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当てが外れた女神様っ

 粉々になってしまいました聖剣は、もう修復のしようが無いくらいに粉々でした。


「あ、あはは、あは……マジで粉々だ……」

「申し訳ありません! 本っ当に申し訳ございません!」

「……マジで無駄な修行になっちまったな……」

「は?」

「あ、いや、何でもねえよ」


 破片を掃き集めながら、モリーはため息混じりに苦笑いしました。


「モリー、破片はわたくしが集めますから」

「いや、いいよ。プルパンテシアが言ってた事も気になるしな」


「…………今度は呼び捨てですの?」


「え?」

「今度は主の御名を敬称無しですか、と聞いているのです」

「えっ!? いや、そういうつもりでは無く」

「罰当たり天罰」

 ボグォ!

「いっってええええ!!」



『全く! モリーったら何をしてるの!? 今なら油断してる聖女を不意打ちし放題なのに、逆にやられるなんて! もう、だったら…………「女神の干渉」発動!』



 ……ピキッ


 あら?


 ビシパキピキッ


 せ、聖剣の破片が?


 ピシ……ピシィ!


 更に細かく砕けて、釘みたいになっ…………!!!?


 ピュピュピュピュピュピュピュッ!


「あ、危なっ」

 カカカカカカカカカ!


 突然わたくしに向かって飛んできた破片を、聖女の杖でどうにか受け止めました。


「い、今のは、一体……?」



『きいいっ! 何であんなに見事に受け止めるのよおお!』



「イタタタ……シ、シスター! 頼むから棍棒で殴るのは止めてくれ! マジで死ぬから!」


「あ、はい、失礼しました」

 グイッ グイーッ

「ぬ、抜けません!」


「……何やってんだよ、シスター」


「と、突然飛来してきた破片を、聖女の杖で受け止めたのですが」


「飛来? 聖剣の破片がか?」


「ええ。突然細かく針のようになったかと思ったら、私に向かってピュピュっと」


「あ~…………あの女、執念深そうだったからなぁ」

「あの女?」

「え? ああ、プルパンテシアの性格が…………あ」


「……主の御名を再び呼び捨て、あの女呼ばわり、更に執念深いなどと……!」

「う、うああ、しまったああ!」

「罰当たり滅殺!」

 バゴシャア!

「はぎゃああああ!!」



『何なのよ! 何なのよ、あの女! 破片を全て棍棒で受け止めて、釘棍棒にパワーアップさせるなんて! きいいっ!』



「あああああ聖女の杖に釘が刺さっちゃってあああああ」


「は、破壊力、五割増しだぞ。体感した俺が言うんだから、間違い無い」


「そんな保証は要りませんわあああああ釘が抜けませんあああああ」



『はっ!? 釘棍棒に気を取られている今がチャンスです! 残った破片で……!』



 ピキッ ビシビシビシ


「ん? デカい破片が?」


 パシバキバキ メキキッ


「……ナックルガード付のナイフに……?」


 バキバキパキ


「しかも……二本」


 フワッ……スト


「俺の手に飛んできたって事は…………これを使えってか?」



『そうですわ! 貴女の得意なナイフにしてあげたのですから、それでギッタンギッタンにしてしまいなさーい!』



「シスター、これって聖剣と同じ材質だよな?」


「抜けません抜けませんあああああ……はい? な、何ですの、そのナイフは」


「いや、残ってた破片がくっ付いてさ、ナイフになった」


「はいい?」


 そんな馬鹿な…………いえ、これは間違い無く聖剣と同じ材質……ま、まさか。


「これは…………主のお導きなのでは!?」


「……はい?」



『…………はいい?』



「貴女には聖剣の代わりにナイフを与え、わたくしには聖女の杖に釘を打ち込む事で威力上昇をして下さったのです。つまり」


「つ、つまり?」


「主は聖剣を砕いたわたくしをお許しして下さったばかりか、更なる戦力向上を図って下さったのでは無いでしょうか!?」


「いや、違うと思うぜ」



『ちっがあああう!』



「あの蛇みたいに執念深いのが、そんな慈悲を見せる訳ねえって」



『蛇みたいにって言うなあああああ!』



「……さっきから貴女、実際に見て来たような事を仰いますわね」


「へ?」


「それに今度は主を蛇呼ばわりだなんて……もう一度撲殺を」

「まままま待って! 違う、違うんだ…………そ、そう!」

「何ですの、遺言ですの?」

「違あう! お、俺が意識を失ってる間に、プルパ……じゃなくて主が枕元に立ったんだ!」

「え?」



『え?』



「で、砕けた聖剣の事は気にすんな、代わりにそれぞれにピッタリの武器をくれてやるっつってたんだよ」

「ええ!?」



『な、何でそうなるの!?』



「そ、その時の姿が、蛇そのものだったんだ!」

「えええ!?」



『何言ってくれてんのよ、この男女はあああああ!!!!』



「だ、だから、このナイフと釘棍棒は主の贈り物なんだ、うん!」


「そ、そうなんですの?」


「そうなんだよ! で、再生の象徴とも言える蛇は、主の化身なんだ!」


「ま、まあ、あり得なくはありませんが……」



『あり得ないよっ!』



「だ、だから、何の問題も無いんだ!」


 そう……ですわね。聖女の杖に釘が施されたのも奇跡ですし。



『違ああう! あんたが実力で凌ぎ切ったんだよ! 私は殺る気満々だったよ!』



 それに、主の奇跡でもない限り、破片がナイフに変化したりもしませんものね。



『それは私がしたけれども!!』



「……モリー……貴女が羨ましいですわ」


「え?」


「化身とは言え、主の御姿を拝見する機会を得たんですもの」


「そ、そうかな。あははは……」


「そうですわよ。主に仕える者にとって、それは何物にも代え難い栄誉ですわ」


「そうか、そうなんだな…………あんなのを信仰してんだな、聖心教」



『あんなので悪かったわね!』



 グワァァン!

「ぐぎゃひぃ!?」


「あ、あら? 何故わたくし、モリーを殴ってしまったんでしょうか?」



 

残念な主です。

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