に執念深くなってるんですの?
「あ、今なら入れると思われ」
「ささ、行きましょう、聖女様」
「押さなくても参りますわよ。もう、何なんですの、二人して」
いやはや、潔い下心じゃのう。狐娘と首だけ令嬢の魂胆なんぞ見え見えじゃ。
さて。さてさて。ここからが本番じゃ。じっくり見てみるとしようかの。
「よし、準備完了」
一番最初に全てを脱ぎ捨てたリブラが、タオル片手に待っています。
「リブラ、慎みが無さすぎますわ。ちゃんと前は隠しなさいな」
「何よ、自信があるんだから、見せたって構わないわよ」
そういう問題では無いのですが……。
「ふふふ。ガードルで締め付けなくても括れるドレス姿は、旧貴族間では憧れの対象だったんですのよ」
確かに、それだけ括れていれば、ガードルは必要ありませんわね。
「うーむ、C?」
「……何よ、リジー」
一方、同じように全て脱ぎ終わったリジーですが……こちらはバスタオルで完全に覆い隠しています。
「あら、リジーは見せられないの?」
「は、恥ずかしい」
意外とリジーは他人に肌を見せる事を嫌います。友達であるわたくしにすら、脚を見せたがらないくらいなのです。
「えー、見せられないくらい情け無い体型だとか?」
「そ、そんな事は無し」
「えー、口では何とでも言えるじゃない」
「む、無理無理無理」
あら。リブラに妙なスイッチが入ったようですわ。
「ふっふっふ…………剥いちゃえっ」
「え、嫌だ、駄目だったら!」
ちょ、ちょっと!
「こんな狭いところで暴れないで下さいまし!」
「だって、リジーがっ」
「だって、リブラがっ」
「見習いシスターと兵士が、周りに迷惑をかけるなんて言語道断ですわ!」
わたくしの怒りを感じたのか、二人は大人しくなりました。
「……すいませんでした、シスター」
「申し訳ありません、シスター」
深々と頭を下げます。
「分かれば良いのです。リジー、湯船に入るのでしたらバスタオルは取らないとマナー違反ですわよ?」
わたくしに言われて二人は同時に下げていた頭を上げ。
「「……っっっ!?」」
全てを脱ぎ終えたわたくしと対面し。
ブブッ
「……はうっ」
ドブッ
「……ぐふっ」
「リジー!? リブラ!?」
何故か二人同時に、鼻血を吹いて倒れたのです。
ぅぉ……ぅ。
こ、これは確かに強烈じゃな。普段から体型の分かり難い法衣に身を包んでいる事もあって、このインパクトは……絶大じゃな。
ふぅむ……括れは首だけ令嬢より上、胸は狐娘より上。しかもあの形と色、いやはや、国宝じゃの。
「……? 何故か不快な視線を感じますわね。えいっ」
ブゥン!
ゴシャ!
ぐっはああ!?
シスターの入浴シーンを見られたい方は、高評価・ブクマを頂ければ、明日には背後にシスターが現れますのでお願いします。