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授業する撲殺魔っ

「聖女様、流石にあれでは困ります」

「はい、申し訳ありませんでした」


 すっかりうなだれてしまった男性陣を背後に感じながら、素直に頭を下げました。


「女性の弟子ばかりツヤツヤテカテカでは、男女格差が広がるばかりだ……」


「男女、格差?」


「はい、男女格差」


 ……?


「ぶっちゃけ、うちの弟子の強さは、女性側に思いっ切り傾いてまして」


「…………つまり……男性が弱いと?」

「はい」


 即答する程に弱いんですの!?


「で、そのバランスを均衡させたく、今回聖女様を招聘したのです」


 何故にわたくし!?


「いやあ……この場合は、どうしても聖女様じゃないと……」


 ですから、何故にわたくしなんですの!?



 その後、男性のお弟子さんと女性のお弟子さんの手合わせを見せて頂き、何となく納得しました。


「えぃやあ!」

「こいやあ!」


 攻める女性のお弟子さん、受ける男性のお弟子さん。


「はああっ!」

 ぶるるんっ

「……ふは」

「隙ありぃ!」

 バゴシッ!

「へぶぅ!」

 ドサーッ


「……武術に生きる方が、煩悩が原因で負けるんですの……」

「何故か、私の男弟子はあんなのばかりで……」


 まあ……マッシュ坊やのお弟子さんですものね。


「それと、何故か女性のお弟子さんは……」


「はあ、はあ、あっつ」

 パタパタッ

「「「むっはああ!」」」


 巨乳で……無防備な方ばかりですわね。


「はい。このような状況を立て直すには、聖女様のお力添えをお願いするしかなく……」


「つまり、どうしろと?」


「聖心教の神学をご教授願いたいのです。そうすれば、煩悩を振り払えないかと」


 ……主の教えがこの方々に届くかは分かりませんが……やれるだけやってみましょう。



 次の日から、稽古の合間に神学の時間を設けて頂きました。


「今日から講師を務めさせて頂きます、シスターリファリスです。どうかよろしくお願い致します」

「聖女様だ……」

「聖女様ね……」


 深々と下げた頭を戻し。

 ぶるるんっ

「「「むっはああ!」」」

「な、何よあれ!?」

「お辞儀しただけで揺れる胸って何なの!?」


 何故か頭を下げただけで賛否両論なのですが。


「……こほん。まずは手元の資料の三ページを開いて下さい」



 何事も無く三十分過ぎました。


「で、主は仰いました……ん?」


 ……後ろから三列目の、右端に座っている男性のお弟子さん。


「……天誅」

 ジャララッ ズドォン!

「ぐべび!?」

「『離れし魂よ、肉体に戻れ』」

 パアアア……

「……ぅぐ!? あ、あが、はあ、はあ……」

「居眠りはいけませんわよ?」

「は、はいい!」


 事前にマッシュ坊やから、指導の為の撲殺は許可を頂いてます。


「皆様に忠告しておきます。このモーニングスターは魔道具で、鎖は魔力によって延長します。よって、どこにでも飛んでいきますので、そのおつもりで」

「「「ガクガクブルブル……」」」

「はい、では続きから始めます。主のお言葉は……」



 それからモーニングスターが飛んでいく事は無く、平穏無事に授業は終了しました。

 が。



「聖女様、弟子達が泣いて私に懇願してきまして……」

「つまり、モーニングスターは止めてほしい、と?」

「はい」



 次の日の授業。


「師範代様から、モーニングスターは止めてもらえないか、とのお言葉を頂きましたので……」


「よ、良かった」

「あれは流石に……」

「怖くて授業どころじゃなかったしね」


 ドスンッ!


「……代わりに、これを使います」


 教壇にめり込んだ砲丸を見て、お弟子さん達は静まり返りました。



「あの……聖女様」

「砲丸も……駄目ですか」

「当たり前です!」


 ……でしたら……。



 次の日。


「え~、ですからここは……」


「良かったあ、今日は何も持ってないね」

「あれならただのシスターだわ」

「神学なんて、もうまっぴらだわ。寝る時間にはうってつけだけど」

「あはは、そうね」


「……そこの方々」

 ビュッ ズトバアアアン!

「「「ひぃ!?」」」

「無駄口を叩いていると、鉄芯入りの教本が飛んできますわよ?」

「「「ガクガクブルブル……」」」



「聖女様、もう神学は結構ですから」

「え、どうしてですの?」

「弟子達が怯えています!」



 仕方ありません。でしたら精神統一して頂く為に、座禅を組んでもらいます。


「心を無にし、全てを受け入れなさい」


 聖心教の修行には無い行為ですが、今回は採用させて頂きます。


「……あ、足が痺れて……」

「そこ、動いてはいけませんわ」


 確か座禅中に動いたものには、肩にビシッと、こう……。


 ボギャ! バキャ!

「ひぎゃああああ!?」


 あら、いけません。つい肩を砕いてしまいました。


「『癒せ』」

 パアアア……

「ぅ、あ、はあ、はあ」


「……心を無になさい」

「は、はいい!」



 一時間後。


「はい、終わりです。皆様、お疲れ様でした」


「は、はあ、はあ……」

「せ、生と死の狭間を感じました」

「何か、分かった気がします」

「あ、あれ? 生きてるって素晴らしい?」

「いや、生きてるだけで幸せなんだ」


 どうやら、悟りを開いたようですわね。



「……あの、聖女様」

「どうかしましたか?」

「ど、どうやら煩悩は発散されたようなのですが……」


「争いなど無意味です」

「人類、皆兄弟なのです」

「助け合うべきです」

「剣など不要なのです」


「か、代わりに……闘争心まで発散してしまったらしく……」


 ……何か……間違えたのでしょうか、わたくし……。



 これ以降、剣の聖地と呼ばれたこの場から、剣戟の音は聞こえなくなったそうじゃ。

 シスター……剣の聖地を潰してしまったようじゃな……。

人類、皆兄弟。

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